派遣社員の労働災害(以下、労災)に関する対応は、派遣先企業にとって重要な課題です。労災保険は雇用形態を問わずすべての労働者に適用されるため、派遣社員が仕事中に被った災害も労災保険給付の対象となります。しかし、派遣社員と派遣先企業との間には直接の雇用関係がないため、労災発生時の対応に戸惑う場面もあるでしょう。
この記事では、労災保険制度の基本的な仕組みを踏まえつつ、派遣社員に労災が発生した場合の派遣先企業の対応について詳細に解説します。派遣元企業との連携や必要な書類の作成、安全配慮義務の履行など、派遣先企業が知っておくべき重要なポイントを網羅的に取り上げます。
目次
- 労災とは
- 業務災害
- 通勤災害
- 労災保険制度
- 労災保険の適用者
- 健康保険との違い
- 労災保険給付の種類
- 療養(補償)等給付
- 休業(補償)等給付
- 障がい(補償)等給付
- 遺族(補償)等給付
- 葬祭料等(葬祭給付)
- 傷病(補償)等年金
- 介護(補償)等給付
- 二次健康診断等給付
- 派遣社員に労災が起きた場合
- 労災の発生に伴う派遣先企業の対応
- 派遣元企業への連絡
- 労災保険の様式第5号の記入
- 労働者死傷病報告の作成・提出
- 安全に働ける職場環境の構築
- 労災発生における派遣先企業の注意点
- 労災申請が可能な期限
- 労災が起きた日の医療費用
- 労災ハラスメントに注意
- まとめ
1.労災とは
労災とは「労働災害」の略称であり、業務や通勤が原因でケガをしたり病気にかかったりすることをいいます。作業中や通勤中に負った外傷だけでなく、職場で受けたセクハラ・パワハラなどに起因する精神障がいが労災とみなされるケースもあります。
労災には2つの類型があり、業務に起因する死傷病を「業務災害」、通勤に起因する死傷病を「通勤災害」といいます。

業務災害
業務災害とは、労働者が業務を原因として被ったケガや病気、障がい、死亡のことを指します。たとえば、工場での作業中に機械に指を挟まれてケガをした場合や、オフィスでの長時間労働によって過労死に至った場合などが該当します。業務災害と認定されるためには、業務と傷病との間に一定の因果関係が存在することが必要です。具体的には、事業主の管理下にあり、かつ災害の発生が業務に起因することが条件となります。労働者の故意や私的行為に起因する場合は、原則として業務災害とは認められません。業務災害の認定には、労働基準監督署による調査や審査が行われ、個々の状況に応じて判断されます。
通勤災害
通勤災害とは、労働者が通勤を原因として被ったケガや病気、障がい、死亡のことです。たとえば職場から自転車で帰宅する際に転んでケガをした場合など、通勤途中に発生した傷病が「通勤災害」とみなされます。ここでいう「通勤」は労働者が一般的に用いる合理的な経路のことで、通勤のために通常利用する経路であれば、それが複数の経路であっても、それぞれが合理的であれば通勤経路と認められます。通勤災害の認定においては、事故発生時の状況や経路の合理性などが詳細に調査されます。また、通勤中の急病なども、一定の条件を満たせば通勤災害として認められる可能性があります。
