キャリアアップ助成金正社員化コースとは?適用条件や変更点を解説

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キャリアアップ助成金正社員化コースとは?適用条件や変更点を解説キャリアアップ助成金正社員化コースとは?適用条件や変更点を解説

非正規雇用労働者の正社員化に伴い、多くの事業所が申請する「キャリアアップ助成金正社員化コース」。非正規雇用者のキャリアアップ促進や人材育成、人員確保にも活用できる助成金制度ですが、2022年4月以降は制度見直しによる変更点が生じているため、対象となる事業主は要件を満たすかどうか確認する必要があります。

この記事では、キャリアアップ助成金正社員化コースとはどのような制度なのか、その概要や適用条件、主な変更ポイントについて詳しく解説します。

目次

  1. キャリアアップ助成金正社員化コースとは?
  2. キャリアアップ助成金正社員化コースの適用条件
  3. キャリアアップ助成金正社員化コースの助成金
  4. キャリアアップ助成金正社員化コースの主な変更ポイント
    • 2022年10月以降の変更点:正社員と非正規雇用労働者の違いがより明確に
    • 2022年12月以降の変更点:人材開発支援助成金の拡充
  5. まとめ

1.キャリアアップ助成金正社員化コースとは?

キャリアアップ助成金正社員化コースとは、非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換、または直接雇用した事業主に対して助成をおこなう制度です。厚生労働省が創設したキャリアアップ助成金の一つで、事業主が自社のアルバイトやパート、契約社員、派遣社員などを正社員として雇用した場合に、この助成金が支給されます。

キャリアアップ助成金正社員化コースの目的としては、労働者の意欲やスキルの向上、人材確保などが挙げられます。非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するための助成金制度ですが、2022年4月1日に大きな改定がおこなわれており、申請の際には新たに対象要件を満たしているかどうかの確認が必要となります。

キャリアアップ助成金正社員化コースとは?

2.キャリアアップ助成金正社員化コースの適用条件

キャリアアップ助成金正社員化コースは、1年度1事業所あたり20人まで申請可能となっています。

   

支給対象の事業主

助成金の支給対象となる事業主の条件は以下のとおりです。

  • 雇用保険適用事業所の事業主
  • キャリアアップ管理者を事業所ごとに置いている事業主
  • 対象労働者のキャリアアップ計画を事業所ごとに作成し、管轄労働局長の認定を受けている事業主
  • 対象労働者に対する労働条件、勤務状況、賃金の支払い状況などを明らかにする書類を整備している事業主
  • 計画期間内にキャリアアップに取り組んでいる事業主

民間事業者以外にも、公益法人やNPO法人、医療法人、社会福祉法人なども対象に含まれます。また、中小企業と大企業の助成金は異なるため、中小企業事業主の範囲を確認しておく必要があります。

対象となる中小企業事業主の範囲

助成金の支給対象となる中小企業事業主の範囲は以下のとおりです。資本金等のない中小企業事業主は、常時雇用する労働者の数(※)によって判定されます。

  資本金の額・出資の総額 常時雇用の労働者数
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他 3億円以下 300人以下

参考:『キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

(※)常時雇用する労働者:2か月を超えて使用される者であり、かつ週の所定労働時間が当該事業主に雇用される通常の労働者とおおむね同等である者

3.キャリアアップ助成金正社員化コースの助成金

2022年4月1日以降のキャリアアップ助成金正社員化コースにおける助成金は、有期雇用労働者や無期雇用労働者を正社員に転換、または直接雇用した場合にのみ支給されます。さらに、派遣労働者を派遣先企業の立場で正規雇用労働者として直接雇用した場合、対象労働者1人あたり28.5万円(生産性向上が認められる場合は36万円)が加算されます。

条件を満たした中小企業と大企業が受け取れる支給金額は下表のとおりです。

企業区分 条件 支給金額 派遣労働者の場合
(加算後の合計)
中小企業 有期雇用非正規労働者を正社員として雇用 57万円 85.5万円
有期雇用非正規労働者を正社員として雇用し、かつ生産性向上が認められる 72万円 108万円
無期雇用非正規労働者を正社員として雇用 28万5,000円 57万円
無期雇用非正規労働者を正社員として雇用し、かつ生産性向上が認められる 36万円 72万円
有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換 廃止(※)
大企業 有期雇用非正規労働者を正社員として雇用 42万7,500円 71万2,500円
有期雇用非正規労働者を正社員として雇用し、かつ生産性向上が認められる 54万円 90万円
無期雇用非正規労働者を正社員として雇用 21万3,750円 49万8,750円
無期雇用非正規労働者を正社員として雇用し、かつ生産性向上が認められる 27万円 63万円
有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換 廃止(※)

参考:『キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)』 『派遣労働者を正社員として直接雇用しませんか

(※)【廃止】(2022年4月1日~)

有期雇用→無期雇用:28万5,000円<36万円>(21万3,750円<27万円>)
<>は生産性向上が認められる場合の支給額、()内は大企業への支給額

4.キャリアアップ助成金正社員化コースの主な変更ポイント

キャリアアップ助成金正社員化コースでは、上述した助成要件の一部廃止以外にも、受給にあたり理解しておきたい変更事項があります。

2022年10月以降の変更点:正社員と非正規雇用労働者の違いがより明確に

2022年10月1日以降、正社員転換において適用される変更ポイントは「正社員定義の変更」と「非正規雇用労働者定義の変更」です。

正社員定義の変更

改正前 同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
改正後 同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者で、
「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者

非正規雇用労働者定義の変更

改正前 6か月以上雇用している有期または無期雇用労働者
改正後 賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者

2022年10月1日以降の正社員転換より、正社員と非正規雇用労働者の違いがより明確化されています。キャリアアップ助成金正社員化コースの活用を検討している企業は、これらの変更ポイントを踏まえ、社内体制を整備するなどの対応が必要です。

2022年12月以降の変更点:人材開発支援助成金の拡充

人材開発支援助成金における特定の訓練修了後に正社員化すると、基本助成額に訓練加算額を合算した金額が支給されます。2022年12月2日以降に正社員化した場合は、「助成金の金額」と「加算対象となる訓練」が拡充されることになりました。

助成金の金額(1人あたり)の拡充

人材開発支援助成金における「人への投資促進コース」のうち、「自発的職業能力開発訓練」と「定額制訓練」の訓練加算額が11万円に引き上げられます。

加算対象となる訓練の拡充

人材開発支援助成金において加算対象となる訓練コースは以下の4つです。

  • 事業展開等リスキリング支援コース【新設】
  • 特別教育訓練コース
  • 人への投資促進コース
  • 特定訓練コース

助成金の金額と加算対象の訓練が拡充され、これまで以上に利用しやすくなっているキャリアアップ助成金正社員化コース。助成金制度を活用する際は、厚生労働省のホームページやパンフレットを参考に、最新の情報をご確認ください。

5.まとめ

キャリアアップ助成金正社員化コースとは、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するために、正規雇用労働者へ転換、もしくは直接雇用した事業主に対して助成をおこなう制度です。

助成金の活用を検討している企業には、改定された「有期雇用から無期雇用への転換時の助成廃止」「正社員定義の変更」「非正規雇用労働者定義の変更」などを踏まえ、社内体制の整備が求められます。自社の就業規則の規定などを再度確認し、助成金の適用条件を満たす場合は、積極的にキャリアアップ助成金正社員化コースを活用しましょう。

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