もしものときの傷病手当金!派遣社員の受給条件や契約終了後の適用は?

人材派遣の基礎知識
もしものときの傷病手当金!派遣社員の受給条件や契約終了後の適用は?もしものときの傷病手当金!派遣社員の受給条件や契約終了後の適用は?

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により自宅療養を余儀なくされ、会社を何日も休まざるを得ない人は少なくありません。

業務中に起きた病気やけがではないため労災保険の適用にはならず、充分な保障は受けられないだろうと悩む人もいるでしょう。特に派遣社員の場合には欠勤した分だけ収入が減ってしまうため、生活への不安や心配は増す一方です。

今回の記事では、そのような悩みや不安を軽減してくれる制度「傷病手当金」の詳細や派遣社員が受給できる条件や支給期間などをご紹介します。

参照: 休業手当の計算方法とは?「平均賃金の6割」が想定の半分以下になる理由

目次

  1. 傷病手当金とは
  2. 傷病手当金を派遣社員が受給するための条件
    • ①勤務先(派遣元)の健康保険への加入
    • ②業務外の病気やけがが原因
    • ③仕事ができない状態
    • ④連続3日以上の休み
    • ⑤休んでいる間に会社から給与の支払がない
    • ⑥休んだ日の翌日から2年以内の申請
  3. 傷病手当金の支給期間
  4. 契約期間終了後も傷病手当金は受け取れる?
  5. 傷病手当金で支給される金額
  6. 傷病手当金の申請方法
  7. まとめ

1.傷病手当金とは

傷病手当金とは、業務外の病気やけがなどの療養や治療のために働けず、安定した収入を得られない時に、本人と家族の生活の保障を目的として設けられた制度です。

仕事を休んだ日から3日間連続、かつ4日以上の休みが続いた場合、受給の対象となり、最大で1年6 ヵ月間、標準報酬月額の3分の2にあたる給付金が受け取れます。なお、業務中や通勤途中に発生した病気やけがの場合は、労働災害保険(労災保険)の対象になります。

傷病手当金とは

似た制度に「傷病手当」がありますが、傷病手当金とは異なります。傷病手当とは、失業中に病気やけがで働けなくなった時に雇用保険から支給される制度です。ハローワークで求職の申し込み後に、病気やけがにより就業できない期間が継続して15日以上の場合に支給されます。

なお、労災保険と傷病手当どちらも、傷病手当金との併用はできません。

2.傷病手当金を派遣社員が受給するための条件

傷病手当金は、派遣社員でも下記6つの条件を満たせば受けとることができます。

①勤務先(派遣元)の健康保険への加入

傷病手当金は雇用形態にかかわらず受給可能ですが、健康保険への加入が必須となります。 就労期間(雇用期間)が2ヵ月を超える見込みがないあるいは1週間の労働時間が20時間満たないといった場合には健康保険への加入ができず、給付金を受け取れません。

また、傷病手当金の制度がもともとない国民健康保険に加入していたとしても、給付されませんので注意が必要です。

②業務外の病気やけがが原因

業務外の病気やけがが原因で労務不能であることが、受給の条件となります。新型コロナウイルス感染症が陽性と診断されたケースはもちろん、陰性や検査未実施の場合でも発熱などの自覚症状がある場合も対象となります。

参照: 新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の申請について | 広報・イベント | 全国健康保険協会

しかし、事業所全体の休みや濃厚接触者となった時の欠勤については対象外です。また、美容整形における入院や療養についても、給付金の受け取りはできません。

③仕事ができない状態

受給するための条件に、入院や自宅療養などにより労務不能であることがあります。働くのが困難な状態かどうかは、医師の意見書や会社の証明などの書類により判断されます。

④連続3日以上の休み

傷病手当金の受給のためには、3日以上連続して休みを取っていることが条件です。会社を休んだ日から3日間を待機期間とし、その翌日の4日目からの休みが支給の対象となります。

また、待機期間には、給与の支払いが発生しない土日・祝日や有給休暇などの休みも含まれています。そのため、金曜日に仕事を休み、土日・祝の3連休後の火曜日にも休んだ場合、欠勤は実質2日間になりますが、3連休中の休みも待機期間となります。つまり、5日連続した休みであると判断され、条件を満たしていると扱われます。

⑤休んでいる間に会社から給与の支払がない

欠勤中に給与や支援金などの支給がないことも、傷病手当金の受給条件のひとつです。会社の制度を利用して休んでいる間に給与を受け取っていると、基本的に受給はできません。ただし、会社が支払う金額が傷病手当金より少ない場合は、差額分を受け取れます。

⑥休んだ日の翌日から2年以内の申請

健康保険の給付金の申請は2年が時効と定められており、傷病手当金の申請期限は休んだ日の翌日から2年以内となります。たとえば、2月10日から労務不能であった場合、2月10日の起算日は翌日2月11日となり、申請期限は2年後の2月10日になります。

基本的には事後報告になりますが、2年を超えた分については支給が受けられないので注意しましょう。

3.傷病手当金の支給期間

傷病手当金の支給期間は、開始日から通算して1年6ヵ月が最長です。もし、受給の途中に給与の支払いがあった場合でも、出勤期間を除いて計算します。ただし、支給開始日が令和2年7月1日以前の場合、出勤期間も1年6ヵ月のなかに含まれるため要注意です。

4.契約期間終了後も傷病手当金は受け取れる?

退職をして健康保険から脱退すると、基本的に給付金の受給はできません。ただし、退職前に病気やけがで働くのが困難になっていた場合には、以下の条件を満たしていれば受給の継続が可能です。

  1. 退職日までに1年以上健康保険に加入していたこと
  2. 退職の前日までに病気やけがによる3日以上連続した休みがある
  3. 退職後に雇用保険の失業手当を受給していない

参照: 【業務の引き継ぎ】派遣期間終了までに行うべき企業の対応を解説

5.傷病手当金で支給される金額

傷病手当金の支給額は、1日あたりの金額×休んだ日数(土日など会社の休日を含む)になります。1日あたりの支給額は以下のように計算されます。

計算式にある「各月の標準月額(標準報酬月額)」とは、給与などの報酬の月額を区切りの良い幅で分けて表したもので、1等級から50等級まで全50等級に区分されています。

支給開始日以前に30万円/月が10ヵ月間、そして26万円/月が2ヵ月間の標準報酬月額がある場合、1日あたりの金額の計算式は以下の通りです。

また、支給開始日前の健康保険加入期間が12ヵ月未満の場合、支給額は以下のように求められます。

6.傷病手当金の申請方法

傷病手当金を受給するためには、必要な書類を用意して健康保険組合や協会へと提出する必要があります。会社に用意してもらう書類と医師に記入してもらう書類、そして受給者本人が記入する書類の3種類が必要です。

また、勤怠記録や賃金台帳のコピーが必要となることもあるので、会社の担当者と相談しつつ進めるのが良いでしょう。より詳しく必要な書類について知りたい時には、加入する健康保険のWebサイトや問合せ窓口で確認することができます。

7.まとめ

傷病手当金は、健康保険に加入していれば派遣社員でも受給の対象となります。病気やけがで休みを強いられる本人と家族の生活を保障するためのものでありますが、制度を知らない従業員は少なくありません。

働けない状況で苦しむ従業員や派遣社員の不安を軽減し、安心して療養してもらうためにも企業側が支給条件を理解し、適切なフォローをすることが求められます。

メルマガに登録する