派遣社員の有給休暇はいつから?付与日数や取得条件を解説

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派遣社員の有給休暇はいつから?付与日数や取得条件を解説派遣社員の有給休暇はいつから?付与日数や取得条件を解説

年次有給休暇の取得は、労働基準法第39条に定められた労働者の権利です。雇入れ日から6か月継続して勤務(かつ全労働日の出勤が8割以上)した労働者に取得が認められます。

有給休暇は正社員だけではなく、パートタイマーやアルバイト、派遣社員にも認められています。ただし派遣社員の場合は、有給休暇を付与するのは派遣先ではなく、派遣元であるため派遣先企業にはいくつかの注意点があります。

この記事では、派遣社員の有給付与に際し、気をつけるべき日数、取得条件、取得するタイミングについて詳しく解説していきます。また、派遣先企業と派遣元企業の役割の違いや、有給休暇取得に関する注意点についても触れていきます。

目次

  1. 派遣社員の有給休暇の取得条件
    • 派遣先が変わっても日数は引き継がれる
    • 派遣先企業の休業日に有給休暇取得はできない
  2. 派遣社員の有給休暇が発生するタイミングと日数
    • 労働基準法39条にもとづく原則的な有給休暇付与日数
  3. 派遣先企業による計画付与や時季変更はできない
    • 年次有給休暇の計画的付与制度とは
    • 時季指定権とは
  4. 派遣社員の有給休暇を申請する流れ
  5. まとめ

1.派遣社員の有給休暇の取得条件

派遣社員が有給休暇を取得する条件について、以下の2つがあります。発生するタイミングや日数の規定に関して一般の労働者との違いはありません。週所定労働日数5日以上、または週所定労働時間30時間以上にあたる労働者の場合、以下の付与条件を満たしていれば有給休暇付与の日数は10日となります。

  1. 雇入れの日から起算して6か月以上継続して勤務している
  2. 期間中の全労働日の8割以上出勤している
派遣社員の有給休暇の取得条件

付与日数は勤続年数に応じて最大年間20日まで増加します。なお、週の所定労働日数・労働時間が少ない労働者に対する付与日数は、労働日数に応じた有給休暇が付与されます。後述の「派遣社員の有給休暇が発生するタイミングと日数」で詳しく説明します。

これらの条件は、労働基準法に基づいて定められており、派遣社員だけでなく、正社員やパートタイマー、アルバイトなど、すべての労働者に適用されます。派遣社員の場合、有給休暇の付与や管理は派遣元企業が行いますが、取得条件自体は他の雇用形態と同じです。

派遣先が変わっても日数は引き継がれる

派遣社員の場合、有給休暇を付与するのは派遣元の企業です。同一の派遣会社と雇用契約を結び継続的に勤務した場合、勤務期間が6か月間以上あれば有給が付与されます。つまり、働く企業(派遣先)が変わっても「継続した勤務期間」としてカウントされ、取得日数と有給休暇の「残日数」がその後も引き継がれます。

例えば、派遣先企業A社で5か月間勤務し、その後空白期間がなく直ぐにB社での勤務が開始された場合、B社での勤務が1か月を超えた時点で、同一派遣会社のもとで継続して6か月以上働いた実績となります。出勤率も合わせたうえで、有給休暇が発生することになります。

ただし、同一の派遣会社の契約であっても、派遣先企業が切り替わる際に一定の空白期間がある場合は注意が必要です。以下の2点に気をつけましょう。

  1. 有給休暇の残日数は消滅
  2. 以前の勤務期間、日数、時間もリセットされ、次の勤務開始から数え直す

これらの点を考慮し、派遣社員は自身の勤務状況や有給休暇の取得状況を把握しておくことが重要です。また、派遣元企業とのコミュニケーションを密に取り、有給休暇に関する疑問点があれば適宜確認することをおすすめします。

派遣先企業の休業日に有給休暇取得はできない

派遣社員の有給休暇取得に関して、派遣先企業の休業日には有給休暇を取得できないという重要なポイントがあります。これは、有給休暇が本来労働する予定の日に対して付与されるものだからです。具体的には、派遣先企業が土日祝日を休業日と定めている場合、これらの日に有給休暇を取得することはできません。

①労働義務のない日

派遣社員の有給休暇取得に関して、派遣先企業の休業日には有給休暇を取ることができない点が重要です。具体的には、派遣先企業が土日祝日を休業日と定めている場合、これらの日に有給休暇を取得することはできません。これは、労働義務がない日には有給休暇を取得する必要がないためです。また、派遣先企業は、休業日に変更があった場合、派遣元企業に連絡する必要があります。

②派遣先企業の都合で従来の休業日以外に 「休日」と定めた日

派遣先企業の都合で、通常の休業日以外に臨時の休日を設定した場合も同様です。このような日に派遣社員が有給休暇を取得する必要はなく、派遣先企業や派遣元企業が有給休暇の取得を強制することもできません。

このような状況が発生した場合、派遣元企業は別の企業への派遣を検討するなどの対応を行います。もし適切な派遣先が見つからず、派遣社員を休業させる必要がある場合は、派遣元企業が休業手当を支払う義務があります。ただし、この休業手当の負担については、派遣先企業と派遣元企業の間で締結された契約に基づいて、派遣元企業が派遣先企業に請求するケースもあります。

派遣先企業が年間予定で独自の休業日を定める場合は、派遣契約を結ぶ際に「派遣就労をする日」から除外する必要があります。これにより、派遣社員の労働条件を明確にし、有給休暇の取得に関する混乱を防ぐことができます。

2.派遣社員の有給休暇が発生するタイミングと日数

年次有給休暇は、労働基準法によって定められた重要な労働者の権利です。派遣社員の場合も例外ではなく、有給休暇の発生タイミングや付与日数は他の雇用形態の労働者と同様の規定が適用されます。

派遣社員の有給休暇が発生するタイミングは、継続勤務開始から6か月経過後となります。その後は1年ごとに新たな日数が付与されます。

有給休暇の付与日数については、契約書に記載されている所定労働日数や所定労働時間によって異なりますが、法律で定められた最低限の日数を与えなければなりません。ただし、企業の判断により、法定日数以上の有給休暇を付与することも可能です。中には、入社時や6か月を待たずに有給休暇を付与する企業もあります。

なお、有給休暇には有効期限があることに注意が必要です。労働基準法第115条により、有給休暇の有効期限は付与されてから2年間と定められています。そのため、計画的に有給休暇を取得することが望ましいでしょう。

労働基準法39条にもとづく原則的な有給休暇付与日数

労働基準法第39条に基づく有給休暇の付与日数は、労働者の勤続年数や週の所定労働日数、所定労働時間によって異なります。以下に、代表的な2つのケースについて詳しく説明します。

1)所定労働日数が週5日以上かつ所定労働時間が週30時間以上の場合

継続勤務年数(年) 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
付与日数(日) 10 11 12 14 16 18 20

この場合、勤続6ヶ月(0.5年)で10日の有給休暇が付与され、その後1年ごとに付与日数が増加していきます。最終的に6.5年以上の勤続で年間20日の有給休暇が付与されます。

なお、年10日以上の有給休暇が付与される労働者については、使用者に対して、そのうち5日分の取得を義務付ける制度が設けられています。これは「基準日」から1年以内に、使用者が時季を指定して取得させるものです。

2)所定労働日数が週4日以下かつ所定労働時間が30時間未満の場合

週所定
労働日数
1年間の所定労働日数※ 継続勤務年数(年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
付与日数(日)
4日 169日~216日 7 8 9 10 12 13 15
3日 121日~168日 5 6 6 8 9 10 11
2日 73日~120日 3 4 4 5 6 6 7
1日 48日~72日 1 2 2 2 3 3 3

※週以外の期間によって労働日数が定められている場合

この表は、週の所定労働日数や1年間の所定労働日数に応じて、勤続年数ごとの有給休暇付与日数を示しています。例えば、週4日勤務の場合、勤続6ヶ月(0.5年)で7日の有給休暇が付与され、勤続年数とともに付与日数が増加していきます。

派遣社員の場合、同一の派遣会社との契約が継続している限り、派遣先が変わっても勤続年数や有給休暇の残日数は引き継がれます。ただし、平成27年の労働者派遣法改正により、原則として派遣先の同一組織での就業期間は3年を超えられなくなりました。そのため、同一企業で組織を変更して長期間勤務している派遣社員については、派遣元での継続勤続年数や有給付与日数を適切に管理することが重要です。

3.派遣先企業による計画付与や時季変更はできない

派遣社員の有給休暇取得に関しては派遣元が付与するのですが、これは、労働基準法により定められている使用者の義務や権利を派遣会社が持つということを意味します。

そのため、派遣先が知っておくべき重要な点は、派遣先が派遣社員に対して「計画付与」として指定した日に有給休暇を取得させたり、派遣社員が希望した有給取得日を「時季変更権」によって他の時季に変更させたりすることはできない、ということです。

この規定は、派遣社員の労働環境を保護し、公平な有給休暇の取得を保証するために設けられています。派遣先企業は、派遣社員の有給休暇に関する権利を尊重し、適切に対応する必要があります。

年次有給休暇の計画的付与制度とは

年次有給休暇の計画的付与制度は、労使協定を結ぶことで、年次有給休暇のうち5日を超える部分について、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。この制度を活用することで、企業は従業員の休暇取得を効率的に管理し、労働者の休暇取得を促進することができます。

派遣先企業が創立記念日や連休など特定の日程に全従業員一斉での計画年休を予定している場合、派遣社員に対してはこの制度を直接適用することはできません。そのため、派遣契約を締結する際に、あらかじめそれらの日程を、派遣就労をする日から除外するなどの対応が必要となります。これにより、派遣先企業と派遣社員の双方にとって、スムーズな業務運営と休暇取得が可能となります。

時季指定権とは

時季指定権とは、労働者が年次有給休暇をいつ取得するか、その時季を指定できる権利のことです。これは労働基準法で定められた労働者の権利であり、使用者は原則として労働者が指定した時季に年次有給休暇を与えなければなりません。

ただし、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、使用者は別の時季に変更することができます。これを時季変更権といいます。

派遣社員の場合、この時季指定権および時季変更権は派遣元が持つため、派遣先企業が直接行使することはできません。そのため、派遣社員の有給休暇取得により業務に重大な支障が出てしまうことが時期的に想定される場合は、派遣元に派遣社員の代替要員を依頼できるように連絡を密にしておくなど、もしもの時に備えて事前に話し合っておくことが重要です。

また、派遣先企業は派遣社員の有給休暇取得状況を把握し、必要に応じて派遣元と連携して適切な取得を促すことも大切です。これにより、派遣社員の労働環境の向上と、円滑な業務運営の両立を図ることができます。

4.派遣社員の有給休暇を申請する流れ

派遣社員が有給休暇を取得する際は、以下の手順を踏むことが一般的です。

  1. 派遣先への確認: 希望する日程で業務に支障がないか、派遣先の担当者に確認します。
  2. 派遣元への申請: 派遣先の了承を得たら、派遣元の担当者に有給休暇の申請を行います。
  3. 派遣元の承認: 派遣元が申請を確認し、承認します。
  4. 有給休暇の取得: 承認された日程で有給休暇を取得します。

なお、派遣元と有給休暇の申請方法や連絡体制について事前に取り決めがある場合は、その内容を派遣社員に周知し、定められた手順に従うように促すことが重要です。また、派遣社員が急遽有給休暇を取得する必要が生じた場合には、できるだけ早めに派遣先および派遣元の双方に連絡を入れるよう、あらかじめ伝えておくと良いでしょう。

5.まとめ

有給休暇の付与のタイミングや日数等については、労働基準法ですべての労働者に対し定められているため、派遣社員とそれ以外の労働者との間では、ほとんど違いはありません。ただし、有給休暇を付与するのは派遣元であるため、一部違いがあり、その違いを知っておく必要があります。

派遣先が独自の規定があり、一斉計画年休を定めたり、時季指定ができなかったりする場合には、注意が必要です。派遣先が急遽休業日を設定する可能性がある場合は、あらかじめ派遣元と派遣先の担当者はよく話し合った上で、派遣の契約内容に盛り込むようにしましょう。

派遣社員の有給休暇に関しては、派遣元と派遣先の双方が適切に管理し、円滑な運用を心がけることが重要です。特に、派遣先企業は派遣社員の有給休暇取得に関する制限事項を理解し、派遣元との連携を密にすることで、法令遵守と効率的な業務運営の両立を図ることができます。

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