アンコンシャス・バイアスとは?職場での具体例と対策法をわかりやすく解説

人材派遣の実践
アンコンシャス・バイアスとは?職場での具体例と対策法をわかりやすく解説アンコンシャス・バイアスとは?職場での具体例と対策法をわかりやすく解説

職場で生じるアンコンシャス・バイアスは社員同士のコミュニケーションに影響を与え、誤解や摩擦を生む要因となることがあります。特に派遣社員は組織における立場が異なるため、無意識の偏見がコミュニケーションの障壁になりやすく、これを放置すればモチベーションの低下や短期離職にもつながりかねません。派遣社員と良好な関係を築くためには、自社に存在する無意識の偏見・思い込みへの対策を講じる必要があります。

この記事では「アンコンシャス・バイアス」を取り上げ、職場での具体例や解消するための対策についてわかりやすく解説します。

目次

  1. アンコンシャス・バイアスとは
  2. アンコンシャス・バイアスが注目される背景
  3. マイクロアグレッションとの違い
  4. 職場に潜むアンコンシャス・バイアスの具体例
    • 職場全体における具体例
    • 採用・育成における具体例
    • 人事評価における具体例
    • 人材活用における具体例
  5. アンコンシャス・バイアスが及ぼす悪影響
    • 個人への影響
    • 社内への影響
    • 社外への影響
  6. アンコンシャス・バイアスを解消する取り組みの効果
  7. アンコンシャス・バイアスを解消するための対策
    • 【1】社員への周知
    • 【2】組織の実態調査
    • 【3】研修の実施
  8. 派遣社員とのコミュニケーションを円滑に進めるには
  9. まとめ

1.アンコンシャス・バイアスとは

アンコンシャス・バイアスとは、過去の経験や習慣、自身の価値観から起こる「無意識の偏見」「無意識の思い込み」のことです。たとえば赤いランドセルを見て女の子をイメージする、親が単身赴任中と聞いて父親をイメージするなど、無意識に「こうだろう」「こうあるべきだ」と思い込んでいることがアンコンシャス・バイアスに該当します。

【アンコンシャス・バイアスの代表的な種類】

種類 概要
ハロー効果 一部の目立つ特徴に引きずられて全体の評価が歪む現象
ステレオタイプ 大多数の人々に浸透している先入観や思い込み
確証バイアス 自分の意見を肯定する情報ばかりに注目する傾向
正常性バイアス 異常な事態に遭遇しても「正常の範囲内」と捉える傾向
サンクコスト効果 回収不可能な投資に気を取られて合理的な判断ができなくなる現象
インポスター症候群 成功や称賛を受け入れられずに自分を過小評価する傾向
アンコンシャス・バイアスとは?職場での具体例と対策法をわかりやすく解説

2.アンコンシャス・バイアスが注目される背景

アンコンシャス・バイアスが注目される背景には、労働者の属性や働き方が多様化していることがあります。女性やシニア世代、外国人労働者など多様な人々の活用や、リモートワークや時短勤務、フレックスタイム制といった柔軟な働き方の普及が進む現代において、過去の経験則や社内の常識だけで物事を判断するのは合理的とはいえません。ジェンダー平等やダイバーシティを実現し、誰もが安心して働ける環境をつくるためにも、組織や個人に潜在するアンコンシャス・バイアスの解消が不可欠です。

3. マイクロアグレッションとの違い

アンコンシャス・バイアスとマイクロアグレッションは、どちらも無意識の偏見に関連する概念ですが、異なる側面を持っています。アンコンシャス・バイアスは「内面的な偏見や思い込み」を指し、個人の認知や判断に影響を与えるものです。

一方で、マイクロアグレッションはその偏見が表出したもので、「無意識の差別的発言や行動」を指します。例えば、「女性だから運転が苦手だろう」といった思い込み(アンコンシャス・バイアス)が、実際の発言として表れるとマイクロアグレッションになります。このように、前者が内在的な認知の偏りであるのに対し、後者はその結果として他者に影響を及ぼす具体的な言動です。

4. 職場に潜むアンコンシャス・バイアスの具体例

職場には多様な人々が集まり、無意識の偏見が起こりやすい環境といえます。具体的にどのような偏見があるのか、ここでは職場で起こりやすいアンコンシャス・バイアスの具体例を紹介します。

職場全体における具体例

職場で起こりやすいアンコンシャス・バイアスには以下のようなものがあります。

  • お茶出しや電話の取り次ぎは女性がやる仕事である
  • 男性は育児休業を取得する必要がない
  • シニア世代の社員はパソコンを使いこなせない
  • 若手社員は仕事よりもプライベートの時間を重視している
  • 派遣社員には「派遣さん」と呼びかける(個人の名前で呼びかけない)

採用・育成における具体例

採用・育成時に起こりやすいアンコンシャス・バイアスには以下のようなものがあります。

  • 女性は総合職よりも一般職のほうが向いている
  • 有名大学や大企業を出ているから優秀な人材に違いない
  • 体育会系の部活を経験しているから体力があるだろう
  • 女性は必ずしも正規雇用にこだわる必要はない
  • 仕事と育児との両立は難しい / 仕事と介護との両立は難しい
  • 女性は責任の重い仕事をやりたがらない

人事評価における具体例

人事評価で起こりやすいアンコンシャス・バイアスには以下のようなものがあります。

  • 自分と気の合う社員を高く評価する
  • 自分が気に入っている社員の失敗は甘く評価する
  • 仕事とは関係のない属性(性別や国籍など)を評価基準に加えている
  • 残業や休日出勤の多い社員ほどモチベーションが高い
  • 定時で帰る社員は仕事に対してやる気がない

人材活用における具体例

人材活用で起こりやすいアンコンシャス・バイアスには以下のようなものがあります。

  • 育児期間中の女性に転勤を伴う異動をさせない
  • 実力が同程度であれば男性のほうから昇進させるべきだ
  • 大きな商談は男性にやらせるべきだ
  • 外国人の社員には日本語を使う業務を任せないほうがよい
  • 組織のリーダーは男性のほうが向いている

5. アンコンシャス・バイアスが及ぼす悪影響

アンコンシャス・バイアスが存在するとどのような影響があるのか、無意識の偏見が組織に及ぼす悪影響を紹介します。

個人への影響

社員個人への影響としては、モチベーションやチャレンジ精神の低下、ネガティブ思考、疎外感の増幅などが挙げられます。アンコンシャス・バイアスが原因で仕事に対する意欲や活力がなくなり、新しい挑戦ができずに成長機会を失ったり、仕事のパフォーマンスが落ちてしまったりすることがあります。

社内への影響

社内への影響としては、社員同士のコミュニケーション不全やハラスメントの増加、人材活用の偏りなどが挙げられます。無意識の偏見が言動にあらわれると、知らず知らずのうちに誰かを傷つけてしまい、信頼関係が失われることがあります。また、人材活用においてアンコンシャス・バイアスが働くと「男性だからリーダーが向いている」「女性だから事務職が向いている」など属性と役割を結び付けた判断を下し、適材適所の配置が難しくなることも少なくありません。

社外への影響

社外への影響としては、偏った情報発信や差別的発言による炎上リスク、ステークホルダーとの関係悪化、採用活動の難航などが挙げられます。アンコンシャス・バイアスを放置すると、組織に向けられる社会的な信頼を失うことにもなりかねません。近年はDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)など多様性を尊重する概念が浸透しており、多様な人材を活かせる組織が高く評価されています。

6.アンコンシャス・バイアスを解消する取り組みの効果

アンコンシャス・バイアスを解消する取り組みによって、組織には多くのポジティブな効果が期待できます。まず、無意識の偏見を解消することで、多様な人材が能力を最大限発揮できる環境が整い、組織の創造性や革新性が向上します。また、公平な人事評価が可能となり、ハラスメント防止や安全で快適な職場環境の実現につながります。

さらに、異なる価値観や背景を持つ社員同士の協力を促進し、グローバル市場や多様化する顧客ニーズへの柔軟な対応力が高まります。このような取り組みは、社員のモチベーション向上や生産性改善を通じて、組織全体の持続的成長と競争力強化を後押しします。

関連記事:派遣社員がパワハラを受けた場合の派遣先企業の対応について解説

7.アンコンシャス・バイアスを解消するための対策

職場におけるアンコンシャス・バイアスを解消するための対策を紹介します。

【1】社員への周知

まずはアンコンシャス・バイアスの具体例を社員へ周知し、自分で認識できない「無意識の偏見」であることや個人・組織にさまざまな影響を及ぼすことを説明します。

アンコンシャス・バイアスはそのもの自体が悪いというわけではありません。しかし、職場における無意識の偏見や思い込みは、働く人のモチベーションを下げたりコミュニケーションを悪化させたりする要因となります。このような悪影響を防ぐために、組織としてアンコンシャス・バイアスを解消するための対策が必要である旨を伝えましょう。

【2】組織の実態調査

次に、組織の実態を把握するための調査をおこないます。
社員へのヒアリングやアンケート、診断テストなどを実施し、自社に潜むアンコンシャス・バイアスの種類や傾向を把握しましょう。アンコンシャス・バイアスは自分では気づきにくいため、調査をおこなうことで社員自身が自らの潜在的な偏見を認識するきっかけにもなります。

【3】研修の実施

アンコンシャス・バイアス研修を実施し、無意識の偏見・思い込みとの付き合い方を学びます。アンコンシャス・バイアスは誰もが持っているため、経営層や人事部だけでなく全社員を対象に実施するのがポイントです。ケーススタディやワーク、第三者からのフィードバックなど、実践的かつアウトプット重視の研修がより効果的でしょう。

8.派遣社員とのコミュニケーションを円滑に進めるには

派遣社員は組織における立場が異なり、アンコンシャス・バイアスの影響を受けやすい存在といえます。円滑なコミュニケーションをとるためには、派遣社員だからといって区別することなく、自社の社員と同様に接することが重要です。

たとえば派遣社員も含めて研修や勉強会への参加を促す、声をかけるときは「派遣さん」ではなく名前で呼ぶ、派遣社員の意見も自社の社員と同等に扱うなど、職場内で垣根を感じさせない接し方を心がけるとよいでしょう。これにより派遣社員は孤立感や疎外感を感じることなく、他の社員ともスムーズにコミュニケーションをとれるようになります。

関連記事:派遣社員の働く意欲を高める社内コミュニケーションの方法とは

9.まとめ

アンコンシャス・バイアスとは、自分自身は気づいていない「無意識の偏見」を意味する言葉です。多様な人材が集まる職場ではアンコンシャス・バイアスが起こりやすく、個人や社内・社外など多方面に悪影響が及びます。性別や年齢、働き方などの属性に左右されず、誰もが活躍できる組織をつくるためには、職場における無意識の偏見を解消する取り組みが必要です。

特に派遣社員はアンコンシャス・バイアスの影響を受けやすく、派遣先企業には立場の異なる人々が孤立せず安心して働ける環境を用意することが求められます。アンコンシャス・バイアスへの理解を深める研修を実施するなど、無意識の偏見との付き合い方や対処法を学ぶ機会をつくり、社員の行動変容を促していくことが大切です。

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