時短勤務制度の導入マニュアル|給与計算のルールと社会保険、対象となる期間を解説

人材派遣の実践
時短勤務制度の導入マニュアル|給与計算のルールと社会保険、対象となる期間を解説時短勤務制度の導入マニュアル|給与計算のルールと社会保険、対象となる期間を解説

育児・介護休業法の改正により、時短勤務制度のルールは複雑化しています。時短勤務制度の利用を検討している従業員からの質問に悩んでいる人事担当者も多いでしょう。

本記事では、人事担当者が迷いやすい時短勤務の利用可能期間や給与計算の方法、社会保険の取扱いを網羅的に解説します。現場で役立つマニュアルとしてぜひご活用ください。

 

この記事で分かること

  • 時短勤務制度に関して、企業が対応すべき義務の範囲
  • 時短勤務制度を従業員が利用できる期間
  • 給与計算の基本ルールと社会保険の手続きで注意すべきこと

目次

  1. 短時間勤務制度(時短勤務制度)とは
  2. 時短勤務制度に関する企業の義務の範囲とは
    • 3歳未満の子を養育する労働者に対する短時間勤務の義務
    • 3歳以降の短時間勤務制度は企業判断
  3. 時短勤務制度の対象となる期間
    • 育児を理由とする時短勤務の適用期間と考え方
    • 申し出のタイミングや期間変更への対応
  4. 時短勤務における給与計算の基本ルール
    • 労働時間短縮に伴う賃金の考え方
    • 月給制・時給制それぞれの計算方法
  5. 時短勤務と社会保険の手続き
    • 時短勤務中の社会保険加入と保険料の変動
    • 扶養に関する相談を受けた際の基本対応
  6. まとめ

1.短時間勤務制度(時短勤務制度)とは

時短勤務とは、育児を行う従業員が仕事と家庭を両立できるよう、1日の所定労働時間を短縮して働ける仕組みです。正式名称は「短時間勤務制度」といいます。

「育児・介護休業法」では、3歳に満たない子を養育する従業員を対象とした時短勤務制度の導入が、企業に義務付けられています。時短勤務は労働者に認められた法律上の権利のため、条件を満たす従業員から申し出があった場合は原則として利用を拒めません。就業規則に時短勤務の定めがない場合でも、労働者は時短勤務制度の利用を申し出できます。

なお、介護にも時短勤務制度が定められていますが、本記事では育児に関する時短勤務を解説します。

参考:短時間勤務等の措置|育児休業制度特設サイト(厚生労働省)

時短勤務制度の導入マニュアル|給与計算のルールと社会保険、対象となる期間を解説

2.時短勤務制度に関する企業の義務の範囲とは

育児・介護休業法には時短勤務制度に関する定めが複数あります。それぞれの制度の整理がつかず、義務と裁量の線引きに迷う人事担当者も多いでしょう。企業が対応すべき義務の範囲を解説します。

3歳未満の子を養育する労働者に対する短時間勤務の義務

3歳未満の子を養育する従業員が利用できる短時間勤務制度の導入は、企業の義務です。
1日の所定労働時間を原則6時間とする制度を設ける必要があります。

対象となる従業員の要件は以下の通りです。

  • 日々雇用される者でない
  • 1日の所定労働時間が6時間以下でない
  • 短時間勤務制度の適用期間に現に育児休業中でない

ただし、次のいずれかに該当する従業員は、労使協定がある場合に対象外として短時間勤務制度の利用を拒むことができます。

  • 雇用されてから1年未満
  • 週所定労働日数が2日以下
  • 業務の性質上、制度の利用が困難

利用を拒める従業員のうち「業務の性質上、制度の利用が困難」とされる方に対しては、在宅勤務やフレックスタイム制など、代替措置の実施が必要です。

3歳以降の短時間勤務制度は企業判断

3歳以降の短時間勤務制度は、法律上の義務ではありません。3歳から小学校就学前の子を養育する従業員が利用できる短時間勤務は、企業が任意で定めている制度になります。

ただし、2025年10月から「柔軟な働き方を実現するための措置」が義務づけられました。3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対し、企業は次の5つから少なくとも2つの措置を制度化しなければなりません。

  1. 始業時刻などの変更(フレックスタイム制など)
  2. 在宅勤務など(月10日以上)
  3. 保育施設の設置運営など
  4. 新たな休暇の付与(年10日以上)
  5. 短時間勤務制度

従業員は制度化された措置から1つを選んで利用できます。従業員が短時間勤務制度を選んだ場合、企業は原則として利用を拒否できません。

参考:育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(厚生労働省)

3. 時短勤務制度の対象となる期間

時短勤務制度を利用できる期間を従業員から質問されるケースも多いでしょう。取得可能な期間の考え方や、申し出のタイミングを解説します。

育児を理由とする時短勤務の適用期間と考え方

育児・介護休業法において、時短勤務制度を利用できるのは「3歳に満たない子」を養育する従業員です。「3歳に満たない子」とは、3歳の誕生日前日までの子を指します。例えば4月1日が誕生日の場合、3月31日が時短勤務制度の最終日です。4月1日ではないため注意しましょう。

3歳以降も時短勤務を認めるかは企業の任意です。しかし、就業規則で「小学校入学前まで短時間勤務制度を利用できる」などと定めている場合、3歳以降も利用できる時短勤務制度を設けていることになるため、定められた期間まで取得を認める必要があります。

申し出のタイミングや期間変更への対応

申し出の期限に法律上の決まりはなく、企業が任意で設定できます。就業規則に「開始予定日の1か月前までに申し出なければならない」などと定めておきましょう。

1度の申し出で申請できる期間にも、法律上の制限はありません。1回の申し出による取得期間は1年以内とし、時短勤務を継続したい場合は再度の申し出を求める、などの運用が考えられます。

利用可能期間の範囲内であれば、時短勤務の期間を変更する申し出も認める必要があります。従業員に、変更後の期間を記載した申出書を提出してもらいましょう。

なお、企業側から時短勤務制度の利用を強要したり、期間を短縮したりすることはできません。

参考:育児短時間勤務申出書(大分労働局)

4. 時短勤務における給与計算の基本ルール

時短勤務中の給与計算方法は、制度導入時に必ず確認しなければなりません。導入後にトラブルを招かないよう、考え方を整理しましょう。

労働時間短縮に伴う賃金の考え方

大原則として押さえておきたいのが「ノーワーク・ノーペイの原則」です。従業員が労働していない時間分の給料を支払う必要はないため、労働時間に応じて賃金を減額すること自体は法的に問題ありません。

賃金の減額は、労働時間の短縮割合に応じる方法が一般的です。例えば、1日8時間労働から6時間労働(6/8 = 75%勤務)になる場合、基本給も時短勤務前の75%を支給します。短縮された時間分を超えて減額した場合「不利益取扱い」とみなされるため注意しましょう。

減額の対象とするか迷いやすいのが、基本給以外の諸手当です。各種手当を対象とするかは、それぞれの手当の性質を考慮した上で、企業ごとに定めます。一般的に、労働日数・時間や基本給に応じて支給される手当は減額対象とするケースが多い一方、住宅手当や役職手当などの属人型の手当はそのまま支給される傾向にあります。対象とする手当は、時短勤務により減額となる旨をあらかじめ就業規則で定めておきましょう。

参考:労働基準法第24条(e-GOV 法令検索)

月給制・時給制それぞれの計算方法

時短勤務中の給与の計算方法は、給与形態によって異なります。

  • 月給制
    減額対象賃金 × (時短勤務の所定労働時間 ÷ 本来の所定労働時間) + 減額対象外の手当
    例:減額対象賃金20万円、時短勤務時の所定労働時間6時間、本来の所定労働時間8時間、減額対象外の手当2万円の場合
    200,000円 × 6 ÷ 8 + 20,000円 = 170,000円
  • 時給制
    時給単価 × 実労働時間
    例:時給単価1,500円、時短勤務時の実労働時間6時間の場合
    1,500円 × 6時間 = 9,000円

なお、時短勤務者が残業した場合、原則として1日8時間(法定労働時間)までは、割増されていない通常の賃金に応じた残業代を支払います。時間外手当の25%の割増は、8時間を超えた部分の労働に対して支払いが必要となります。

5. 時短勤務と社会保険の手続き

時短勤務になると、社会保険も手続きが必要な場合があります。「社会保険料が必ず下がる」「扶養に入れる」など、従業員が誤解しているケースも多いため、正しく案内しましょう。

時短勤務中の社会保険加入と保険料の変動

時短勤務中の従業員も、原則として社会保険には加入し続ける必要があります。週の所定労働時間と月の所定労働日数が、通常の従業員の4分の3以上であれば被保険者資格を満たすためです。通常8時間に対して時短勤務時間が6時間の場合、この条件を満たします。

時短勤務によりいずれかが4分の3未満となった場合も、厚生年金保険の被保険者が51人以上在籍する企業では、下記の条件を全て満たす従業員は加入対象となります。

  • 週の労働時間が20時間以上
  • 給与が月額8.8万円以上
  • 2ヶ月を超えて働く予定
  • 学生でない

また、社会保険料は、時短勤務開始後すぐに下がるわけではありません。通常社会保険料は、毎年4月~6月の標準報酬月額を基準に算出されます。フルタイムで勤務していた時の標準報酬月額のまま、社会保険料が据え置かれます。

ただし、育児休業復帰後すぐに時短勤務を始める場合「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出し、会社経由で手続きを行うことで、特例措置を受けることができます。育児休業終了後の3ヵ月間の給与の平均額が標準報酬月額となり、時短勤務開始4ヶ月目から社会保険料が改定されます。

なお、育児休業を経ずに時短勤務となった場合でも、要件を満たせば随時改定の対象となり、社会保険料が引き下げられる可能性があります。

扶養に関する相談を受けた際の基本対応

前提として、扶養には「税法上」と「社会保険上」の2種類があります。時短勤務で話題になりやすいのは社会保険上の扶養についてです。社会保険上の被扶養者になることで、自分で保険料を支払うことなく保険に加入することができます。

社会保険上の扶養の収入要件は年収130万円未満ですが、130万円を下回れば必ず扶養に入れるわけではありません。前述の社会保険の加入要件を満たす場合は、被保険者資格が優先されます。

労働時間を極端に減らすなどして、被保険者要件を下回った場合でなければ、家族の扶養には入れません。時短勤務を始めても被保険者資格が継続するケースが多いため注意しましょう。

6.まとめ

育児と仕事の両立支援は、法定義務の遵守だけでなく、優秀な人材の定着にも欠かせません。時短勤務の適用範囲や給与・社会保険のルールを整備し、適切に運用しましょう。

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