【2025年4月】育児時短就業給付金とは?企業ができる両立支援の詳細も紹介

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【2025年4月】育児時短就業給付金とは?企業ができる両立支援の詳細も紹介【2025年4月】育児時短就業給付金とは?企業ができる両立支援の詳細も紹介

2025年4月から新たに始まる「育児時短就業給付金」。子育て中の従業員の時短勤務による収入減少を補填し、仕事との両立を支援する制度です。有期雇用の派遣社員も対象となるため、企業の人事担当者として適切な対応が求められます。

しかし、「具体的な支給要件は?」「対象になる従業員は?」「支給金額は?」と、疑問を感じる人事担当者も多いのではないですか。

本記事では、育児時短就業給付金の詳細や、企業が準備すべき対応を解説します。新制度を活用した人材の定着と、職場環境の改善につなげるポイントも紹介するのでぜひ読んでみてください。

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目次

  1. 育児時短就業給付金とは
  2. 育児時短就業給付の内容
    • 支給条件
    • 育児時短就業給付金の対象とならないケース
    • 支給金額
    • 支給対象期間
  3. 育児時短就業給付のメリット・デメリット
    • 育児時短就業給付のメリット
    • 育児時短就業給付のデメリット
  4. 短時間勤務制度とは
    • 短時間勤務制度の利用状況
    • 短時間勤務制度の課題
  5. 企業ができる育児と仕事との両立支援
    • テレワーク
    • フレックスタイム制度
    • 時差出勤制度
    • 時間単位の年次有給休暇制度
    • 子の看護等休暇
  6. まとめ

1.育児時短就業給付金とは

育児時短就業給付金は、育児と仕事の両立を支援するために創設された制度です。2025年4月1日以降、2歳未満の子どもを養育するために所定労働時間を短縮し、賃金が低下するなど一定の要件を満たした場合に支給されます。

制度開始前から時短勤務をしている場合、2025年4月1日を開始日とみなし、受給資格や支給要件を満たせば対象となります。ただし、支給対象月の賃金が、時短勤務開始時の賃金と同額またはそれ以上の場合は、支給されません。

育児時短就業給付金とは

2.育児時短就業給付の内容

ここでは、育児時短就業給付金を支給する条件や金額、対象期間などについて解説します。

支給条件

育児時短就業給付金は、2歳未満の子どもを養育する時短勤務の従業員のうち、以下の2つの要件を満たす方が対象です。

  • 2歳未満の子を養育するために、1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業する被保険者であること
    ※「被保険者」とは、雇用保険の一般被保険者と高年齢被保険者をいいます。
  • 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児時短就業を開始したこと、または、育児時短就業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある)完全月が12か月あること

引用:育児時短就業給付の内容と 支給申請手続

また、各月の支給は、以下の4つの条件をすべて満たす月に支給されます。

  • 初日から末日まで続けて、被保険者である月
  • 1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
  • 初日から末日まで続けて、育児休業給付又は介護休業給付を受給していない月
  • 高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月

引用:育児時短就業給付の内容と 支給申請手続

支給対象となる従業員について、これらの条件を確認のうえ、申請する必要があります。

育児時短就業給付金の対象とならないケース

被保険者資格は離職日の翌日に喪失するため月の途中で離職すると、「月の初日から末日まで続けて被保険者である」という要件を満たさず、その月の給付金は受給できません。ただし、前月までは受給対象となります。

育児時短就業給付金は、離職のタイミングによって受給できるかどうかが変わります。育児時短就業給付金を最大限活用するためには、月末日に離職するなど、受給要件を満たすタイミングを考慮する必要があります。

また、週の所定労働時間が20時間未満の場合も、被保険者要件を満たさないため支給対象外です。

支給金額

育児時短就業給付金の支給額は、原則として「育児時短就業中の各月に支払われた賃金額×10%」で計算されます。ただし、この給付金と各月の賃金額の合計が育児時短就業開始時の賃金額を超えないよう、支給率が調整されます。

育児時短就業給付金は、育児のための時短勤務による賃金減少を一部補填するものですが、時短前の賃金水準を超えないよう設計されているのが特徴です。

詳細な支給金額の算定方法については下記リーフレットをご参照ください。

参考:育児時短就業給付の内容と 支給申請手続

支給対象期間

育児時短就業給付金は、原則として育児時短就業開始月から終了月までの支給対象月ごとに支給されます。支給対象月は、以下のいずれかの条件を満たす月までです。

  • 育児時短就業に係る子が2歳に達する日の前日
    ※「子が2歳に達する日」とは、2歳の誕生日の前日をいいます。
  • 産前産後休業、育児休業または介護休業を開始した日の前日
  • 育児時短就業に係る子とは別の子を養育するために育児時短就業を開始した日の前月末日
  • 子の死亡その他の事由により、子を養育しないこととなった日

引用:育児時短就業給付の内容と 支給申請手続

基本的には子どもが2歳になるまで支給されますが、育児休業や介護休業の開始などにより、途中で支給が終了する場合があります。

なお、育児時短就業給付金の支給には、企業が育児時短就業開始時賃金の届出、受給資格確認および支給申請をおこなう必要があります。

従業員(被保険者)が希望する場合、みずから受給資格確認、支給申請をおこなうこともできます。ただし、育児時短就業開始時賃金の届出は企業がおこなう必要があります。

3. 育児時短就業給付のメリット・デメリット

育児時短就業給付の対象は2歳未満の子どもを育てながら時短勤務で働く従業員に限られます。この制度には多くのメリットがある反面、一部の従業員に対する支援の提供がデメリットとなることも考えられます。

ここでは、育児時短就業給付のメリット・デメリットをご紹介します。

育児時短就業給付のメリット

育児時短就業給付金の最大のメリットは、時短勤務を選択しやすくすることです。給付金によって収入減少が補填されるため、子育て中の従業員が時短勤務を利用しやすくなります。その結果、柔軟に働き方を選びやすくなることで、育児負担の軽減に繋がるでしょう。

企業にとっても、従業員の育児と仕事の両立を支援することで、子育てによる離職を減らし、優秀な人材の定着を促せます。また、従業員のキャリアを継続できる環境を整えることは、長期的な人材育成や組織力の向上にもつながります。

育児時短就業給付のデメリット

育児時短就業給付のデメリットとして、子育て以外の理由で時短勤務を利用する従業員との公平性の問題が指摘されています。時短勤務を選ぶ理由は育児だけでなく、家族の介護や自身の健康問題などさまざまなため、公平性を確保するための慎重な検討が求められます。

また、給付金の支給により時短勤務が長期化することで、本人のキャリア形成に影響を及ぼす可能性もあります。

4. 短時間勤務制度とは

育児・介護休業法では、企業に育児を理由とする短時間勤務(時短勤務)制度が義務付けられています。

短時間勤務制度とは、3歳未満の子を養育する従業員からの申し出に基づき、企業が1週間当たりの所定労働時間を短縮する措置(原則、1日の所定労働時間は6時間)のことです。正社員だけでなく派遣社員を含む有期契約の従業員も対象となり、企業は対象者からの申し出を原則として拒否できません。ただし、雇用期間1年未満の従業員、週の所定労働日数が2日以下の従業員、業務の性質上所定労働時間の短縮が困難な場合は、労使協定の締結により適用除外とすることが可能です。

また、勤務しない時間数を超えて賃金額を減らすなど、時短勤務を利用する従業員の不利益となる行為は禁止されています。

ここでは、短時間勤務制度の利用状況や課題について解説します。

参考:厚生労働省「育児休業、短時間勤務制度」

短時間勤務制度の利用状況

厚生労働省の令和4年度調査によると、育児を理由とした短時間勤務制度の利用経験は、女性・正社員で51.2%、女性・非正社員で24.3%に上る一方、男性・正社員ではわずか7.6%にとどまっています。

特に注目すべきは、男性の41.2%が「利用希望もない」と回答している点です。この数字は、育児における時短勤務の活用に大きな男女差があることを示しており、男性の育児参加を促進するための課題が浮き彫りになっています。

短時間勤務制度は整備されているものの、男性の利用率向上にはさらなる取り組みが求められます。

育児時短就業給付金とは

出典:仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査について|厚生労働省

短時間勤務制度の課題

短時間勤務制度の最大の課題は収入の減少です。一般的に、8時間勤務を6時間勤務に短縮すると、労働時間は通常の75%となります。基本給も同様に75%となり、結果として給与は25%減少します。例えば、通常8時間勤務で月給30万円の労働者が時短勤務により6時間勤務となった場合、給与は75%に相当する22.5万円に減少します。

2025年度から施行される新制度では、時短勤務を選択した労働者に対して「育児時短就業給付」が創設されるため、賃金の10%が補填されます。この制度により、時短勤務による収入減少を対象期間は緩和することが期待されますが、要件から外れると実際の給与は勤務時間に比例して減少するため、労働者の収入の変動には注意が必要です。

5. 企業ができる育児と仕事との両立支援

従業員が育児と仕事を無理なく両立し、自社で長く活躍してもらえる環境をつくるために、ここでは、企業が導入できる両立支援を紹介します。

テレワーク

テレワークとは、ICTを活用し、時間や場所にとらわれずに働くスタイルのことです。働く場所によって、「在宅勤務」「サテライトオフィス勤務」「モバイル勤務」の3つの形態に分けられます。

在宅勤務は自宅を就業場所とする働き方であり、サテライトオフィス勤務は本拠地とは異なるオフィスや専用施設を活用する働き方を指します。また、モバイル勤務は移動中の車内や顧客先、ホテルなどを就業場所とする働き方です。

テレワークは、オフィスへの出社を前提としない柔軟な働き方を可能にし、育児や介護と仕事の両立を支援する制度のひとつとしても注目されています。

フレックスタイム制度

フレックスタイム制とは、従業員が自身の生活や業務内容に応じて、始業・終業時刻を柔軟に決められる制度です。具体的には、一定期間内の総労働時間をあらかじめ決め、その範囲内で従業員が日々の労働時間を調整できます。

子育てをしながら働く従業員にとっては、出退勤時刻を調整することで、子どもの送迎や家事の時間を確保しやすくなり、仕事との両立がしやすくなります。

また、フレックスタイム制では、1日単位で法定労働時間を超えても、すぐに時間外労働とはなりません。清算期間内の法定労働時間の総枠を超えた場合に、その超過分が時間外労働とみなされます。

このように、時間外労働の扱いが通常の労働時間管理とは異なるため、導入時には注意が必要です。

時差出勤制度

時差出勤制度とは、従業員の事情に応じて始業・終業時刻を変更できる制度です。多くの場合、1日の所定労働時間はそのままで、出退勤時刻のみを調整します。例えば、通常の勤務時間が8時から17時の企業で1時間繰り下げる場合、勤務時間は9時から18時となります。

フレックスタイム制とは異なり、時差出勤制度では企業が設定した範囲内で始業・終業時刻を調整するため、労働者が自由に労働時間を決めることはできません。

時間単位の年次有給休暇制度

時間単位の年次有給休暇制度とは、通常1日単位で取得する有給休暇を、1時間単位で取得できる制度です。

有給休暇は原則1日単位ですが、企業が「規則への記載」と「労使協定の締結」の2つの条件を満たす場合、従業員は年5日分の有給休暇を時間単位で取得できます。

この制度を導入することで、有給消化率の向上につながるだけでなく、柔軟な働き方が可能となり、従業員のワークライフバランスの改善にも最適です。

子の看護等休暇

子の看護等休暇とは、小学校3年生までの子どもが病気や怪我をした際に、有給休暇とは別に取得できる休暇です。労働者1人につき年間5日、子どもが2人以上の場合は年間10日まで取得が可能とされています。。

2025年4月の法改正により、取得事由が拡大し、感染症に伴う学級閉鎖等や入学式(入園式)・卒園式でも取得できるようになりました。。

なお、病気や怪我の程度による制限はなく、子の配慮が必要と判断される場合、労働者は休暇を取得することができます。看護休暇取得中の給与については、法律上規定が設けられていません。そのため企業によって、無給または有給の扱いは異なります。

6. まとめ

2025年4月から始まる育児時短就業給付金は、2歳未満の子どもを養育する、有期雇用の派遣社員を含む時短勤務者を対象にした新たな制度です。育児時短就業給付金は、時短勤務による収入減少を支援し、子育て世代の経済的負担を軽減するもので、政府の少子化対策の一環として位置づけられています。

また企業には、新制度への対応に加えて、テレワークやフレックスタイム制、時間単位の年次有給休暇など、多様な両立支援策の導入検討が推奨されます。これらの制度は、子育て中の従業員に限らず、全ての従業員が柔軟に働ける職場環境づくりにつながるでしょう。

自社に適した両立支援策を構築するためには、従業員のニーズを丁寧に把握しながら制度設計を進めることが重要です。育児時短就業給付金の活用と共に、従業員が安心して働き続けられる職場環境の整備が求められます。

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