企業経営において、優秀な人材の獲得・定着は最重要課題の一つであり、そのための「賃上げ」は避けて通れません。そして、その賃上げコストを国が税制面から支援するのが、「賃上げ促進税制」です。この制度を活用することで、実質的なコスト負担を抑えながら、計画的な賃上げを実現できます。
ただし、派遣社員を受け入れている企業の方は、特に留意が必要です。この税制の適用対象となるのは、自社が直接雇用する従業員の給与増額分です。したがって、派遣料金の値上げ分は、派遣先企業側の税制控除の対象にはなりません。
本記事では、賃上げ促進税制の基本的な仕組みから、具体的な計算例、そして自社社員の待遇改善が企業全体にもたらす間接的なメリットまで、人事担当者様が押さえるべきポイントを網羅的に解説します。
この記事でわかること
- 賃上げ促進税制の基本的な仕組み
- 賃上げ促進税制の対象条件と賃上げ要件の計算方法(満たす/満たさないケースの具体例を紹介)
- 賃上げ促進税制を活用した企業が得られるメリット
目次
- 賃上げ促進税制とは
- 賃上げ促進税制の対象条件
- 対象企業
- 対象者
- 適用期間
- 新設|上乗せ要件(教育訓練費)
- 新設|上乗せ要件(女性活躍推進)
- 賃上げ要件の計算方法
- 賃上げ要件を満たすケース
- 賃上げ要件を満たさないケース
- 対象従業員の賃上げが企業にもたらす3つのメリット
- 従業員の定着率・満足度が上がる
- 企業の採用・人材確保に貢献できる
- まとめ
1.賃上げ促進税制とは
賃上げ促進税制とは、従業員に支払う給与などを前年度より一定率以上増額した企業に対し、支払う法人税を、給与などの増加額に応じて減らす制度です。もともとは「所得拡大促進税制」という名称で、2013年度に創設された制度ですが、令和4年度の税制改正により変更されました。
賃上げ促進税制で比較対象となる給与などは、直接雇用する従業員に対して支払ったものが対象です。派遣社員は派遣元企業の従業員として扱われるため、派遣先企業が支払う派遣料金は含まれません。
この税制は、自社で直接雇用する従業員を持つ全ての企業が活用できるものです。企業は人件費増加の負担を軽減し、社内全体の待遇レベルを引き上げることができます。その結果、派遣社員を含む職場全体のモチベーション向上や、人材確保に繋がるという間接的なメリットが期待できます。

出典:中小企業向け「賃上げ促進税制」(中小企業庁)
出典:中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック(中小企業庁)
