派遣先管理台帳とは?今さら聞けない記載事項や保管・通知方法を解説

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派遣先管理台帳とは?今さら聞けない記載事項や保管・通知方法を解説派遣先管理台帳とは?今さら聞けない記載事項や保管・通知方法を解説

派遣社員の就業に際し、派遣先に課せられる義務の一つに、派遣先管理台帳の作成、記載、保存及び記載事項の通知(法第42条)があります。

派遣先管理台帳は派遣労働者ごとに決められた事項を記載し、1か月ごとに1回以上派遣元事業主に通知をしたり、一定期間保管をしたりするなど、いくつかの決まり事があります。この記事では、派遣先管理台帳の適切な管理をおこなう上で理解しておきたいポイントについて解説します。

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目次

  1. 派遣先管理台帳とは
  2. 派遣先管理台帳の記載事項
  3. 派遣先管理台帳の通知方法とタイミング
  4. 派遣先管理台帳の保管期間と方法
  5. まとめ

1.派遣先管理台帳とは

派遣先管理台帳とは、派遣元情報、派遣社員の契約内容、就労の実態などの情報を記載し管理する台帳(データ管理可)のことで、事業所ごとに作成し適切に保管します。記載する情報は、労働者派遣法により必須項目が定められていて、台帳は各法定記載事項が確定するたび更新する必要があります。

なお、2020年に労働者派遣法は改正され、派遣先管理台帳に記載する項目が追加されていますので、旧式の台帳で運用している事業者は、一度項目を見直す必要があります。

派遣先管理台帳とは

派遣先に派遣先管理台帳の作成、記載、保管が義務づけられている主な理由は、派遣社員の適切な雇用管理のためです。派遣先は派遣元に対して1か月ごとに1回以上、一部の項目の通知が義務づけられています。

もし、派遣社員から苦情の申し出を受けた場合は、派遣元に通知し、苦情の申し出を受けた年月日、苦情の内容、苦情の処理状況等を都度記載し、適切な対応をしなければなりません。

例外のケースとして、派遣先事業所の労働者の数が派遣社員を含め5人以下の場合は、派遣先管理台帳を作成する必要がありません。

2.派遣先管理台帳の記載事項

事業所が複数ある企業は、事業所ごとに派遣先管理台帳を作成します。台帳は以下の内容を記載し、派遣社員ごとに記載をします。2020年4月に改正労働者派遣法が施行され、派遣先管理台帳に以下の内容が追加されました。

  • 協定対象派遣労働者であるか否かの別
  • 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度

なお、派遣元事業主に一部の項目を1か月ごとに1回以上通知する必要があることを先に述べましたが、その項目については「派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度」が追加された5項目となります(表の派遣会社への通知を「要」としています)。

記載事項 詳細 派遣会社への通知
1 派遣労働者の氏名 派遣労働者ごとに作成する
2 派遣元事業主の名称 氏名または名称を記入する  
3 派遣元事業主の事業所の名称 法人名に加え、派遣元事業所が支店であれば支店名を記載する  
4 派遣元事業主の事業所の所在地と電話番号 郵便番号、住所、電話番号を記載する  
5 就業した事業所の名称と就業場所、その他派遣就業をした場所 派遣先企業の法人名、事業所名、配属部署等を記載する
6 無期雇用か有期雇用かの別 「無期雇用」もしくは「有期雇用」と記載  
7 派遣就業した日 就業日を記載する
8 始業・終業時刻、休憩時間(実績) 実績をもとに、始業時刻、終業時刻、休憩時間を記載する
(タイムカード等で管理している場合は「別紙○○○を参照」等記載)
9 業務の種類と内容、責任の程度 従事した実績をもとに可能な限り詳細に記載する。
・責任の程度(権限の範囲)、役職(ある場合は役職名、ない場合はなしと記載)、時間外労働の有無など
・第4条第1項に該当する業務(日雇派遣が可能な業務)派遣法施行令第4条第1項の場合は、当該する号番号を記載する
(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令第4条第1項第○号○○○○○に該当。)
10 派遣受入期間制限を受けない業務 60歳以上の派遣労働者の場合、「60歳以上」と記載する

産前産後休業、育児休業、介護休業を取得する労働者の代替業務の場合、休業者の氏名、業務内容、休業開始および終了予定日を記載する

プロジェクト業務の場合、日数限定業務に該当する旨と、1ヶ月の労働日数と通常の1ヶ月間の所定労働日数を記載する
11 苦情処理状況 申出を受けた日、苦情内容、処理状況(てん末)を記載 都度
12 紹介予定派遣である旨
(紹介予定派遣の場合のみ)
紹介予定派遣の場合のみ記載する
・紹介予定派遣である旨
・事前面接や履歴書送付等の派遣労働者の特定行為をおこなった場合は当該行為の内容、及び複数人から派遣労働者の特定行為をおこなった場合には当該特定の基準
・採否結果
・職業紹介を受けることを希望しなかった場合、または職業紹介を受けた者を雇用しなかった場合にはその理由等
 
13 派遣元責任者 所属部署、役職、氏名、電話番号を記載する  
14 派遣先責任者 所属部署、役職、氏名、電話番号を記載する  
15 雇用保険・社会保険の被保険者資格取得届の提出の有無 健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険それぞれの有無を記載 未加入の場合は、その理由や状況を具体的に記載し、有に変更となった場合はその旨と日付を記載  
16 協定対象派遣労働者かの別 協定対象派遣労働者か否か別のいずれかを記載する  
17 教育訓練を行った日時及び内容 教育訓練(OJTおよびOff-JT)の実施日、時間、内容を記載  

管理台帳の作成

派遣先管理台帳は、書式は定められていないため、自社で作成したフォーマットを利用してもよいですし、基幹システムを利用して管理する方法もあります。ただし、法改正による項目の変更もあるので、記載事項の抜け漏れ防止のためにも、最低でも年に一度は確認をすることをお勧めします。

厚生労働省や各都道府県の労働局のホームページで公開している最新情報で確認ができるほか、フォーマットをダウンロードして利用することができます。

3.派遣先管理台帳の通知方法とタイミング

派遣社員の受け入れ期間中の派遣先管理台帳の通知(交付)方法は主に三つの方法があります。

  • 書面を手渡し
  • FAXでの送付
  • メールに添付し送信

そして、以下の項目を定期的に派遣会社に通知する義務があります。 通知のタイミングについては毎月1回以上とし事前に期日を定めますが、派遣会社から請求された場合は、即時通知に応じる必要があります。

  1. 派遣労働者の氏名
  2. 従事した事業所の名称及び所在地その他派遣就業をした場所並びに組織単位
  3. 派遣就業した日
  4. 派遣就業した日ごとの始業及び終業した時刻並びに休憩した時間
    (就業状況は、タイムカードや報告書(週報や月報)等で別途管理している場合は、合わせて通知する)
  5. 従事した業務の種類・内容と、業務に伴う責任の程度

上記以外に、派遣先企業が派遣社員からの苦情を受けた際は、その都度派遣元会社に通知し、派遣先・派遣元の双方が連携をとり、適切かつ迅速な処理を図ります。

4.派遣先管理台帳の保管期間と方法

派遣先管理台帳は、派遣契約終了後も派遣先企業で一定期間の保管が義務づけられ、その期間は、該当する派遣社員の「派遣契約終了日から数えて3年間」となっています。

ここで気をつけるべき点は、派遣社員が派遣契約を更新したり、直接雇用に切り替えたりするケースです。その場合は、繰り返し更新した場合でも、最後(直近)に派遣契約をした終了日を起算日として数えます(法第42条第2項、法施行規則第37条)。

派遣先管理台帳の保管方法は、紙またはデータのどちらの方法でも構いませんが、就業実態をタイムカード、手書きのシートなどで別途管理している場合は、その記録と共に年度ごとに保管する必要があります。

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5.まとめ

派遣先管理台帳は、事業所が派遣社員ごとに作成し、各記載事項の内容が確定するごとに更新する必要があります。就業実態を的確に把握するためにも、記載漏れや更新忘れのないように、適切な保存と管理も求められています。

また、派遣先管理台帳の一部の項目については、派遣会社への通知は定期的に一月に一度以上おこなう義務があります。2020年4月に改正労働者派遣法が施行され、報告する項目も追加されていますので、もし古い台帳のフォーマットを使い回している場合は、項目を確認し更新する必要があります。

台帳の形式は決まりがないため、台帳を作成される際に、書式に迷う場合は、各都道府県の労働局が公開している派遣先管理台帳のフォーマットをダウンロードして使用することができますので参考にするとよいでしょう。

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