

派遣社員の派遣期間が終了する際には、後任となる派遣社員や正社員に対して業務の引き継ぎを行う必要があります。
引き継ぎの作業は基本的に担当者間で行いますが、スムーズに引き継ぎ作業を実施するためには、企業の人事や現場担当者がフォローすることも重要です。
この記事では、企業が把握しておくべき派遣社員の業務引き継ぎの流れや、企業に求められる対応について解説していきます。
目次
- 派遣社員の業務引き継ぎの流れ
- 現在の業務を洗い出す
- 引き継ぎを行う期間と相手を確認しスケジュールを立てる
- 引き継ぎ書やマニュアルを作成する
- 引き継ぎを実施する
- 派遣社員の業務引き継ぎで企業が行うべき対応
- 有給休暇の残日数と取得希望を確認する
- 引き継ぎ期間に余裕を持たせる
- 前任者に過度な負担がかからないよう配慮する
- 後任者に業務のつながりや全体像を伝える
- マニュアルの作成や更新を通常の業務に含める
- 派遣社員の業務引き継ぎにおける注意点
- 引き継ぎのための過度な残業は問題になる
- 業務引き継ぎに消極的な前任者もいる
- 教育は企業で行う
- まとめ
1.派遣社員の業務引き継ぎの流れ
まずは基本的な派遣社員の業務の引き継ぎの流れを紹介します。派遣期間の満了が決まり、業務の引き継ぎの指示を受けたとき、前任者は以下の手順で引き継ぎを行うことになります。

現在の業務を洗い出す
まずは、前任者が担当している業務の棚卸を実施します。年に1回など頻度の少ないものから日常的に発生する作業までリストアップし、「年次」「月次」「日次」「不定期」など業務が発生するタイミングまで詳細に記載します。これにより、業務の全体像を把握し、引き継ぎの優先順位を決定する基礎となります。
業務のリストアップと合わせて、後任者と対面で引き継ぎを行うべき業務なのか、書面や口頭での引き継ぎで済む業務なのかなど、重要度を整理しておくことで、引き継ぎにかかる業務の時間を把握することができます。また、この過程で業務の関連性や関連部署との連携も明確になり、スムーズな引き継ぎにつながります。
さらに、業務の洗い出しの際には、定型業務だけでなく、突発的に発生する可能性のある業務や、季節性のある業務なども含めて整理することが重要です。これにより、後任者が予期せぬ事態に直面した際にも適切に対応できるよう準備することができます。
引き継ぎを行う期間と相手を確認しスケジュールを立てる
一般的な派遣社員の場合、前任者と後任者を同時に雇用する期間を決めるのは派遣先企業や派遣元企業になります。
そしてその引き継ぎ期間は2~4週間以内になることが多いです。前任者は引き継ぎの期間を確認し、通常業務のスケジュールも加味しながら、引き継ぎのスケジュールをたてることになります。
引き継ぎ期間が短い場合や、引き継ぎ期間に対して業務量が多い場合には、現場担当者と相談の上、すべての業務を後任者に引き継ぐのではなく、他の社員に振り分けるなどの調整を行います。
この際、前任者は引き継ぎ相手となる後任者の経験やスキルレベルも考慮に入れる必要があります。また、引き継ぎ相手が決まっていない場合は、現場担当者と相談しながら、引き継ぎ書の作成を優先するなど、柔軟な対応が求められます。
引き継ぎ書やマニュアルを作成する
対面での引き継ぎを実施する場合でも、前任者の退職後に後任者が参照したり、後任者の急な不在時に別の社員が代理で対応したりするために、引き継ぎ書やマニュアルは必ず用意しておくことが重要です。
作成にあたっては、はじめてその業務に接する人の視点に立ち、わかりやすく細かな説明を心がけましょう。具体的には、業務の手順や注意点、使用するツールやシステムの操作方法などを、画像や図表を用いて視覚的にも理解しやすいように工夫することが効果的です。
前任者目線で過去に苦労した業務のフォローやイレギュラーの対応まで記載することが理想的ですが、しっかりとした書面を一から作成しようとすると想像以上に時間が必要となります。時間が足りないようであれば、現場担当者と相談のうえ優先順位を決めて取り組んでいきましょう。
また、引き継ぎ書やマニュアルは、後任者が実際に業務を行う中で気づいた点を随時更新できるよう、電子データでの作成・保管を推奨します。常に最新の情報を維持し、将来的な引き継ぎにも活用できる資料となるでしょう。
引き継ぎを実施する
後任者の就業開始後、対面での引き継ぎを実施します。この段階では、事前に作成した引き継ぎ書やマニュアルを活用しながら、実際の業務の流れや注意点を丁寧に説明していきます。
通常業務の影響や後任者のスキルレベルによって、想定よりも時間がかかりスケジュールが後ろ倒しになってしまう可能性もあるため、引き継ぎを行う際には優先順位を考え、現場担当者と相談しながらスケジュールを調整しながら進める必要があります。
また、後任者の理解度を確認しながら進めることも重要です。質問や疑問点があれば、その場で丁寧に回答し、必要に応じて追加の説明や資料の提供を行うことで、より確実な引き継ぎが可能となります。
さらに、引き継ぎ期間中に発生した特殊なケースや想定外の事態については、その都度対応方法を説明し、可能であれば実際に後任者に対応してもらうことで、実践的な経験を積んでもらうことも効果的です。