無期雇用派遣と有期雇用派遣の違いとは?それぞれのメリット・デメリットを紹介

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無期雇用派遣と有期雇用派遣の違いとは?それぞれのメリット・デメリットを紹介無期雇用派遣と有期雇用派遣の違いとは?それぞれのメリット・デメリットを紹介

2013年に施行された改正労働契約法により、近年広がりを見せているのが無期雇用派遣という働き方です。無期雇用派遣の人材を雇うことで不利益がないか気になっていたり、有期雇用派遣との違いがわからないという採用担当者の方もいるでしょう。

この記事では、無期雇用派遣と有期雇用派遣との違いやメリット・デメリットについて解説します。

関連記事:派遣から直接雇用へ切り替え!企業のメリットや求められる義務を解説

目次

  1. 無期雇用派遣とは
  2. 無期雇用派遣と有期雇用派遣の違い
  3. 無期雇用派遣のメリット・デメリット
    • 企業側のメリット:長期間就業してもらえる
    • 企業側のデメリット:派遣料金が高くなる可能性がある
    • 労働者側のメリット:収入が安定しスキルアップができる
    • 労働者側のデメリット:自由に勤務先を選べない
  4. 有期雇用派遣のメリット・デメリット
    • 企業側のメリット:固定費を削減できる
    • 企業側のデメリット:後任探しや引き継ぎに工数がかかる
    • 労働者側のメリット:希望に合わせて働ける
    • 労働者側のデメリット:収入が安定しない
  5. まとめ

1.無期雇用派遣とは

無期雇用派遣とは、労働者が派遣会社との間で雇用期間を定めずに契約を結ぶ働き方で、常用型派遣とも呼ばれています。

2015年に改正された労働者派遣法により、それまで一般的だった有期雇用派遣(登録型派遣)では、派遣社員は同じ事業所で原則3年を超えて働くことができなくなりました。

継続して3年以上派遣される見込みとなる場合、派遣会社には以下4つのうちいずれかの雇用安定措置を講じる義務が生まれました。

無期雇用派遣とは
  1. 派遣先企業への直接雇用の依頼
  2. 新たな派遣先の提供
  3. 派遣会社での派遣労働者以外としての無期雇用
  4. その他、雇用の安定を図るための措置

このうち有期雇用派遣から無期雇用派遣に転換し、派遣元の判断で引続き同じ派遣先で就業するケースは2. の措置となります。有期雇用派遣から契約を転換する際に適用される「無期転換ルール」が規定され、2018年ごろから取り入れる派遣会社が増えてきました。

また、近年でははじめから無期雇用派遣としての募集や人材採用をおこなう派遣会社もあります。

関連記事:有期雇用派遣労働者の雇用安定措置について

2.無期雇用派遣と有期雇用派遣の違い

無期雇用派遣と有期雇用派遣の一般的な違いをまとめると以下の表のようになります。

  無期雇用派遣 有期雇用派遣
正式名称 常用型派遣 登録型派遣
契約期間 無期
派遣先企業の有無によらない
有期(最大3年)
派遣先企業に勤務している期間のみ
採用選考 あり なし
待機期間の給与
※年間で4.2ヶ月分支給として計算
あり なし
支払い方式 月給制の場合が多い 時給制の場合が多い
昇給制度 あり あり
キャリア形成支援制度 あり あり
就業規則 派遣会社の定めに準ずる 派遣会社の定めに準ずる
※派遣先の変更とともに条件が変わる

無期雇用派遣は長期の雇用を前提としているため、有期雇用派遣からの転換やはじめから無期雇用派遣として契約する場合は、派遣会社による採用選考があります。しかし、昇給制度やキャリア形成支援制度は無期雇用派遣と有期雇用派遣と共通してあります。

派遣社員にとって大きく異なる点は、派遣先の企業が定まっていない待機期間であっても給与が支払われることです。待機期間中は派遣会社での業務をおこなうか、休業手当の支払いとなる場合もあります。

また、無期雇用派遣では同一業務の雇用契約期間の上限3年が撤廃されているため、継続して同一の業務を続けることが可能です。

派遣先企業にとっては派遣社員が長期間安定して業務についてくれるというメリットがある一方、月給制・昇給制度があるためコストが高くなる可能性もあります。

3.無期雇用派遣のメリット・デメリット

無期雇用派遣のメリットとデメリットについて、企業側・労働者側の両面からみてみましょう。

企業側のメリット:長期間就業してもらえる

無期雇用派遣の人材を雇うメリットは、長期間安定して働いてくれる点です。派遣期間の3年ルールに縛られないため、長期的な業務や習得に時間がかかる業務、すなわち専門性が高い業務を任せることができます。

有期雇用派遣であれば少なくとも3年ごとに後任を探し引き継ぎをおこなう必要がありますが、無期雇用派遣であればその工数がかかりません。採用業務が減り、後任担当者の適性リスクをなくすことができます。

関連記事:派遣の3年ルールとは?派遣先企業が知っておきたい例外と対策

企業側のデメリット:派遣料金が高くなる可能性がある

無期雇用派遣は月給制であることが多く、賞与制度を設けている場合もあるため、時給制を主とする有期雇用派遣と比較して派遣料金が高くなる可能性があります。

また、無期雇用派遣であっても、諸々の事情で3年より短い期間で退職する可能性があることは頭に入れておくべきです。

労働者側のメリット:収入が安定しスキルアップができる

一番のメリットは収入が安定することです。派遣先企業と派遣会社の間で契約が切れた場合、待機期間中も派遣会社で働いたり休業手当をもらったりできるため収入が途切れないという安心感があります。

長期的な仕事も任されるため、有期の場合と比べて責任のある仕事ができ、スキルアップやキャリア形成が可能です。また「キャリア形成支援制度」を設けることが派遣会社に義務づけられているため、派遣会社が用意する研修制度を利用できます。

労働者側のデメリット:自由に勤務先を選べない

無期雇用派遣の場合は派遣先企業を選べない場合があります。また、有期雇用派遣なら、数か月ごとに契約期間の期限が近くなれば、企業側と同様に労働者にも更新の有無を選ぶ権利があります。

ところが、無期の場合は基本的に派遣会社と派遣先企業の契約が続く限り勤務をすることになり、労働期間や労働時間などを調整しやすい有期雇用派遣と比較すると自由度は低くなります。

4.有期雇用派遣のメリット・デメリット

有期雇用派遣のメリットとデメリットについても、企業側、労働者側の両面から紹介しましょう。

企業側のメリット:固定費を削減できる

休業している社員の穴埋めや期間限定の業務にあたるメンバーの補充など、最大3年までの雇用を前提とした短期的な人材の補充に向いています。有期雇用派遣は時給制であることが多いため、実際の稼働に合わせた料金の支払いで済み、固定費を削減することができます。

企業側のデメリット:後任探しや引き継ぎに工数がかかる

有期雇用派遣は最大3年しか雇えないため、後任を探したり業務の引き継ぎをおこなったりする手間がかかります。当然それに伴うリスクも発生します。

また、後任が見つからないなどの理由があっても、最初に契約した期間を延長(更新)することに応じてもらえない可能性があります。

労働者側のメリット:希望に合わせて働ける

有期雇用派遣のメリットは、無期と比較して求人が多く、期間・場所・仕事内容などを希望にあわせて選べることです。人間関係や業務の負担などで就業を続けたくない場合は、契約期間が満了すれば退職できます。つまり働き方の自由度は高くなります。

労働者側のデメリット:収入が安定しない

企業側としては一時的な欠員補充や短期の業務に有期雇用の人材を充てることが多いため、仕事や職場環境が気に入り長期の雇用を希望しても難しい場合があります。また契約期間が満了し退職すれば当然収入が途切れることになります。

5.まとめ

2018年ごろから取り入れる派遣会社が増えてきた無期雇用派遣で、今後も増えていく可能性があります。

派遣先の企業にとっては、長期的な業務や短期間では習得しづらい業務を任せることができるというメリットがある一方で、コストが高くなる可能性も考えられます。

無期雇用派遣について有期雇用派遣と異なる点を理解し、自社が求める人材の要件を派遣会社にしっかり伝えることが大切です。

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