3.派遣先企業が特に注意すべき4つの改正
2026年の労働安全衛生法改正の中から、派遣先企業が特に注意すべき改正は、次の4点です。
- 個人事業者を含む混在作業の安全管理強化
- 化学物質管理の厳格化と責任の明確化
- 高齢者への安全配慮
- 職場のメンタルヘルス対策の推進
個人事業者を含む混在作業の安全管理強化
今回の改正で、フリーランスや一人親方などの個人事業者が、新たに労働安全衛生法の保護対象に位置づけられました。改正の背景は、一般の従業員と個人事業者が混在して作業するケースの増加です。個人事業者は従業員と比べて必ずしも作業環境に精通していない場合があり、安全衛生教育が十分でなかったりする場合が多く、混在作業での労働災害の発生リスクが懸念されていました。
従業員と個人事業者が混在する状態で作業を行わせる場合は、作業間の連絡調整など、安全の確保に必要な措置が義務付けられます。また、個人事業者が被災者となる事故については、2026年4月より事業者への報告義務が一部施行されています。
さらに2027年1月からは「個人事業者等の業務上災害報告制度」が施行予定です。重大な業務上災害が発生した際、直近の注文者(特定注文者)が労働基準監督署へ報告する仕組みへと強化される予定です。
派遣先にとっては、連絡調整や作業上の統括管理の重要性が高まったといえるでしょう。
化学物質管理の厳格化と責任の明確化
化学物質の管理に関する改正は、主に次の2点です。
- SDS(安全データシート)通知義務違反の罰則化
SDS(安全データシート)とは、化学物質の成分や危険性、取扱いの注意点などをまとめた文書です。SDSによる化学物質の危険性・有害性情報の通知義務に違反した場合、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。通知事項に変更が生じた際の再通知も、努力義務から義務として明確化されました。
- リスクアセスメント対象の拡大
リスクアセスメントとは、化学物質の危険性や有害性を特定するための取り組みです。改正により、リスクアセスメントの対象となる化学物質が、約300物質から約2,900物質に拡大されました。
派遣先企業で化学物質の情報や取扱いルールの周知が不十分だと、法違反に該当するだけでなく、労働災害発生時の責任を追及され、派遣元企業との取引が終了する原因にもなりえます。対策の優先度が高い改正といえるでしょう。
高齢者への安全配慮
高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業管理その他の必要な措置が努力義務化されます。高年齢労働者は他の世代と比べて労働災害の発生率が高い傾向があるとされており、災害発生時の休業期間も長くなりやすいことから、新たに規定が追加されました。
高齢者に対する安全配慮の努力義務化は、今後改正される労働安全衛生法において派遣社員も対象です。該当する派遣社員がいる場合は、特性を踏まえた対応が必要になります。この改正は「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」の内容を整合する内容であり参考になります。
職場のメンタルヘルス対策の推進
職場のメンタルヘルス対策の推進として、ストレスチェックの実施義務が拡大される予定です。現在、ストレスチェックの実施が義務付けられているのは従業員数50人以上の事業場に限られ、50人未満の事業場は努力義務とされています。
今回の改正で、50人未満の事業場でも年1回のストレスチェック実施が2028年5月までに義務化される予定です。
派遣社員のストレスチェックは、雇用関係のある派遣元企業での実施が原則です。ただし、職場全体のストレス傾向を把握するための調査である集団分析は、派遣社員も含めて実施した方が望ましいでしょう。集団分析の実施は改正後も努力義務に過ぎませんが、派遣社員も対象者に含めて実施すると、現場の実態に即した結果を得やすくなります。
参考:改正労働安全衛生法説明会~個人事業者等の安全衛生対策の推進について~(厚生労働省)