派遣社員の時給相場はどれくらい?地域別・職種別の時給相場を紹介

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派遣社員の時給相場はどれくらい?地域別・職種別の時給相場を紹介派遣社員の時給相場はどれくらい?地域別・職種別の時給相場を紹介

派遣社員が就業先を決めるうえで最も重視する要素の一つが「時給」です。また、派遣先企業の担当者も、派遣社員の時給を決める際には慎重になる必要があります。なぜなら、派遣社員の時給には一定の相場があり、時給相場と比べて過大な業務を与えてしまうと、早期離職やクレームなどのトラブルにつながりかねないからです。

派遣社員に仕事を与える場合、時給相場と比較して相応な内容かどうか、担当者があらかじめ把握しておくのが無難です。このため、派遣先企業の担当者は、地域別・職種別に派遣社員の時給相場を理解しておく必要性が高いといえます。

この記事では、地域別・職種別に派遣社員の時給相場をご紹介します。最後まで読めば、時給相場の概要を把握でき、派遣社員に割り当てるべき業務の目安を付けられるようになるでしょう。

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目次

  1. 派遣社員の時給相場(全国平均)
  2. 派遣社員の時給相場(地域別)
  3. 派遣社員の平均月収
  4. 派遣社員の平均年収
  5. 派遣社員の職種別時給相場
    • 事務・オフィスワーク系
    • 販売・営業・飲食・サービス系
    • IT・エンジニア系
    • Webクリエイター系
    • 医療介護・教育系
    • 工場・軽作業・物流・土木系
  6. パート・アルバイトと比べて派遣社員の時給が高い理由
  7. 最低賃金法に関する注意点
  8. まとめ

1.派遣社員の時給相場(全国平均)

求人情報サイトを運営するディップによると、2023年8月度における派遣社員の平均時給(全国)は1,518円でした(全国版 派遣時給レポート(2023年8月度派遣求人)より)。これは前月比4円増、前年度比37円増の数字です。

近年の派遣社員の時給相場は上昇傾向にあるといえます。厚生労働省の調査によると、2021年度における派遣労働者の平均賃金(8時間換算)は15,698円であり、前年度の15,590円から0.7%増となりました。2020年度の同調査でも、平均賃金は前年度比2.3%増加しています(15,234円→15,590円)。

派遣社員の時給相場(全国平均)

【2021年度】派遣社員の時給相場(全国平均)【2021年度】

出典:厚生労働省「令和3年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)

【2020年度】派遣社員の時給相場(全国平均)【2020年度】

出典:厚生労働省「令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)

時給相場の上昇には、生産年齢人口の減少による人材獲得競争の激化も関係しています。マイナビが実施した非正規雇用に関する採用状況調査によると、2023年5-6月の採用活動実施率が派遣社員・アルバイトともに過去最高を記録しました。特に、派遣社員の「ソフトウェア・通信」分野では前年同期比約8%もの伸長がありました(非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2023年5-6月)より)。

また、アルバイトやパートと比べて派遣社員の時給は高く設定されることが多く、その点も求職者が派遣という働き方を選択するうえで大きな魅力となるでしょう。ただし、平均賃金の1,518円(2023年8月度)はあくまでも全国平均であり、実際には地域や職種によって時給金額に差が生じています。このため、派遣先企業の担当者としては、地域・職種ごとの時給相場も把握しておく必要があります。

2.派遣社員の時給相場(地域別)

ディップが実施した調査によると、2023年8月度の三大都市圏における派遣社員の平均時給は1,574円でした。前月比4円増、前年比29円増であり、全国平均の1,518円と比較して約3.7%高いという結果になりました。派遣社員の時給は地域によって違いがあり、やはり人口の多いエリアのほうが高くなる傾向にあります。

参考:ディップ株式会社「2023年8月度派遣求人 3大都市圏の平均時給は1,574 円 3ヵ月連続で過去最高時給を更新

下表はエリアごとの平均時給と全国平均との比較をまとめたものです。各数値は全国版 派遣時給レポート(2023年8月度派遣求人)に基づきます。

エリア 平均時給 全国平均との比較
北海道・東北> 1,235円 -18.6%
関東 1,665円 +9.7%
北信越 1,264円 -16.7%
東海 1,398円 -7.9%
関西 1,453円 -4.3%
中国・四国 1,246円 -17.9%
九州 1,256円 -17.3%

全体の傾向としては、全国平均(1,518円)と比較したときに関東地方は約9.7%高いものの、その他の地域はいずれも低くなっています。これを見ると、関東地方が全国平均の値を押し上げていること、三大都市圏以外のエリアは全国平均との差が大きいことが読みとれます。

また、専門的な知識が要求される職種のほうが時給も高い傾向にあります。たとえば、三大都市圏における事務的軽作業の平均時給が1,422円であるのに対して、経理の平均時給は1,648円であり、両者を比較すると経理のほうが約15.9%も高くなっています。給与の設定に際しては、地域や職種ごとの特性を加味する必要があるでしょう。

職種別の時給相場については本記事の後半で詳しく解説しています。

3. 派遣社員の平均月収

既出の時給をベースに派遣社員の月収を算出してみましょう。
ここでは1日8時間勤務で、1か月20日間出勤したケースを想定しています。この場合、2023年8月度の全国平均(1,518円)に基づく月収は約24万円です。

《計算式》
1,518円×8時間×20日=242,880円

次に、エリアごとに月収を算出します。

  • 北海道・東北地方

    1,235円×8時間×20日=197,600円であり、約20万円となる

  • 関東地方

    1,665円×8時間×20日=266,400円であり、約27万円となる

  • 北信越地方

    1,264円×8時間×20日=202,240円であり、約20万円となる

  • 東海地方

    1,398円×8時間×20日=223,680円であり、約22万円となる

  • 関西地方

    1,453円×8時間×20日=232,480円であり、約23万円となる

  • 中国・四国地方

    1,246円×8時間×20日=199,360円であり、約20万円となる

  • 九州地方

    1,256円×8時間×20日=200,960円であり、約20万円となる

これを見ると、関東地方は他の地域と比べて約20~35%程度高めであることがわかります。

4. 派遣社員の平均年収

上記と同様に派遣社員の年収も算出してみましょう。 ここでは上記で算出した平均月収をベースに、その12か月分で試算します。この場合、2023年8月度の全国平均(1,518円)に基づく月収は約24万円であり、以下の計算式から年収は約291万円と算出できます。

《計算式》
242,880円×12か月=2,914,560円

次に、エリアごとに年収を算出します。

  • 北海道・東北地方

    197,600円×12か月=2,371,200円であり、約237万円となる

  • 関東地方

    266,400円×12か月=3,196,800円であり、約320万円となる

  • 北信越地方

    202,240円×12か月=2,426,880円であり、約243万円となる

  • 東海地方

    223,680円×12か月=2,684,160円であり、約268万円となる

  • 関西地方

    232,480円×12か月=2,789,760円であり、約279万円となる

  • 中国・四国地方

    199,360円×12か月=2,392,320円であり、約239万円となる

  • 九州地方

    200,960円×12か月=2,411,520円であり、約241万円となる

これを見ると、関東地方だけが平均年収の291万円を超えていることがわかります。ただし、首都圏は物価高も顕著であり、高収入がそのまま生活状況に反映されるわけではない点に注意が必要です。

5.派遣社員の職種別時給相場

ここでは派遣社員の時給相場を職種別に紹介します。なお、以下の数値は全国版 派遣時給レポート(2023年8月度派遣求人)に基づきます。

事務・オフィスワーク系

  • 職種の特徴

    一般事務や受付事務、経理、総務など幅広くバックオフィスの業務全般を指し、書類作成やデータ入力、ファイリング、電話対応などを担当します。採用にあたっては、会計・労務などの専門知識や語学力、Officeソフトをハイレベルに使いこなせるパソコンスキルなどが求められることもあります。

  • 平均時給(全国)

    事務・オフィスワーク系職種の平均時給は1,488円です。

販売・営業・飲食・サービス系

  • 職種の特徴

    営業やラウンダー、接客などの業務を担当します。具体的には、生命保険の営業や携帯ショップでのカウンター業務、アパレルショップでの接客、住宅展示場での受付などがあります。成果が数字として明確に出る分、やりがいのある職種といえるでしょう。また、宅地建物取引士など特定の資格や実務経験が一定年数以上あれば、相場以上の時給を得られることもあります。

  • 平均時給(全国)

    販売・営業・飲食・サービス系職種の平均時給は1,428円です。

IT・エンジニア系

  • 職種の特徴

    エンジニアやプログラマー、OAインストラクターなど、IT関連の職種は需要が高く、派遣社員の平均時給も高めに設定されています。仕事内容としては、システムの運用保守やCAD、DTPデザイン、プログラミングなどがあります。専門知識を要する職種が多いものの、IT業界は人手不足の状況が続いており、未経験可の求人も豊富にあるのが特徴です。

  • 平均時給(全国)

    IT・エンジニア系職種の平均時給は2,284円です。

Webクリエイター系

  • 職種の特徴

    クリエイティブ系の仕事はWeb関連を中心に需要が高く、WebデザイナーやWebディレクター、Web制作などの職種があります。専門性が求められることから、時給も全般的に高く設定されています。

  • 平均時給(全国)

    Webクリエイター系職種の平均時給は1,781円です。

医療介護・教育系

  • 職種の特徴

    他の職種と比べて専門性が高く、資格が要求されることも多い職種です。なかでも医療系職種の時給は高めに設定されており、資格必須の看護師や薬剤師は特に高時給となっています。一方で、これらの職種と比べると、保育士や介護士(ヘルパー)、医療事務などの時給相場はやや低めです。

  • 平均時給(全国)

    医療介護・教育系職種の平均時給は1,491円です。

工場・軽作業・物流・土木系

  • 職種の特徴

    軽作業や物流ドライバー、フォークリフト、入出荷作業、食品製造、OA機器のメンテナンスなどが主な仕事です。商品の梱包・仕分けといった軽作業は時給相場も低めに設定される一方、土木関係など特定の資格や技能を持っている場合は高時給になることがあります。

  • 平均時給(全国)

    工場・軽作業・物流・土木系職種の平均時給は1,310円です。

6.パート・アルバイトと比べて派遣社員の時給が高い理由

パートやアルバイトと比較して派遣社員は時給が高い傾向にあります。しかし、両者の業務内容はあまり変わらないケースも多いため、なぜ時給に差が生じるのか気になる方も多いのではないでしょうか

派遣が高時給になりやすい理由は、パート・アルバイトと比べて、派遣社員を雇用するほうが人件費を低く抑えられるからです。ここでいう人件費には、大別して「採用関連費」と「社会保険関連費」があります。

企業がパートやアルバイトを雇用する場合、求人募集の広告出稿や説明会、面接をおこなう必要があり、これらを実施する過程で一定の費用が発生します。一方、派遣社員を雇用する場合は採用関連費がかかりません。派遣会社と契約すれば、自社で動かなくても条件に合致する人材をすぐに紹介してもらえるからです。

また、パートやアルバイトを雇い入れた後には、社会保険や雇用保険を企業が負担しなければなりません。一方、派遣社員の場合は派遣会社が保険関連の手続きをおこない、その費用も負担することになります。

つまり、派遣社員を雇用すると、企業は給与以外の人件費を低く抑えることができます。このため、パートやアルバイトよりも、派遣社員のほうが高時給になりやすいのです。

7.最低賃金法に関する注意点

派遣社員の時給に関連して注意を要するのが「最低賃金」です。2023年8月に厚生労働省より最低賃金の引き上げ額の発表があり、10月から各都道府県にて適用されています。

派遣社員の時給は最低賃金法との関わりも問題となります。ここで注意したいのが、派遣社員には派遣先企業の最低賃金が適用されることです。つまり、派遣社員に対しては、派遣先企業の最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。最低賃金額は地域別に規定されるため、自社の所在地の最低賃金がいくらになるのか発効年月日とあわせて確認しておきましょう。

参考資料:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧

関連記事:最低賃金引き上げとは?企業にもたらされるメリット・デメリットを解説

8.まとめ

派遣社員として働くうえで重視するポイントに、業務内容や勤務地、福利厚生などの要素があります。そのなかでも、給与は最も重視されるポイントといえます。派遣先企業の担当者としては、派遣社員が担う業務が時給に対して妥当なのか、時給相場と比較しながら確認しておくことが大切です。

相場から考えて十分な水準の給与が確保されていれば、派遣社員の労働意欲や生産性も自ずと高まるものです。本記事でご紹介した地域別・職種別の時給相場を参考に、現在依頼している業務や今後任せる予定の業務が相場に見合ったものかどうか、あらためて確認してみてはいかがでしょうか。

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