派遣社員は産休を取得可能?条件や契約、方法について解説

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派遣社員は産休を取得可能?条件や契約、方法について解説派遣社員は産休を取得可能?条件や契約、方法について解説

就業している派遣社員が産休を取得することはできるのでしょうか。取得のための条件はあるのでしょうか。本人が不安になったり、派遣先企業の担当者がどのように対応すべきか悩むこともあるでしょう。

この記事では、産休の取得にかかる法律の詳細や、派遣社員が産休を取得する際の方法、また派遣先企業が必要になる対応について解説します。

目次

  1. 派遣社員も産休の取得が可能
  2. 派遣社員が産休・育休を取得する条件
    • 産休・産前休業が開始される予定日が契約期間中である
    • 育休:子が1歳6カ月になるまでに契約が満了することが決まっていない
  3. 派遣社員が産休を取得する方法
  4. 派遣社員が産休を取得する場合の派遣先企業の対応
  5. まとめ

1.派遣社員も産休の取得が可能

産休とは、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)と産後8週間をあわせた「産前・産後休業」の略称で、労働基準法において以下のように定められています。※多胎妊娠とは2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠していることをいいます。

派遣社員も産休の取得が可能
■ 第六十五条

使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。
ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

引用元:e-Gov法令検索 労働基準法

出産前の6週間の期間は、休業を希望した労働者を働かせることはできません。
また産後6週間については、労働者の希望の有無に関わらず働かせてはならないと定められています。

この法律は雇用形態に関わらずすべての労働者が対象となるため、派遣社員も産休の取得が可能です(ただし契約期間にかかる条件がある)。
また、同法律により、労働者が産休を取得している期間とその後30日間における解雇は禁止されています。

■ 第十九条

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。
ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

引用元:e-Gov法令検索 労働基準法

派遣社員も産休とあわせて育休取得を希望する場合もあります。 派遣社員を含む有期雇用労働者の育休は、育児・介護休業法によって定められており条件を満たせば取得できます。

関連記事:【2022年4月改正】育児・介護休業法の改正ポイント~派遣先企業にも関わる内容を解説

2.派遣社員が産休・育休を取得する条件

では取得条件を見ていきます。派遣社員が産休と育休を取得するために共通する重要なポイントとなるのは「契約期間」です。
ややハードルが高かった育休は2022年4月の改正により取得条件が緩和されました。

産休・産前休業が開始される予定日が契約期間中である

派遣社員が産前休業を希望する場合、産前休業の開始予定日が派遣契約期間中であることが条件となります。
妊娠の報告後、産前休暇の開始予定日より前に派遣契約が満了する場合は、条件を満たすことができません。

女性労働者の妊娠出産や産前休業の請求などを理由に契約を更新しないことは、男女雇用機会均等法第9条により禁止されていますが、別の事由により産前休業開始前に契約が満了となる可能性もあるため注意が必要です。

産前休業開始の予定日が派遣契約期間中であれば、労働者が希望している産前の6週間は就業させてはいけません。
そして、希望の有無にかかわらず産後8週間は就業させてはいけない義務が使用者に発生するため、派遣社員も産休取得ができます。

育休:子が1歳6カ月になるまでに契約が満了することが決まっていない

派遣社員を含む有期雇用労働者の育休については、育児・介護休業法によって定められており令和4年4月1日より取得条件が緩和されました。

令和4年3月31日まで 令和4年4月1日から
(1)同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること (1)を撤廃
※ただし労使協定の締結により、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は除外可
(2)子が1歳6カ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと (2)のみ継続

(2)については、労働者が育児休業の希望を伝えた時点で、労働契約が更新されないことが確実か否かにより判断されます。
派遣元の会社が「更新しない」という意向を労働者にはっきり伝えていない限り、原則「更新しない」に該当しません。

書面や口頭により契約更新の回数について上限が明らかになっており、子が1歳6カ月に達する日より前に伝達されている上限期間を迎える場合や、あらかじめ契約を更新しない旨が明らかな場合は、育休取得の条件を満たさないとみなされます。

(1)について、同一の事業主とは派遣元の会社です。
産休の期間は、継続雇用期間に含まれひとつの派遣先企業との契約が一旦終了していたとしても、前の契約終了時に次の契約をすでに結んでいた場合は、実質的には継続期間と判断されます。

※令和4年4月1日からは撤廃となっておりますが、派遣元の会社が、派遣社員を含む労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、育休の取得に関する労使協定を結んでいる場合、除かれている場合もあるため確認が必要です。

3.派遣社員が産休を取得する方法

派遣社員の産前休業取得希望の場合には、派遣元の会社に申請が必要です。
申請の期限に関して法律による定めはありませんが、派遣元の会社で期限を定めている場合もあります。

派遣先よりも先に派遣元に報告します。派遣先企業への報告は基本的に派遣元の会社からおこなわれます。
産休の申請に際して必要な手続きは会社によって異なるため、派遣元の担当者に確認します。

基本的には妊娠の報告をする際か、産前休業の開始日の1カ月前までを目安に、産前休業を取得したい旨を伝えるとよいでしょう。
続けて育休を取得したい場合は、産休の申請を行う際に一緒に育休の申請も行いましょう。

ただし、産休・育休後の復帰が同じ派遣先企業でできるとは限らないため、現時点での希望や復帰後のビジョンについては派遣元の担当者とよく相談しておきましょう。

関連記事:子育て時短勤務補助金はいつから?両立支援の詳細を紹介

4.派遣社員が産休を取得する場合の派遣先企業の対応

派遣社員の産休・育休の取得を対応するのは派遣元の会社ですが、派遣先企業においても、男女雇用機会均等法と育児・介護休業法における以下の点が適用されます。

  1. 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止
  2. 育児休業等の申出・取得等を理由とする不利益取扱いの禁止
  3. セクシュアルハラスメント対策の措置及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策の措置
  4. 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置

もっとも注意すべき「不利益取扱い」には、妊娠した派遣社員が契約に定められた業務をおこなえるにも関わらず派遣先企業が派遣社員の交替を求めることや派遣を拒むこと、また妊娠出産や産休・育休の請求などを理由として契約の更新をしないことも含まれます。

派遣社員や派遣元の会社から妊娠や産休・育休取得の報告があった場合は、上記に注意しながら、今後の対応を派遣元の会社と相談する必要があります。
派遣先としては、あくまで業務の円滑な推進を目的として、派遣契約に基づく判断をしましょう。

5.まとめ

派遣社員は産休の取得が可能です。ただし条件があり、産前休業の開始予定日が派遣契約の期間内であることが必要です。
同様に育休の取得も可能で、それには契約の更新や継続が前提になっています。
妊娠出産や産休・育休の請求などが理由の不利益な扱いは、派遣元だけでなく派遣先企業に対しても禁止されています。
企業は派遣社員が安心して出産・育児をおこなえるよう、十分に注意しながら配慮する必要があります。

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