派遣料金の仕組みや内訳、マージン率について徹底解説

人材派遣の基礎知識
派遣料金の仕組みや内訳、マージン率について徹底解説派遣料金の仕組みや内訳、マージン率について徹底解説

人材派遣を利用する企業は、サービスの対価として「派遣料金」を支払う必要があります。この派遣料金には派遣社員本人に支払われる給与のほか、派遣会社のマージンとしてさまざまな費用が含まれています。派遣料金に関しては派遣先企業にも配慮義務が課されているため、人材派遣サービスの利用を検討している場合には派遣料金の構造を理解しておくのが望ましいでしょう。

この記事では、派遣料金の仕組みや内訳、マージン率についてわかりやすく解説します。

関連記事:派遣活用でコストを抑えられるの!? 正社員採用とのコストを徹底比較!!

目次

  1. 派遣料金の仕組み
    • 初期費用
    • 継続費用
  2. 派遣料金の内訳
  3. 派遣料金のマージン率
    • 派遣会社のマージン
    • マージン率の計算方法
    • マージン率の推移
  4. 派遣料金・派遣賃金の相場
  5. 派遣会社に求められる情報提供
  6. 派遣先企業に求められる配慮
  7. 派遣のコストを抑える方法
    • 希望条件の見直し
    • 複数の派遣会社との比較
    • 残業時間の削減
  8. 派遣料金に関するQ&A
    • Q. 派遣料金に昇給はありますか?
    • Q. 派遣社員の交通費は派遣先企業が支払うのですか?
    • Q. 派遣社員のボーナスは派遣先企業が支払うのですか?
  9. まとめ

1.派遣料金の仕組み

派遣料金とは、労働者派遣の対価として派遣先企業が派遣会社(派遣元企業)に支払う料金のことです。「派遣料金=派遣社員の賃金」ではなく、派遣料金には派遣社員の賃金以外にもさまざまな費用が含まれます。派遣先企業は人材派遣サービスを利用する対価(=派遣料金)を派遣会社に支払い、そこから派遣社員に賃金が支払われる仕組みになっています。

企業が人材派遣を利用する際には、以下に挙げる「初期費用(イニシャルコスト)」と「継続費用(ランニングコスト)」が発生します。

関連記事:労働者派遣の仕組み・請負との違い

派遣料金の仕組みや内訳、マージン率について徹底解説

初期費用

人材派遣における初期費用は、企業が派遣社員を受け入れるための準備費用を指します。派遣社員がスムーズに就業できるよう、業務で使用する備品をあらかじめ準備しておく必要があります。採用活動は派遣会社がおこない、登録型派遣を利用する場合は原則として紹介手数料がかからないため、企業側の採用コストはほとんど発生しません。基本的には受け入れに際しての準備費用のみ必要となります。

継続費用

人材派遣における継続費用は、人材派遣サービスを継続利用するための費用を指します。派遣先企業は、派遣社員の賃金や社会保険料、福利厚生費などを含めた継続費用を派遣会社に支払うことで、派遣サービスを継続して利用できます。このようなランニングコストが「派遣料金」「派遣費用」などと呼ばれています。

2. 派遣料金の内訳

派遣料金を構成する主な内訳は以下のとおりです。

  • 派遣社員の賃金
  • 派遣社員の社会保険料
  • 派遣社員の有給休暇費用
  • 派遣会社の諸経費
  • 派遣会社の営業利益

一般社団法人 日本人材派遣協会によると、派遣社員に支払われる賃金が全体の70%を占めており、派遣料金の大部分が賃金にあてられていることがわかります。賃金以外の費用が「派遣会社のマージン」となり、派遣社員の社会保険料や有給休暇費用、派遣会社の事業運営費用などが含まれます。

派遣料金の内訳

出展:派遣社員の賃金と派遣料金|一般社団法人 日本人材派遣協会

なお、派遣先企業は賃金に関する権利はなく、派遣社員の賃金は雇用主である派遣会社を通じて支払われています。

3. 派遣料金のマージン率

マージンとは「利益」「手数料」などの意味を持つ言葉で、派遣先企業が支払う派遣料金のなかには派遣会社のマージンが含まれています。ここでは派遣料金のマージン率について解説します。

派遣会社のマージン

派遣会社のマージンには以下のような費用が含まれます。

  • 派遣会社が負担する社会保険料(厚生年金保険・健康保険)
  • 派遣会社が負担する労働保険料(雇用保険・労災保険)
  • 派遣会社での教育訓練費・福利厚生費
  • 派遣会社の人件費
  • 派遣会社の営業利益

派遣会社の利益だけでなく、派遣社員の就労に必要な費用もマージンとして加算されています。「マージン率が低いほどよい」「マージン率が高いから悪い」ということはないため、マージン率だけで判断せずに他の情報と組み合わせて評価する必要があります。

マージン率の計算方法

派遣料金のマージン率は以下の計算式で算出します。

マージン率=(派遣料金の平均額-派遣賃金の平均額)÷派遣料金の平均額×100

【計算例】
派遣料金の平均額が24,000円、派遣賃金の平均額が16,000円の場合(8時間換算)

(24,000円-16,000円)÷24,000円×100=33.3%

マージン率は33.3%となります。

マージン率の推移

厚生労働省が公表する「労働者派遣事業の事業報告の集計結果」を用いて、2018年から2022年までのマージン率(平均)を算出しました。近年は上昇傾向にあるものの、おおむね35%強の水準で推移しています。

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
35.4% 35.5% 35.6% 35.8% 35.9%

※小数第二位を四捨五入して算出
参考:労働者派遣事業の事業報告の集計結果について|厚生労働省

4. 派遣料金・派遣賃金の相場

2018年から2022年までの派遣料金・派遣賃金の相場を以下にまとめました。

  2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
派遣料金 23,044円 23,629円 24,203円 24,461円 24,909円
派遣賃金 14,888円 15,234円 15,590円 15,698円 15,968円

※派遣料金・派遣賃金ともに8時間換算
参考:労働者派遣事業の事業報告の集計結果について|厚生労働省

近年は派遣料金・派遣賃金ともに上昇傾向にあります。その背景には、専門的な知識・スキルを持つ派遣人材の需要が増していることや、正社員との不合理な待遇差を是正する同一労働同一賃金の影響があると考えられます。

派遣社員の賃金については以下の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:派遣社員の時給相場はどれくらい?地域別・職種別の時給相場を紹介

5. 派遣会社に求められる情報提供

労働者派遣法の規定により、派遣会社は関係者に対して派遣料金やマージン率などの情報を提供する義務があります(法第23条第5項)。

派遣会社による情報提供が必要な事項は以下のとおりです。

  1. 派遣労働者数
  2. 派遣先件数
  3. 派遣料金の平均額
  4. 派遣社員の賃金の平均額
  5. マージン率
  6. 労使協定の締結状況
  7. 派遣社員のキャリア形成支援制度に関する事項

2021年4月より、上記すべての情報についてインターネットを利用した情報公開が必要となりました。自社のホームページに掲載するほか、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」を活用することが求められています。

参考ページ:マージン率等の情報提供について|厚生労働省

6.派遣先企業に求められる配慮

派遣社員の待遇を確保するには「原資」が必要となります。具体的には、派遣会社が「均等・均衡待遇」または「労使協定に基づく待遇」を確保するための費用です。

派遣先企業はこれらの措置がおこなえるよう派遣料金に配慮する義務が課されており、この配慮は派遣契約の締結・更新時だけでなく、締結・更新がなされた後も継続しなければなりません。派遣会社から求めがあったにもかかわらず、派遣料金の交渉に一切応じない場合には配慮義務を尽くしていないとみなされ、行政による指導の対象となる可能性があります。

7.派遣のコストを抑える方法

派遣先企業が派遣にかかるコストを抑えるには以下のような方法があります。

希望条件の見直し

専門知識やスキルのある人材ほど派遣賃金も高額になります。派遣社員に任せる業務内容を見直し、求めるスキルレベルを下げることで派遣料金を抑えられる可能性があります。また、派遣期間が短いほど費用が高くなる傾向にあるため、短期よりも長期の受け入れを検討したほうがよいでしょう。

複数の派遣会社との比較

同地域・同職種でも派遣会社によって派遣料金は異なるため、複数の会社に見積りをとって検討することをおすすめします。先述のとおり、派遣料金やマージン率などは派遣会社のホームページや厚生労働省の人材サービス総合サイトでも確認できます。単に料金のみで比較するのではなく、派遣社員への福利厚生や教育訓練の内容、キャリア支援に関するサポートなど、さまざまな観点から総合的に判断することが大切です。

残業時間の削減

大企業・中小企業ともに、1か月の時間外労働が60時間以下の場合は25%、60時間を超える場合は50%の割増賃金率が適用され、派遣社員も例外ではありません。派遣社員の時間外労働に関わる派遣料金は個別契約で取り決めされます。

派遣先企業としては、法定の時間外労働分の料金が請求に上乗になることを念頭に置き、なるべく派遣社員に残業させないことでコストを抑えられる可能性があります。残業が多い場合には業務内容や工数を見直し、残業時間の削減に取り組みましょう。

8.派遣料金に関するQ&A

Q. 派遣料金に昇給はありますか?

派遣社員の時給が上がる場合、それに伴って派遣料金も調整されます。派遣会社は、派遣社員のスキルや業務処理のスピードの向上を考慮し、適正な賃金を見積もります。その後、派遣先企業と協議して新しい派遣料金を決定します。時給の変更は、新たな派遣料金について派遣先企業から合意を得た後に、派遣会社から派遣社員へ通知されます。

Q. 派遣社員の交通費は派遣先企業が支払うのですか?

2020年の派遣法改正より、正社員との間の不合理な待遇格差の解消を目的に、派遣社員の交通費が支給されるようになりました。派遣企業が決めた賃金の計算方法「労使協定方式」「派遣先均等・均衡方式」のどちらかの方式に従って、交通費は決定されます。ただし、交通費の負担については、派遣会社と派遣先企業のどちらか明確に決まっていないため協議が必要です。

関連記事:派遣社員の交通費はどうする?取り扱いの注意点を詳しく解説

Q. 派遣社員のボーナスは派遣先企業が支払うのですか?

多くの場合、派遣社員のボーナスは派遣料金に各手当とともに含まれています。ただし、同一労働同一賃金の制度により「派遣先均等・均衡方式」で働く場合には、派遣先企業がボーナスを支給するケースもあります。派遣契約の際にボーナスの取り扱いを確認し、必要に応じて派遣会社と派遣先企業で協議することが重要です。

関連記事:派遣社員にボーナスは出る?賞与の決め方をわかりやすく解説

9.まとめ

派遣料金とは「人材派遣サービスを利用する対価」であり、派遣先企業から派遣会社に支払われるものです。派遣料金は「派遣社員の賃金」と「派遣会社のマージン」で構成され、マージンには派遣会社の利益や事業運営費用のほか、派遣社員の社会保険料や労働保険料、教育訓練費、福利厚生費などが含まれます。

人材派遣の利用を検討している企業にとって、派遣料金のマージン率は気になるポイントの一つかもしれません。しかし、マージン率の高低だけで派遣サービスの良し悪しは判断できないため、その他の情報も取り入れながら多角的な視点で比較検討することが大切です。

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