派遣社員は副業できる?派遣先企業が知っておきたい注意点を解説

人材派遣の基礎知識
派遣社員は副業できる?派遣先企業が知っておきたい注意点を解説派遣社員は副業できる?派遣先企業が知っておきたい注意点を解説

近年、働き方改革の一環として政府が推進している「副業」。今の仕事を続けながら別の仕事にも従事することで、本業とは別の収入源をつくったり、新たな経験やスキルを獲得したりできます。多くの企業で副業を認める動きが広がる中、派遣社員も副業を希望するケースが増えています。

この記事では、派遣社員の副業の可能性や、企業に求められる対応、そして派遣先が把握しておくべき注意点について、わかりやすく解説します。

目次

  1. 加速する副業解禁の流れ
  2. 派遣社員も副業できる?
    • 副業は法律で禁止されていない
    • 労働契約書や就業規則の確認が必要
  3. 派遣先企業が副業を禁止している場合
  4. 派遣社員が副業する場合の留意点
    • 労働者側の留意点
    • 企業側の留意点
  5. 派遣社員の副業における企業側の対応
    • 副業内容の確認
    • 労働時間の通算管理
    • 派遣社員の健康管理
  6. 派遣社員が副業を行うメリット・デメリット
    • 副業のメリット
    • 副業のデメリット
  7. 派遣先企業も知っておきたい副業の注意点
    • 派遣会社への副業申請
    • 派遣社員の確定申告
    • 雇用保険・社会保険への影響
  8. まとめ

1.加速する副業解禁の流れ

働き方改革の施策として「副業」が推進され、副業解禁の流れが加速しています。

厚生労働省は2018年に「モデル就業規則」を改訂し、副業・兼業について「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という規定を追加しました。また、同年に策定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」においては、労働時間以外の時間の使い方は基本的には労働者の自由であるとして、副業・兼業における労働時間管理や健康管理など企業がとるべき対応についてまとめています。

このような流れを受けて、副業解禁に踏み出す企業が増えています。

派遣社員は副業できる?派遣先企業が知っておきたい注意点を解説

2. 派遣社員も副業できる?

法律上、派遣社員が副業しても何ら問題ありません。ただし、派遣会社との契約や就業規則によっては副業できない場合があるため、あらかじめ確認しておく必要があります。

副業は法律で禁止されていない

副業を認めるかどうかはあくまで企業側の判断であり、法律で禁止されているものではありません。厚生労働省のガイドラインでは、原則として副業を認める方向で検討することが適当としており、労働者が安心して副業に取り組める環境整備を進めるよう提言しています。
ただし、業務に支障が出たり業務上の機密情報が漏洩したりと、企業が不利益を被る場合には副業を制限できると解されています。このような制限は、企業の正当な利益を守るために認められる例外的なケースといえるでしょう。

企業が副業を禁止する場合は、その理由を明確にし、労働者に対して適切に説明することが求められます。一方で、労働者も副業を希望する際には、本業に支障をきたさないよう十分に配慮する必要があります。

労働契約書や就業規則の確認が必要

副業を禁止する法律はないものの、派遣会社によっては派遣社員の副業を禁止しています。副業を希望する派遣社員は労働契約書や就業規則を確認し、派遣会社が副業を認めているかどうかを確認する必要があります。法律上は副業可能であっても、派遣会社が禁止している場合には原則として副業することはできません。

3. 派遣先企業が副業を禁止している場合

派遣会社が副業を認めていても、派遣社員が就業する派遣先企業が副業を禁止しているケースも考えられます。この場合は、派遣社員に適用される就業規則について、派遣元と派遣先がどのような取り決めをしているかを確認する必要があります。

人材派遣においては原則として雇用主である派遣元企業の就業規則が適用されますが、派遣社員は派遣先企業の社員と一緒に働くため、派遣先の就業条件を適用したほうが合理的なケースも少なくありません。

労働者派遣契約により「派遣先の就業規則に従う」という合意が派遣会社と派遣先との間でなされている場合、派遣社員は派遣会社との労働契約に合意したうえで、派遣先の就業規則に従わなければなりません。派遣先が副業を禁止していれば、それに従う必要があるということです。

関連記事:労働者派遣契約とは?流れや注意点、関連する法律をわかりやすく解説

4. 派遣社員が副業する場合の留意点

派遣社員が副業をする場合にはどのような点に気をつければよいのか、労働者側・企業側の両方の視点から副業の留意点をご紹介します。

労働者側の留意点

副業が認められている場合、派遣社員は本業を継続しながら別の仕事にも従事できます。しかし、これまでよりも労働時間が長くなる可能性が高く、本業と副業を両立していくためには、十分な睡眠時間の確保や、適度な休息を取ることなど、自身の健康や労働時間の管理が不可欠となります。また、今の仕事に支障が生じない範囲で副業に取り組むこと、業務で知り得た情報を外部に漏洩させないことなど、本業に悪影響が及ばないように配慮することも重要です。

さらに、副業先での業務内容や労働時間について、派遣元や派遣先に適切に報告することも忘れてはいけません。加えて、副業による収入が一定額を超える場合、確定申告が必要となる可能性があるため、税務上の留意点についても把握しておくことが望ましいでしょう。

企業側の留意点

派遣社員が副業する場合、企業側には労働時間の管理や健康への配慮、業務上の秘密保持に関する注意喚起などが求められます。これらに留意しつつ、例外的に副業を制限できる規定(業務に支障がある、業務上の秘密が漏洩するなど)をあらかじめ就業規則に記載しておくとよいでしょう。また、派遣社員から副業の相談や申告があった際に、それを理由として不利益な取り扱いをすることはできません。

さらに、副業先での業務内容が本業と競合しないか、情報漏洩のリスクがないかなども慎重に検討する必要があります。

5. 派遣社員の副業における企業側の対応

派遣社員が副業を行う場合、派遣先企業と派遣会社は適切な対応を求められます。まず、派遣社員から副業の申請があった際には、その内容を丁寧に確認する必要があります。特に、副業先での契約形態や労働時間などの基本情報を把握することが重要です。

副業内容の確認

雇用契約や業務委託契約(請負契約/委任契約/準委任契約)など、副業の契約形態はさまざまあります。このうち、派遣社員が雇用される形で副業をおこなう場合には、派遣先と副業先での労働時間を通算して管理しなければなりません。副業先の事業内容や従事する業務内容といった基本事項とともに、所定労働日や所定労働時間、所定外労働(残業)の有無などについてはあらかじめ確認しておくのが望ましいでしょう。

出典:副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説|厚生労働省

労働時間の通算管理

労働時間の原則は「1日8時間・1週間40時間」です。労働時間は「本業+副業」で考えるため、副業先でも雇用契約を締結して働く場合には派遣先企業と副業先での所定労働時間を通算する必要があります。このとき、通算した所定労働時間が法定労働時間を超える場合には、時間外労働に対する割増賃金を支払うことになります。

労働時間通算の原則的な方法は以下のとおりです。

  • 《手順①》所定労働時間の通算:労働契約締結の先後の順に通算する
  • 《手順②》所定外労働時間の通算:所定外労働の発生順に通算する

なお、労働時間の通算が必要となるのは副業先で雇用契約を締結している場合のみです。雇用契約を結ばず、個人事業主やフリーランスとして副業する場合は必要ありません。

参考:副業・兼業における労働時間の通算について|厚生労働省

派遣社員の健康管理

厚生労働省のガイドラインでは、副業による過労で現在の業務に支障をきたしていないか確認するのが望ましいとしています。健康を維持するための自己管理を指示し、心身の不調があればいつでも相談を受ける旨を伝えましょう。派遣先企業は派遣会社とも連携しながら、派遣社員の健康確保に努める必要があります。

派遣社員の健康管理は、労働安全衛生法に基づく義務でもあります。特に副業を行う派遣社員については、通常以上に注意を払う必要があるでしょう。定期的な面談や健康診断の実施、労働時間の適切な管理などを通じて、派遣社員の健康状態を把握し、適切な措置を講じることが重要です。また、メンタルヘルスケアにも配慮し、ストレスチェックの実施や相談窓口の設置なども検討するとよいでしょう。

関連記事:特殊健康診断とは?派遣先企業が負担すべき理由

6.派遣社員が副業を行うメリット・デメリット

派遣社員が副業を行うことには、様々なメリットとデメリットが存在します。副業を始める前に、これらを十分に理解し、自身の状況や目標に照らし合わせて慎重に検討することが重要です。

副業によって得られる利点は多岐にわたりますが、同時に考慮すべき課題もあります。

副業のメリット

副業には多くのメリットがあります。まず、本業とは異なるスキルを習得することができるため、キャリアの幅が広がります。新たな職種や業務に挑戦することで、専門性を高めたり、新しい知識を得たりする機会が増えます。また、副業を通じて収入を増やしながら、人脈を広げるチャンスも得られます。異なる職場や業界での経験は、多様な人々との交流を可能にし、将来的なキャリアパスの選択肢が増えていくでしょう。

さらに、副業は自己実現や自己成長の機会としても有効です。本業では実現できない自分の興味や情熱を追求することができ、新たな可能性を見出すきっかけになるかもしれません。また、複数の仕事を経験することで、時間管理能力やマルチタスク能力が向上し、より効率的に働くスキルを身につけることができます。

副業のデメリット

副業には、メリットとともにデメリットもあります。まず、体力的・精神的な負担が増え、本業に悪影響を及ぼす可能性があります。長時間労働が続くと疲労が蓄積し、集中力や作業効率が低下することがあります。また、副業により自分の自由時間が減り、生活リズムが崩れやすくなることも考えられます。家庭やプライベートの時間を犠牲にすることになり、ストレスが増える可能性があります。さらに、副業と本業の両立に伴う時間管理の難しさや、業務の優先順位付けの困難さも生じる可能性があります。副業を始める際は、これらの点を十分に考慮し、自身の生活や健康状態、本業への影響を慎重に検討することが必要です。

7.派遣先企業も知っておきたい副業の注意点

派遣社員の副業について、派遣先企業も知っておくべき重要な注意点があります。

派遣会社への副業申請

副業をしているかどうか、またその内容や労働時間については、労働者からの申告がなければ企業が把握することはできません。適切な労務管理をおこなうために、副業は「届出制」として管理するのが望ましいとされています。派遣会社が届出制としている場合、派遣社員が適切な手続きを踏んで副業に取り組んでいるか、派遣先企業としても把握しておく必要があるでしょう。

派遣社員の確定申告

派遣社員に副業収入があり、以下のいずれかに該当する場合には確定申告が必要です。

  1. 副業で年間20万円を超える給与所得がある
  2. 副業で年間20万円を超える事業所得・雑所得がある

(※所得:収入から経費を差し引いた金額)

上記に該当しない場合、つまり副業の所得額が年間20万円以下であれば確定申告は不要です。ただし、住民税は所得額に応じて支払うため、少しでも利益がある場合には住民税申告が必要となります。

雇用保険・社会保険への影響

雇用保険は「主たる賃金」を受ける会社で加入します。加入要件を満たしていても、すでに本業の会社で雇用保険に加入していれば、副業先の会社で二重に加入することはできません。

一方、社会保険については、加入要件を満たしていれば副業先でも加入する必要があります。この場合はどちらか一方を「主たる事業所」として選び、被保険者本人が「所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構に提出します。

参考:兼業・副業等により2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ|日本年金機構

なお、個人事業主やフリーランスとして副業する場合には各保険への影響はありません。

8.まとめ

派遣社員の副業は法律上問題なく可能ですが、派遣会社や派遣先企業の方針によっては制限される場合があります。副業を希望する派遣社員は、労働契約書や就業規則を確認し、派遣会社および派遣先企業の規定に従う必要があります。

企業側には、副業を行う派遣社員に対して適切な労務管理が求められます。副業内容の確認、労働時間の管理、そして派遣社員の健康管理などが重要です。また、副業による所得が一定額を超える場合、派遣社員は確定申告が必要となる場合があります。さらに、副業先での社会保険加入が必要になるケースもあるため、これらの点についても企業側は把握しておくべきでしょう。

派遣先企業は、厚生労働省が公表している「副業・兼業の促進に関するガイドライン」などを参考にしながら、派遣社員が安心して副業に取り組める環境づくりを進めることが重要です。同時に、派遣会社とも密に連携を取り、派遣社員の労働条件や健康状態を適切に管理していくことが求められます。

このように、派遣社員の副業には様々な注意点がありますが、適切に管理することで派遣社員のキャリア発展や収入増加につながる可能性があります。派遣先企業は、これらの点を十分に理解し、派遣社員の働き方の多様性を支援する姿勢を持つことが大切です。

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