【2025年最新版】賃上げで税金が安くなる?賃上げ促進税制を徹底解説

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【2025年最新版】賃上げで税金が安くなる?賃上げ促進税制を徹底解説【2025年最新版】賃上げで税金が安くなる?賃上げ促進税制を徹底解説

企業経営において、優秀な人材の獲得・定着は最重要課題の一つであり、そのための「賃上げ」は避けて通れません。そして、その賃上げコストを国が税制面から支援するのが、「賃上げ促進税制」です。この制度を活用することで、実質的なコスト負担を抑えながら、計画的な賃上げを実現できます。

ただし、派遣社員を受け入れている企業の方は、特に留意が必要です。この税制の適用対象となるのは、自社が直接雇用する従業員の給与増額分です。したがって、派遣料金の値上げ分は、派遣先企業側の税制控除の対象にはなりません。

本記事では、賃上げ促進税制の基本的な仕組みから、具体的な計算例、そして自社社員の待遇改善が企業全体にもたらす間接的なメリットまで、人事担当者様が押さえるべきポイントを網羅的に解説します。

 


この記事でわかること

  • 賃上げ促進税制の基本的な仕組み
  • 賃上げ促進税制の対象条件と賃上げ要件の計算方法(満たす/満たさないケースの具体例を紹介)
  • 賃上げ促進税制を活用した企業が得られるメリット

目次

  1. 賃上げ促進税制とは
  2. 賃上げ促進税制の対象条件
    • 対象企業
    • 対象者
    • 適用期間
    • 新設|上乗せ要件(教育訓練費)
    • 新設|上乗せ要件(女性活躍推進)
  3. 賃上げ要件の計算方法
    • 賃上げ要件を満たすケース
    • 賃上げ要件を満たさないケース
  4. 対象従業員の賃上げが企業にもたらす3つのメリット
    • 従業員の定着率・満足度が上がる
    • 企業の採用・人材確保に貢献できる
  5. まとめ

1.賃上げ促進税制とは

賃上げ促進税制とは、従業員に支払う給与などを前年度より一定率以上増額した企業に対し、支払う法人税を、給与などの増加額に応じて減らす制度です。もともとは「所得拡大促進税制」という名称で、2013年度に創設された制度ですが、令和4年度の税制改正により変更されました。

賃上げ促進税制で比較対象となる給与などは、直接雇用する従業員に対して支払ったものが対象です。派遣社員は派遣元企業の従業員として扱われるため、派遣先企業が支払う派遣料金は含まれません。

この税制は、自社で直接雇用する従業員を持つ全ての企業が活用できるものです。企業は人件費増加の負担を軽減し、社内全体の待遇レベルを引き上げることができます。その結果、派遣社員を含む職場全体のモチベーション向上や、人材確保に繋がるという間接的なメリットが期待できます。

賃上げ促進税制とは

出典:中小企業向け「賃上げ促進税制」(中小企業庁)

出典:中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック(中小企業庁)

2.賃上げ促進税制の対象条件

賃上げ促進税制は、青色申告書を提出する企業や個人事業主が対象ですが、細かい条件は規模に応じて異なります。対象となる企業の要件や従業員の範囲を詳しく見ていきましょう。

対象企業

賃上げ促進税制の対象企業は、規模に応じて次の3つの区分があります。

区分 対象企業の主な要件 前年度と比較した給与等支給額の増額率(賃上げ要件) 税額控除率
(※1)
中小企業向け 青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人、農業協同組合等)または従業員数1,000人以下の個人事業主 1.5%以上 15%
2.5%以上 30%
中堅企業向け
(新設)
青色申告書を提出する従業員数2,000人以下の企業または個人事業主(※2) 3%以上 10%
(その企業及びその企業との間にその企業による支配関係がある企業の従業員数の合計が1万人を超えるものを除く。) 4%以上 25%
全企業向け 青色申告書を提出する全ての法人または個人事業主 3%以上 10%
4%以上 15%
5%以上(新設) 20%
7%以上(新設) 25%

※1:税額控除額の計算は、全雇用者の前事業年度から適用事業年度の給与等支給額の増加額に税額控除率を乗じて計算。ただし、控除上限額は法人税額等の20%。

※2:資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上の企業は、マルチステークホルダー方針の公表及びその旨の届出が必要。

参考資料:「賃上げ促進税制」パンフレット(令和6年3月時点版)(中小企業庁)

対象者

賃上げ促進税制では、国内雇用者に対して支払った給与などの額を前年度と比較し、該当の有無や税額控除額を決定します。国内雇用者とは、国内の事業所に勤務し、賃金台帳に記載されている従業員です。次のような従業員も、要件を満たせば国内雇用者に含まれます。

  • パートやアルバイト
  • 日雇い従業員
  • 長期出張により海外で一時的に勤務する従業員(国外関連者に該当しないなどの要件を満たす場合)

ただし、派遣社員は派遣元企業の国内雇用者に該当するため、派遣先企業には含まれません。

適用期間

法人の場合、賃上げ促進税制の適用期間は、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度です。例えば8月から年度が始まる企業の場合、次の3年度が対象となります。

  • 令和6年8月から令和7年7月まで
  • 令和7年8月から令和8年7月まで
  • 令和8年8月から令和9年7月まで

なお、個人事業主は令和7年4月1日から令和9年3月31日までの各年が適用期間で、法人とは異なるため注意しましょう。

新設|上乗せ要件(教育訓練費)

賃上げ要件を満たした企業が教育訓練費も増額した場合、表のとおり税額控除率が上乗せされます。

区分 教育訓練費(※)の増加率 上乗せ控除率
中小企業向け 教育訓練費の額が前事業年度と比べて5%以上 10%
中堅・全企業向け 教育訓練費の額が前事業年度と比べて10%以上 5%

※増加率に加え、教育訓練費の総額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが必要。前事業年度の教育訓練費がゼロの場合、教育訓練費の総額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であれば要件を満たしたとみなされます。

新設|上乗せ要件(女性活躍推進)

令和6年度の税制改正で、子育て支援や女性活躍推進に積極的な企業に対する上乗せ措置が新設されました。くるみん認定やえるぼし認定の取得が適用要件です。

  • くるみん認定
    厚生労働大臣が定める子育て支援の水準要件を満たした企業に与えられる認定です。トライくるみん、くるみん、プラチナくるみんの3段階があります。また、不妊治療と仕事の両立にも取り組んでいる企業に対するプラスの認定制度があります。
  • えるぼし認定
    女性活躍推進の取組が優良な企業に与えられる認定制度です。実施の程度に応じて3段階に分かれており、特に取組が優良な企業には「プラチナえるぼし」が認定されます。

法人の場合、事業年度終了時に次の表の認定のいずれかを取得していると、税額控除率が5%上乗せされます。

区分 くるみん認定 えるぼし認定
中小企業向け
  • くるみん(※)
  • くるみんプラス(※)
  • プラチナくるみん
  • プラチナくるみんプラス
  • えるぼし(2段階目)(※)
  • えるぼし(3段階目)(※)
  • プラチナえるぼし
中堅・全企業向け
  • プラチナくるみん
  • プラチナくるみんプラス
  • えるぼし(3段階目)(※)
  • プラチナえるぼし
全企業向け
  • プラチナくるみん
  • プラチナくるみんプラス
  • プラチナえるぼし

※取得した年のみ対象。

参考資料:賃上げ促進税制 御利用ガイドブック(令和6年10月16日 最終更新)(経済産業省)

参考資料:中小企業向け 賃上げ促進税制ご利用ガイドブック(令和6年9月20日更新版)(経済産業省)

3. 賃上げ要件の計算方法

賃上げ促進税制を受けるには、一定の割合以上の賃上げを実施していることが必要です。賃上げ要件を満たす場合と満たさない場合のケースを、具体的な数値を使って見ていきましょう。

賃上げ要件を満たすケース

賃上げ促進税制を活用するには、雇用者全体に支給する給与の総額(雇用者給与等支給額)が、前事業年度(比較雇用者給与等支給額)と比べて1.5%以上(中小企業の場合の必須要件)増加している必要があります。

【計算例】

  • 比較雇用者給与等支給額(前年度の給与総額):8,000万円
  • 雇用者給与等支給額(今年度の給与総額):8,250万円

賃上げ率の計算:(8,250万円 - 8,000万円) ÷ 8,000万円 = 3.125%

必須要件の1.5%以上を満たしており、2.5%も超えているため、税額控除率は30%になります。
控除額:(8,250万円 - 8,000万円) × 30% = 75万円
この場合、法人税額の20%を上限に、最大で75万円の税額控除が受けられます。

賃上げ要件を満たさないケース

賃上げをしていても、次の計算例のように、前事業年度と比べて1.5%以上増加の要件を満たさない場合、税額控除は受けられません。

【計算例】

  • 比較雇用者給与等支給額:8,000万円
  • 雇用者給与等支給額:8,100万円

賃上げ率の計算:(8,100万円 - 8,000万円) ÷ 8,000万円 = 1.25%

賃上げ率が1.5%よりも低いため、必須要件を満たしていません。この場合は、教育訓練費の増加率など、他の上乗せ要件を満たしても、税額控除額は0円となるため注意しましょう。

4. 対象従業員の賃上げが企業にもたらす3つのメリット

従業員の賃上げによる主なメリットは次の3点です。

  • コスト負担を抑えて賃上げができる
  • 従業員の定着率・満足度が上がる
  • 企業の採用・人材確保に貢献できる

コスト負担を抑えて賃上げができる

賃上げ促進税制は、増加した給与額の一部を法人税額などから直接控除できる制度です。上手に活用すれば、実質的なコスト負担を抑えながら人件費を増やせるため、賃上げの原資確保に役立つでしょう。

また、賃上げの実績があることで、行政や大手取引先からも信頼を得やすくなります。

従業員の定着率・満足度が上がる

従業員の賃上げは、従業員定着率や満足度の向上にも効果があります。給与の増額を通して企業からの評価が伝われば、企業への帰属意識や貢献意欲も高まるでしょう。競合他社にも差をつけられ、従業員の離職リスク軽減にも効果的です。

賃上げ促進税制には、教育訓練費の増額やくるみん認定・えるぼし認定の取得による控除率の上乗せもあります。企業がキャリア形成や育児と仕事の両立、女性活躍のサポートに力を入れる姿勢を見せれば、従業員の労働意欲向上も見込めるでしょう。従業員の満足度やモチベーションが向上すると業務の質が上がり、サービス品質や業績アップにもつながります。

企業の採用・人材確保に貢献できる

賃上げ促進税制を活用して企業が賃上げに取り組めば、次の点から採用面でもアピールができます。

  • 従業員の待遇改善によるブランドイメージ向上
  • 高めの給与水準を提示し優秀な人材を確保
  • 教育訓練などの充実によるアピールポイントの増加

給与水準は求職者側にとっても重要な労働条件です。優秀な人材が確保できれば業績も上がり、より優秀な人材が集まりやすくなる好循環が期待できるでしょう。

さらに、賃上げによる自社社員の待遇向上は、間接的に派遣社員の受け入れにも貢献します。 自社が安定して高い待遇水準を維持することで、派遣元企業から「質の高い人材を安心して送り出せる優良な派遣先」と評価され、優秀な派遣社員を優先的に紹介してもらえる関係性構築に繋がるでしょう。

5. まとめ

賃上げ促進税制は、コストの負担を減らし、企業の成長を後押しする制度であり、自社の直接雇用従業員の待遇改善を強力にサポートします。

派遣社員は税制の直接的な対象には含まれませんが、この制度を活用して自社の待遇水準を向上させることは、派遣社員を含む職場環境全体のエンゲージメント改善に繋がります。

コストを抑えた計画的な賃上げは、人材獲得競争を勝ち抜くための重要な一手です。この制度を有効活用し、企業の成長と働きやすい環境づくりに役立てましょう。

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