派遣社員にボーナスは出る?賞与の決め方をわかりやすく解説

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派遣社員にボーナスは出る?賞与の決め方をわかりやすく解説派遣社員にボーナスは出る?賞与の決め方をわかりやすく解説

2020年4月から段階的に導入された「同一労働同一賃金」制度により、派遣社員のボーナスに関する状況に変化が起きています。会社の業績が好調な場合、通常の給与とは別に支給するボーナスを派遣社員にも支払うべきか考えることはあっても、派遣社員の賞与がどのように決められているか十分に理解できていない担当者もいるのではないでしょうか。

この記事では、同一労働同一賃金の概要とともに、派遣社員の賞与の決め方についてわかりやすく解説します。

目次

  1. 派遣社員にボーナスは出る?
  2. 同一労働同一賃金とは
  3. 派遣社員の賞与の決め方:派遣先均等・均衡方式の場合
  4. 派遣社員の賞与の決め方:労使協定方式の場合
  5. まとめ

1.派遣社員にボーナスは出る?

ボーナスとは、定期の給与以外に特別に支給される一時金のことで、支給するかどうかの判断は各企業に委ねられています。しかし、有期雇用で働く派遣社員の場合、ボーナスが支給されることはほとんどありません。

派遣社員にボーナスが出ない理由としては、派遣社員と正社員における給与の性質の違いが挙げられます。

正社員の給与は、毎月基本給をベースに通勤手当や住宅手当てなどの諸手当を上乗せし、さらに個人の評価や会社の業績に応じて年数回のボーナスが支給される仕組みです。一方、派遣社員の給与は多くの場合、はじめから派遣料金(時給)に各手当やボーナスの金額を含めています。

派遣社員にボーナスは出る?

パートやアルバイト、あるいは正社員と比べても派遣社員の給与が高いケースがあるのはこのためで、期間を定めた臨時の労働者として働く派遣社員が待遇面で不平等にならないよう考えられています。

また、派遣社員の給与は派遣先企業が直接支給するのではなく、派遣先企業が派遣会社へ支払う「派遣料金」から支払われています。派遣料金は基本的に「派遣先企業と派遣会社の間で定められた時給×派遣社員の稼働時間」で算出されており、派遣社員に対し労働時間に対する対価以外の支給はおこなわれないのが一般的です。

これらの理由から派遣社員にはボーナスが出ないケースが多いものの、ボーナス制度のある派遣会社で「常用型派遣(無期雇用派遣)」として働く場合と、次に紹介する同一労働同一賃金の制度により「派遣先均等・均衡方式」を採用する派遣会社かつボーナスのある派遣先企業で働く場合は、派遣社員でもボーナスの支給があります。

関連記事:派遣料金の仕組みや内訳、マージン率について徹底解説

2.同一労働同一賃金とは

派遣社員のボーナスに関わる制度として、2018年の改正労働者派遣法で定められた「同一労働同一賃金」があります。

同一労働同一賃金とは、同一企業で働く正社員と非正規社員との間に、基本給や賞与、福利厚生などにおける不合理な待遇差を設けることを禁止するものです。大企業では2020年4月1日から、中小企業では2021年4月1日から適用が始まっています。

派遣社員の待遇においては、以下のいずれかの方式により、派遣会社(派遣元事業主)が派遣社員の待遇を確保することが義務づけられました。どちらの方式を採用するかによって、派遣社員に支払われるボーナスの決め方が異なります。

  1. 派遣先均等・均衡方式
    派遣先企業の通常の労働者との均等・均衡な待遇を確保する
  2. 労使協定方式
    一定の要件を満たした労使協定により待遇を確保する

派遣先企業は、比較対象となる労働者の待遇や派遣社員の業務遂行状況などについて、派遣会社に情報提供する必要があります。加えて、業務の内容や責任の程度、職務に必要な能力を明確にすること、待遇の体系全体を派遣社員を含む労使で確認・共有することが求められます。

さらに派遣契約の場合、雇用関係にあるのは派遣元企業、指揮命令関係にあるのは派遣先企業と、関係者が複数存在します。派遣社員の待遇改善にあたっては、派遣元企業と派遣先企業の両方が認識を共有することが大切です。

関連記事:派遣労働者の「同一労働同一賃金」について

3.派遣社員の賞与の決め方:派遣先均等・均衡方式の場合

「派遣先均等・均衡方式」により派遣社員の待遇を確保している派遣会社は、派遣先企業から提供された比較対象労働者の待遇の情報をもとに、通常の労働者と待遇が均等・均衡となるように派遣社員の待遇の検討・決定をおこないます。

その後、派遣先企業と派遣会社との間で派遣料金の交渉をおこなう際に、派遣先企業は派遣社員の待遇を確保できるよう派遣料金に関して配慮する義務があります(派遣法第26条第11項)。

派遣社員の同一労働同一賃金における均等・均衡待遇の考え方は以下を基本とし、どのような待遇の相違が不合理とされるか具体例を示した厚生労働省策定のガイドライン『短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(同一労働同一賃金ガイドライン)』に準じた対応が求められます。

  1. 均等待遇
    「職務内容(業務の内容+責任の程度)」「職務内容・配置の変更範囲」が同じ場合には差別的な取り扱いを禁止する
  2. 均衡待遇
    「職務内容(業務の内容+責任の程度)」「職務内容・配置の変更範囲」「その他の事情の相違」を考慮して不合理な待遇差を禁止する

また、派遣先均等・均衡方式を採用する場合の賞与については、厚生労働省策定の『不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル』にて以下のように示されています。

賞与について、派遣先の通常の労働者と派遣労働者ともに企業の業績等への労働者の貢献に応じて支給される場合には、貢献に応じて支給される部分については、派遣先の通常の労働者と同一の貢献である派遣労働者には派遣先の通常の労働者と同一の、貢献に一定の違いがある場合にはその違いに応じた支給をしなければなりません。

引用:厚生労働省|不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル

賞与においても正社員と派遣社員との間で不当に格差をつけることは禁止され、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給をおこなう必要があります。

4.派遣社員の賞与の決め方:労使協定方式の場合

派遣社員の待遇確保において、多くの派遣会社は「労使協定方式」を採用しています。労使協定とは、労働者と使用者との間で取り交わされる書面による協定のことです。

労使協定方式では、派遣会社の労働者の過半数で組織する労働組合「過半数労働組合」、または労働者の過半数を代表する「過半数代表者」と派遣会社との間で労使協定を締結し、労使協定に基づいて派遣社員の待遇を決定します。この待遇は、厚生労働省で公表されている職種別平均賃金や地域指数などの情報を含む「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」と同等以上でなければなりません。

関連サイト:「同種の業務に従事する一般労働者の賃金」を確認しましょう!

ただし、以下のようなケースにおいては労使協定方式が適用されず、派遣先均等・均衡方式の適用となることに注意が必要です。

  • 労使協定が適切な内容で定められていない場合
  • 過半数代表者の選出に適切な手続きを経ていない場合
  • 労使協定で定めた事項が守られていない場合

なお、労使協定方式による待遇決定の場合、派遣先企業は比較対象労働者を選定する必要はありません。比較対象労働者の待遇に関する情報としては「①派遣社員と同種の業務に従事する派遣先企業の労働者に対する教育訓練」と「②給食施設、休憩室等の福利厚生施設」の2つの情報を派遣会社に提供する必要があります。

5.まとめ

派遣社員と正社員における給与の性質の違いから、派遣社員にボーナスが支給されるケースは少ないのが一般的です。しかし、2020年4月から段階的に導入されている「同一労働同一賃金」の制度により、正社員と同一の労働をおこなう派遣社員が同等の待遇を確保できるよう、派遣先企業においても派遣料金に配慮する義務が生じています。

派遣社員の賞与の決め方には「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」があり、派遣会社がどちらを採用しているか 又は、派遣会社独自の制度によってボーナスの支給形態が異なります。派遣社員へのボーナスの支給を検討する場合は、いずれにせよ派遣会社への確認が必要となるでしょう。

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