【2024年最新版】労働者派遣法改正のポイントをわかりやすく紹介

人材派遣の基礎知識
【2024年最新版】労働者派遣法改正のポイントをわかりやすく紹介【2024年最新版】労働者派遣法改正のポイントをわかりやすく紹介

1986年の施行から2023年現在までに何度も改正されている「労働者派遣法」。適切な労働者派遣事業により派遣労働者の安全な労働環境を維持するための法律であり、派遣会社はもちろん派遣先企業や派遣労働者本人も、その内容を正しく理解しておく必要があります。

この記事では、労働者派遣法改正の歴史とともに、近年の改正ポイントから見る派遣事業の最新情報についてわかりやすく解説します。

目次

  1. 労働者派遣法とは?
  2. 労働者派遣法改正の歴史
  3. 近年の労働者派遣法改正のポイント
    • 2020年改正のポイント:同一労働同一賃金の導入
    • 2021年改正のポイント:義務の強化により労働者保護をさらに推進
  4. まとめ

1.労働者派遣法とは?

現在の労働者派遣法は、正式名を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」といいます。

1986年に労働者派遣法が施行される前は「職業安定法」のもとで労働者供給事業が禁止されていたものの、1970年代から労働者派遣のニーズが高まり市場が拡大しているという矛盾した状況にありました。

こうした状況下において、労働者保護の観点で抱えていたさまざまな問題を是正し、労働者派遣の需要に応えるために、労働者派遣事業の正しい運営を目的とした労働者派遣法が定められたのです。

その後も労働者派遣の実情や社会の状況にあわせ、法改正を繰り返しながら現在の内容に至っています。

扶養とは

2. 労働者派遣法改正の歴史

労働者派遣法は1986年の施行から2023年現在までに多くの改正を繰り返しています。ここでは法改正の流れと主なトピックを年表で見てみましょう。

施行・改正年 主なトピック
1986年施行
  • 専門知識が求められる16の業務に限り、許可制(一部届出制)で労働者派遣事業をおこなうことが可能となる
  • 派遣期間の上限は原則1年
1996年改正
  • 対象を26の業務に拡大
1999年改正
  • 派遣可能な業種を原則自由化
  • 認可業種を指定するポジティブリスト方式から、禁止業種を指定するネガティブリスト方式に変更(建設・製造・警備・港湾運送・医療・士業などが禁止業種に)
  • 既存の26業務は派遣期間の上限を3年に延長 その他の自由化された業務は1年
2004年改正
  • 2000年に職業安定法改正により合法化されていた「紹介予定派遣」を労働者派遣法で正式に認可
  • 26業務の派遣期間が無制限に変更
    1999年改正で自由化された業務は上限を3年に延長
  • 禁止業種に指定されていた製造業が、派遣期間1年の制限付きで解禁
2006年改正
  • 禁止業種に指定されていた医療業種の一部が条件付きで解禁
2007年改正
  • 製造業の派遣期間の上限を3年に延長
2012年改正
  • 既存の26業務を28業務に整理
  • 日雇い派遣が原則禁止に
    ただし、ソフトウェア開発などの18業務と、60歳以上や学生などの主たる生計者でない者は例外として認められる
  • 派遣会社が自社のグループ企業に労働者を派遣する際、全派遣労働者の8割までを上限とする
  • 直接雇用の労働者が離職してから一年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止する(60歳以上の定年退職者は例外)
  • 派遣会社によるマージン(派遣料金と派遣賃金の差額)率等の情報公開と、派遣労働者に対する待遇等の説明を義務化
2015年改正
  • すべての労働者派遣事業を許可制に変更
  • 派遣期間の上限を業種に関わらず原則3年に統一
  • 派遣労働者の雇用安定措置とキャリアアップ措置を派遣会社に義務付け
  • 労働契約申込みみなし制度を制定
2020年改正
  • 同一労働同一賃金の実施にあたり「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」により賃金を決定することを派遣会社に義務付け
  • 派遣労働者の待遇に関する説明を義務化
2021年1月改正
  • 労働者派遣契約書のデジタル記録を許可
  • 派遣会社が実施する教育訓練とキャリア・コンサルティングに関する説明を義務化
  • 派遣労働者からの苦情に派遣先企業も主体的に対応すべきであると明記
  • 派遣会社が日雇い派遣の適切な雇用管理をすべきことを明確化
2021年4月改正
  • 雇用安定措置において、派遣労働者から希望を聞くことを派遣会社に義務付け
  • 派遣会社に情報提供が義務付けられているすべての情報を、インターネットで提供することを原則化
  • 派遣会社に情報提供が義務付けられているすべての情報を、インターネットで提供することを原則化

※「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則」、および、「改正労働者派遣法の概要」をもとに作成

年表で労働者派遣法の改正内容を追ってみると、2007年までは需要に応じた派遣業の規制緩和、2012年以降は派遣労働者保護のための規制強化が大きな流れとなっていることがわかります。

これは、日雇い派遣が問題となった2007年、リーマンショックが起こった2008年頃に突然の派遣切りや雇止めにより苦境に立たされる派遣労働者が増えたこと、違法派遣が社会問題化したことなどが影響しています。

2012年の改正では、労働者派遣法の正式名が「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」から「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」に変更され、派遣労働者の保護を目的とした法律であることが明示されました。

関連記事:派遣切りとは?意味や違法性、企業の対処法を解説

3.近年の労働者派遣法改正のポイント

近年おこなわれた労働者派遣法の改正内容から、派遣事業における最新情報を以下にまとめました。

2020年改正のポイント:同一労働同一賃金の導入

2020年の改正は、同一企業で働く正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間にある不合理な格差の解消を目指す「同一労働同一賃金」の実現に向けた重要な改正となりました。

派遣会社には、派遣先企業の正規雇用労働者との均等・均衡な待遇を確保する「派遣先均等・均衡方式」、または一定の要件を満たした労使協定による待遇を確保する「労使協定方式」のどちらかを選択し、派遣労働者の待遇を決めることが義務付けられました。

多くの派遣会社が採用している労使協定方式の場合、賃金等の比較対象とされるのは厚生労働省が公表する「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」です。ただし、教育訓練の実施や食堂・休憩室などの利用における派遣労働者の待遇は、派遣先企業の通常の労働者の待遇をもとに決める必要があります。

そのため、派遣会社がどちらの方式を採用する場合でも、待遇に関する情報を派遣会社へ提供することが派遣先企業に義務付けられています。

関連記事:派遣労働者の「同一労働同一賃金」について

2021年改正のポイント:義務の強化により労働者保護をさらに推進

2021年の改正では、書面による作成が必要だった派遣契約書について電磁記録での作成が認められたほか、派遣労働者に対しキャリア支援に関する説明や雇用安定措置に関わる希望聴取をおこなうことが派遣会社に義務付けられました。

派遣会社の義務を強化することで、これまでもおこなわれてきた派遣労働者の保護と支援をさらに具体的に推し進めることが目的と考えられます。

また、派遣先企業に対し、派遣労働者からの苦情に対する主体的な対応が義務付けられたことも押さえておくべきポイントです。派遣労働者の苦情は雇用主である派遣会社が対応するケースが多かったものの、2021年の改正では派遣先企業を「派遣労働者を雇用する事業主」と位置付けており、その苦情に対しては「誠実かつ主体的に対応しなければならない」と明記しました。

関連記事:有期雇用派遣労働者の雇用安定措置について

4. まとめ

これまで多くの改正を繰り返してきた労働者派遣法ですが、2012年以降の改正では労働者保護のための規制強化が軸となっています。また、2020年と2021年の改正では派遣先企業が取り組むべき義務についても触れられているため、派遣労働者を受け入れている企業では改正内容をしっかり把握したうえで対応していく必要があります。

労働者派遣法は、今後も社会状況や課題に対応する形で改正がおこなわれることが想定されます。違反を避けるため、また派遣労働者を適切に保護するためにも、派遣事業に関わるすべての者が労働者派遣法を正しく理解することが求められるでしょう。

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