エビングハウスの忘却曲線とは?復習の最適な時期とビジネスでの活用法を紹介

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時間経過で記憶が減少するメカニズムをあらわした「エビングハウスの忘却曲線」。人の記憶力には限界があり、一度記憶した内容も時間が経つと忘れてしまいます。エビングハウスの忘却曲線は「忘れやすさ」に着目しつつ、このメカニズムを理解し適切なタイミングで復習すれば効率よく学習できることも示しています。

この記事では「エビングハウスの忘却曲線」を取り上げ、復習の最適な時期や忘却を防ぐテクニックとビジネスでの活用方法についてわかりやすく解説します。

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目次

  1. エビングハウスの忘却曲線とは
  2. エビングハウスの忘却曲線の「節約率」
  3. 復習の最適な時期
  4. 忘却を防ぐための復習テクニック
    • すぐに復習する
    • アウトプットを繰り返す
    • 興味・関心を持つ
    • 苦手な分野から優先的に復習する
    • ストーリー化する
  5. エビングハウスの忘却曲線をビジネスで活用する方法
    • 「忘れる」ことを前提に研修プログラムを設計する
    • 忘却曲線を活用する範囲を見極める
  6. 派遣社員の教育・研修時に意識すべきポイント
    • 事前アンケートを実施する
    • インタラクティブな講義形式を取り入れる
    • アウトプットの機会を設ける
    • 日報を書いて毎日の業務を振り返る
    • フォローアップ研修の実施
  7. まとめ

1.エビングハウスの忘却曲線とは

エビングハウスの忘却曲線とは、学習後の時間経過に伴う記憶の変化を表した曲線をいいます。人間が「忘れる」ことに着目したメカニズムで、ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスが提唱しました。

人は一度学習した内容を覚えておくことができず、時間の経過とともに記憶が薄れていきます。一方で、時間経過によって忘れてしまっても、復習を繰り返すことで効率的に記憶できるといいます。エビングハウスの忘却曲線は、一度記憶した内容を再び覚えなおすときに、記憶の時間を「節約」できることを示しています。

エビングハウスの忘却曲線とは?復習の最適な時期とビジネスでの活用法を紹介

2.エビングハウスの忘却曲線の「節約率」

エビングハウスの忘却曲線が示す「節約率」は、一度学習した知識を復習して覚えなおす際に、どのくらいの時間を節約できるかをあらわしています。一度学習して覚えた内容であれば、次に覚えるときは最初よりも時間を短縮(=節約)して記憶できるということです。

エビングハウスの実験によって示された学習後の時間と節約率の関係を下表にまとめました。

学習後の時間 節約率
20分 58%
60分 44%
90分 35%
1日 34%
6日 25%
31日 21%

この実験によると、人は学習して覚えた内容を時間の経過とともに忘れていきますが、次に覚えなおすときは最初にかかった時間よりも短い時間で記憶できるといいます。例えば最初の記憶に100秒かかった場合、20分後に覚えなおすと42秒(節約率58%)、1時間後に覚えなおすと56秒(節約率44%)で記憶できることになります。時間が経つにつれて、再度の記憶に時間がかかることもポイントです。

3. 復習の最適な時期

カナダのウォータールー大学では、1時間の講義で取り入れた情報をどれだけ記憶できているか確認する実験をおこないました。講義開始時の何も知らない状態を0%、講義終了時の情報を取り入れた状態を100%とします。

Curve of Forgetting

出典:Curve of Forgetting

この実験でわかったことは次のとおりです。

  • 講義内容を復習しない場合、1か月後にはほとんど忘れてしまう
  • 講義から24時間以内に復習した場合、10分の復習で記憶が100%に戻る
  • 講義から1週間後に2回目の復習をした場合、5分の復習で記憶を取り戻せる
  • 講義から1か月後に3回目の復習をした場合、2~4分の復習で記憶を取り戻せる

この結果をもとに復習の最適な時期を考えると、学習を終えてから24時間以内に1回目の復習、1週間後に2回目の復習、1か月後に3回目の復習をおこなうのがベストといえます。復習にかかる時間も1回目は10分、2回目は5分、3回目は2~4分と、復習を重ねるごとに「節約」できていることがわかります。

4. 忘却を防ぐための復習テクニック

エビングハウスの忘却曲線では、人間の「忘れやすさ」に焦点を当てつつ、復習によって再び記憶が定着することも示しています。ここでは、忘却を防いで効率よく復習するためのテクニックをご紹介します。

すぐに復習する

人は記憶した内容を覚えておくことができません。そのときは完璧に記憶できたと思っても、復習しなければ定着せず、時間経過とともに忘れていきます。忘却を防ぐためには時間を空けずにすぐに復習し、記憶の定着率を高めることが大切です。エビングハウスの忘却曲線によると、早めに復習するほど再度の記憶にかかる時間が「節約」され、短い時間で記憶できるようになります。

アウトプットを繰り返す

知識や情報を取り込むことをインプット、取り込んだ知識や情報を活用することをアウトプットといいます。テキストの文章を目で追うだけでなく、覚えた内容を口に出して誰かに説明してみるなど、アウトプットを繰り返すことで記憶が定着しやすくなります。まずはインプットで自分のなかに知識を取り込み、しっかり覚えられているか、理解できているかを確認するための手段としてアウトプットしていくとよいでしょう。

興味・関心を持つ

エビングハウスの忘却曲線は、意味を持たない単語の記憶に対する実験結果を示したものです。つまり、自分にとってまったく関心のない分野においては忘却曲線のような記憶の低下をたどりますが、自分が興味を持てる分野であれば異なる結果になると推測できます。学習する分野に興味・関心を持つことで、記憶の定着率や節約率が上がり、効率よく取り組むことができるようになるでしょう。

苦手な分野から優先的に復習する

復習をするときは苦手な分野から優先的に手を付けるのが効果的です。自分にとって覚えにくいものや苦手意識のあるものは、後に回せば回すほど習得に時間がかかってしまいます。反対に、覚えやすい得意分野は後に回しても問題ありません。このように優先順位を付けることで、限られた時間のなかで学習に取り組む社会人も、効率よく勉強を進めることができます。

ストーリー化する

記憶する内容をストーリーとしてまとめると、記憶の定着が促進されます。例えば、歴史の出来事を単なる年号として覚えるのではなく、その背景や人々の感情を交えた物語として学ぶことで、記憶に残りやすくなります。これにより、単純な暗記ではなく、深く理解することが可能です。記憶した内容を具体的なイメージとして捉えられるため、思い出すことも容易になります。ストーリー化は、記憶の定着を助け、学習効果を高める有効な方法です。

5. エビングハウスの忘却曲線をビジネスで活用する方法

忘却曲線をビジネスで活用するには以下の方法があります。

「忘れる」ことを前提に研修プログラムを設計する

エビングハウスの忘却曲線が示すように、一度記憶した内容も時間が経てば忘れていきます。暗記が得意な人もいれば苦手な人もいますが、忘れるスピードに個人差はほとんどありません。このメカニズムをビジネスで活用するには「忘れる」ことを前提に研修プログラムを設計する必要があります。例えば一度の研修で記憶を定着させることは難しいため、なるべく早めに次回の研修日程を組む、一定期間後にフォローアップ研修を実施するなど、定期的に復習の機会を設けることが大切です。

忘却曲線を活用する範囲を見極める

エビングハウスの忘却曲線は、専門性の高い内容や興味を持ちにくい内容、覚えるのが難しい内容に対して活用するのが効果的です。この実験で検証しているのは「意味を持たない単語の記憶」であるため、なるべくそれに近い内容(文字の羅列や専門用語など)を学習するときに取り入れるとよいでしょう。社員の興味や関心が高い分野も含め、すべての分野で活用するとかえって学習効率が悪くなるおそれがあります。どの分野で忘却曲線を取り入れるか、その範囲を見極めることが大切です。

6. 派遣社員の教育・研修時に意識すべきポイント

忘却のメカニズムは派遣社員の教育指導においても活用できます。派遣先企業の担当者が教育・研修時に意識すべきポイントを以下にまとめました。

事前アンケートを実施する

派遣社員が効果的な研修を受けるためには、事前アンケートが有用です。アンケートを通じて、派遣社員の現在のスキルや知識、研修に対する期待や不安を把握できます。これにより、研修内容を各個人のニーズに合わせてカスタマイズできます。例えば、基礎知識が不足している派遣社員には基礎的な内容を、経験豊富な派遣社員には応用的な内容を提供することが可能です。

インタラクティブな講義形式を取り入れる

インタラクティブとは「双方向」「対話式」などを意味する言葉で、講義や研修においては「指導を受ける側も参加する形式」を指します。講師が話すだけの一方通行の講義形式では記憶に残りづらいため、指導を受ける派遣社員も積極的に参加できるような双方向の講義形式を取り入れるとよいでしょう。

アウトプットの機会を設ける

派遣社員が学んだ内容をしっかりと定着させるためには、実際に使ってみることが必要です。例えば、研修で学んだスキルを実務で活用することで、理解が深まり、記憶に残りやすくなります。また、同僚とのディスカッションやプレゼンテーションなど、他人に伝える機会を持つことで、自分の理解を確認し、知識をさらに強化できます。

日報を書いて毎日の業務を振り返る

仕事を効率よく覚えるためには、その日の業務や課題を振り返る時間を設けるのがおすすめです。一度覚えた内容を定着させるにはなるべく早く復習する必要があります。毎日の業務の終わりに日報を書く習慣をつけると、その日のうちに一日の仕事を振り返って内省でき、次の日からの業務もスムーズに進めることができます。

フォローアップ研修の実施

人の記憶は時間の経過で薄れていくため、学んだ内容を定着させるためにはフォローアップの機会を設ける必要があります。一度の研修で終わるのではなく、後日フォローアップ研修を実施し、再度の復習によって記憶を定着させることが大切です。適切な頻度で課題の確認と共有をおこない、派遣社員の不安や悩み、疑問点を解消できれば、仕事に対するモチベーションの向上にもつながっていきます。

関連記事:派遣社員がすぐに辞める理由とは?定着率向上のために派遣先企業がすべき5つのこと

7.まとめ

エビングハウスの忘却曲線とは、ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが提唱した記憶のメカニズムです。人は「忘れる」生き物であり、一度記憶した内容も時間の経過とともに忘れていきます。しかし、一度覚えた内容であれば次に復習するときは覚える時間を「節約」できます。

エビングハウスの忘却曲線をビジネスで活かすには「忘れる」ことを前提とした研修プログラムの策定が必要となります。一度の研修だけでは記憶が定着しないことを教育担当者が認識し、定期的に復習する機会を設けることが重要です。

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