3. 派遣切りに違法性はあるのか?
広義には派遣先企業からの契約解除も派遣元企業からの契約解除も「派遣切り」に該当します。派遣先企業または派遣元企業が契約期間満了前に契約を打ち切った場合、その行為は違法となるのでしょうか。
派遣先企業からの契約解除
派遣先企業が、派遣元企業との間で結んでいる労働者派遣契約を中途解除する場合、それが直ちに違法になることはありません。厚生労働省が提示している「派遣先が講ずべき措置に関する指針」には、派遣契約を中途解除する場合の就業機会の確保について定められています。社会通念上、契約期間満了までは契約を継続するのが望ましく、安易な中途解除は避けるように求められていますが、派遣先企業の事情によってやむを得ず契約解除をおこなう場合は、派遣社員の雇用を守るために必要な措置を講じる必要があります。
なお、派遣先企業側の事情ではなく、派遣社員自身に契約解除に相当する理由がある場合には上記の措置は適用されません。
参考:派遣先が講ずべき措置に関する指針|厚生労働省
派遣元企業からの契約解除
派遣元企業が、派遣社員との間で結んでいる労働契約を中途解除する場合、その行為が違法となるケースもあります。派遣先企業と結ぶ労働者派遣契約が解除されたとしても、直ちに派遣社員を解雇できるわけではありません。企業が一方的に契約を終了する「解雇」をおこなうには、社会通念上相当であると認められるような合理的理由が必要となり、企業が望むときにいつでもおこなえるものではないのです。
また、期間を定めて働く派遣社員の場合、やむを得ない事由がない限り解雇することはできないとされています。事前に派遣社員と派遣元企業との間で契約期間の取り決めをおこない、双方の同意のもとで就業しているため、契約期間満了前の解雇については期間の定めのない契約よりも厳しくなります。
参考:労働契約の終了に関するルール|厚生労働省
派遣元企業から契約解除の申し出をする際には、以下の点に留意する必要があります。
30日前の解雇通知
企業は労働者を解雇するとき、少なくとも30日前に解雇予告をしなければなりません。仮に30日前までに解雇予告ができない場合には、解雇までの日数に応じて解雇予告手当を支給する必要があります。たとえば解雇の20日前に予告したときは10日分の手当、10日前に予告したときは20日分の手当、解雇日までに予告をしないときは30日分の手当を支払うことになります。このため、派遣元企業が事前に契約解除を通知せず、必要な手当も支給しない場合、派遣元企業側の違法性が高くなると考えられます。
解雇にあたる合理的な理由
期間の定めの有無にかかわらず、労働者の解雇にあたっては「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。たとえば正当な理由のない無断欠勤を何度も繰り返している場合、会社から指導を受けた後も頻繁に繰り返すのであれば合理的な解雇理由になるといえます。反対に「客観的に合理的な理由」「社会通念上の相当性」の2点が認められない場合には違法性が高くなります。特に有期労働契約における解雇は厳しく、やむを得ない事由がなければ契約期間の途中で打ち切ることはできません。
有期労働契約の雇い止め
有期労働契約において、3回以上契約を更新している、または1年を超えて継続勤務している派遣社員の契約を更新しない場合には、少なくとも契約期間満了日の30日前までにその旨を予告する必要があります。
自主退職を促す場合
派遣契約や労働契約の中途解除にあたっては企業側の違法となるリスクを伴うため、派遣社員に対して自主退職を促すケースもみられます。自社のリスクを避けるために契約解除の申し入れをおこなわず、派遣社員自身に退職の判断をしてもらおうとする行為です。しかし、労働者の退職を促すような言動は違法となるおそれがあり、実際に過去の裁判で長時間・多数回にわたる退職勧奨行為が違法と判断されたケースもあります。