派遣社員は育休を取得できる?条件や手続きについて、産休とともに解説

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派遣社員は育休を取得できる?条件や手続きについて、産休とともに解説派遣社員は育休を取得できる?条件や手続きについて、産休とともに解説

育児休業(育休)は、1歳未満の子どもを育てる男女労働者が取得できる制度です。出産後も働き続けたい派遣社員が産休・育休を取得するためには、どのような条件や手続きが必要となるのでしょうか。

この記事では、産休・育休の取得条件や手続きの流れ、派遣先企業に求められる対応についてわかりやすく解説します。

目次

  1. 派遣社員は育休を取得できる?
  2. 派遣社員が産休・育休を取得する条件
    • 産休取得の条件
    • 育休取得の条件
  3. 産休・育休の期間
    • 産休の期間
    • 育休の期間
  4. 派遣社員が産休・育休を取得する際の手続き
    • 派遣会社への報告
    • 産休の取得申請
    • 育休の取得申請
  5. 産休・育休時に受け取れる手当
    • 産休時の手当
    • 育休時の手当
  6. 派遣先企業に求められる産休・育休への対応
    • 産休・育休を理由とする不利益な取り扱いの禁止
    • 産休・育休に関するハラスメント対策
    • 妊娠中・出産後の健康管理
  7. 産休・育休に入る派遣社員の後任は?
    • 新たな派遣社員を派遣してもらう
    • 後任のスタッフに業務を引き継ぐ
  8. まとめ

1.派遣社員は育休を取得できる?

育児休業(育休)とは、原則として1歳に満たない子どもを養育するための休業をいいます。育児・介護休業法に定められている労働者の権利であり、就業先に規定がなくても法律に基づき育休取得の申出をおこなうことができます。要件を満たした労働者の申出であれば、企業側はこれを拒否することはできません。

育休取得の対象者は「1歳未満の子どもを養育する男女労働者」であり、派遣社員や契約社員など期間を定めて働く有期雇用労働者も一定の条件を満たすことで育休取得が認められます。また育休とは別に、出生直後の時期の休業である「産後パパ育休(出生時育児休業制度)」も取得することができます。

派遣社員は育休を取得できる?条件や手続きについて、産休とともに解説

2.派遣社員が産休・育休を取得する条件

派遣社員が産休・育休を取得するための条件は次のとおりです。

産休取得の条件

産前産後休業(産休)は、雇用期間や雇用形態にかかわらず出産を控えた女性労働者が取得できる制度です。休業開始日まで雇用契約を結んでいることが条件となり、産前休業は出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から、本人の請求によって希望する期間の休業を取得できます。一方、産後休業は本人の意思にかかわらず取得しなければならないもので、出産日の翌日から8週間は働くことができません。

育休取得の条件

派遣社員が育休を取得するには「子どもが1歳6か月に達する日までに労働契約の期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと」が条件となります。有期雇用労働者における育休取得の条件は一部緩和され、2022年4月より「引き続き雇用された期間が1年以上」とする条件が撤廃されています。

育休取得の条件

出典:そのときのために、知っておこう。育児休業制度|厚生労働省

ただし、以下に該当する労働者の育休取得を不可とする労使協定を定めている場合、企業は労働者からの育休申出を拒否することができます。このため、企業が育休の対象者について労使協定を結んでいるかどうかを確認しておく必要があります。

  1. 継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
  2. 育休申出から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
  3. 週の所定労働日数が2日以下の労働者

3. 産休・育休の期間

労働者が取得できる産休・育休の期間は次のとおりです。

産休の期間

産前休業は任意で取得する休業であり、出産日は産前休業に含まれます。出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から、労働者の請求によって取得できます。

出産後の産後休業に関しては、本人の要望があっても出産日の翌日から8週間は就業不可となるため、その間は必ず休まなければなりません。ただし、産後6週間後に本人が就業を希望し、かつ医師が「支障がないこと」を認めた業務には就業可能となります。

育休の期間

育休の期間は原則として「子どもが1歳になるまで」と定められています。ただし、1歳に達する時点で特別な事情(保育所に入所できないなど)がある労働者に関しては、子どもが1歳6か月になるまで育休期間を延長することができます。

さらに、1歳6か月の時点でも特別な事情がある場合には子どもが2歳になるまで延長できますが、この場合は育休申出の時点で「子どもが2歳に達する日までに労働契約の期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと」が条件となります。

参考:有期雇用労働者の育児休業や介護休業について|厚生労働省

4. 派遣社員が産休・育休を取得する際の手続き

派遣社員の休業手続きについては基本的に派遣元企業が対応することになります。
ここでは派遣社員が産休・育休を取得する際の流れを解説します。

派遣会社への報告

妊娠が判明した派遣社員は、出産予定日や休業予定について雇用主である派遣元企業に連絡します。報告を受けた派遣元は産休・育休制度を個別に周知したうえで、派遣社員の取得意向を確認する必要があります。

なお、派遣先企業への報告は派遣元がおこなうため、派遣社員が派遣先に直接連絡することはありません。

産休の取得申請

派遣元企業に産休申請書を提出します。
産後8週間は強制的に就業不可となりますが、産前休業は労働者本人からの請求が必要となります。特に提出期限は決められていないものの、休業を取る1か月前までには提出するのが望ましいでしょう。

育休の取得申請

派遣元企業に育休申請書を提出します。
育休取得は労働者本人からの請求が必須です。派遣社員が希望する日から休業するためには、原則として育休開始予定日の1か月前までに申し出る必要があります。ただし予定日より早く出産した場合など、特別の事情がある場合には育休開始予定日の1週間前までに申請することで、派遣社員が希望する日程での育休取得が可能となります。

5. 産休・育休時に受け取れる手当

産休・育休中は無給となりますが、加入する健康保険や雇用保険から手当が支給されます。
派遣社員が産休・育休時に受け取れる手当を以下にまとめました。

産休時の手当

《出産手当金》

出産手当金は給与の代わりとなる手当です。
健康保険の被保険者は、1日につき標準報酬日額の3分の2相当額の支給を受けることができます。出産日以前42日目(多胎妊娠の場合は98日目)から、出産日の翌日以後56日目までの間に休業した期間について支給されます。

《出産育児一時金》

健康保険や国民健康保険の被保険者が出産したときに受け取れる手当です。
出産した胎児数分の支給となり、1児につき50万円(産科医療保障制度の対象外の場合は48.8万円)が支給されます。

育休時の手当

《育児休業給付金》

育休時には雇用保険から育児休業給付金が支給されます。
雇用保険の被保険者が一定の条件を満たした場合には、休業開始時賃金の67%(育休開始から181日目以降は50%)を給付金として受け取ることができます。

《出生後休業支援給付金》

2025年4月より創設される新たな給付金制度です。
2025年4月以後の育休に対し、一定の条件を満たす対象者には育児休業給付金に加えて出生後休業支援給付金が支給されます。

育休時の手当について詳しく知りたい方は以下のパンフレットをご覧ください。
育児休業等給付の内容と支給申請手続|厚生労働省

6.派遣先企業に求められる産休・育休への対応

派遣社員が産休や育休を取得する場合、就業先の派遣先企業としてもさまざまな対応を講じる必要があります。ここでは、派遣社員の産休・育休において派遣先に求められる対応をご紹介します。

産休・育休を理由とする不利益な取り扱いの禁止

妊娠や出産をしたこと、産休や育休を取得したことを理由に、派遣社員に対して不利益な取り扱いをすることは禁止されています。ここでいう「不利益な取り扱い」とは、仕事の提供に支障がないにもかかわらず派遣社員の交代を求めたり、通常業務に従事させず雑務のみを指示したり、契約更新を拒否したりすることを指します。

産休・育休に関するハラスメント対策

妊娠や出産、産休・育休に関する上司や同僚からの言動により、これらに該当する派遣社員の就業環境が害される場合にはハラスメントにあたります。派遣先は自ら雇用する社員と同様に、派遣社員に対してもハラスメント対策を講じる義務があります。ハラスメント発生の未然防止に努めるとともに、発生した場合にも迅速かつ適切な対応をとることが求められています。

関連記事:派遣社員がパワハラを受けた場合の派遣先企業の対応について解説

妊娠中・出産後の健康管理

派遣先は自ら雇用する社員と同様に、派遣社員に対しても妊娠中や出産後の健康管理をおこなう義務があります。派遣社員が保健指導や健康診査を受けるための時間確保に協力するとともに、医師の指導事項(時差通勤や勤務時間の短縮など)に対応する措置を講じなければなりません。派遣社員に「母性健康管理指導事項連絡カード」の活用を促すなど、派遣先としても医師の指導内容を的確に把握することが大切です。

7.産休・育休に入る派遣社員の後任は?

派遣社員が産休や育休に入る際、派遣先企業では業務の継続性を確保するための対応が求められます。ここでは、後任スタッフの派遣手続きや引き継ぎのポイントについて解説し、スムーズな業務運営をサポートする方法を紹介します。

新たな派遣社員を派遣してもらう

派遣社員が産休や育休に入る際、派遣先企業が引き続き業務を依頼する場合は、派遣会社が新たな派遣契約を結び、後任スタッフを選定して派遣します。この手続きは派遣会社が主体となり進められるため、派遣先企業は安心して業務を継続できます。

後任のスタッフに業務を引き継ぐ

後任スタッフへの業務引き継ぎをスムーズに行うためには、事前の準備と配慮が欠かせません。業務内容や手順を明確に記載した引き継ぎ書やマニュアルを用意することで、後任者が業務を円滑に進められます。また、必要に応じて対面での引き継ぎを実施することで、不明点をその場で解消しやすくなります。さらに、前任の派遣スタッフが産休・育休に入っても後任者が参考にできる資料を整備しておくことで、業務の継続性が確保されます。

関連記事:【業務の引き継ぎ】派遣期間終了までに行うべき企業の対応を解説

8.まとめ

育児休業(育休)は育児・介護休業法に規定された労働者の権利であり、派遣社員の場合は「子どもが1歳6か月になるまでの間に契約が満了することが明らかでない」ことを条件に育休を取得することができます。ただし、派遣会社が育休対象者に関する条件を労使協定で定めている場合、それに該当する派遣社員の育休申請は拒否されることになります。

休業に関する手続きは雇用主である派遣元が対応しますが、派遣先企業にも産休・育休を理由とした不利益な取り扱いの禁止やハラスメント対策、妊娠中・出産後の健康管理などへの対応が義務づけられています。自社の社員と同じく、派遣社員に対しても適切な措置を講じることが重要です。

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