派遣社員にOJTは必要?派遣先企業が実施する具体例や教育訓練の注意点を解説

人材派遣の実践
派遣社員にOJTは必要?派遣先企業が実施する具体例や教育訓練の注意点を解説派遣社員にOJTは必要?派遣先企業が実施する具体例や教育訓練の注意点を解説

近年の派遣法改正により、派遣社員に対するキャリアアップ支援や教育訓練の実施が、派遣元だけでなく派遣先企業にも求められるようになりました。

派遣社員の受け入れ体制を整えておくことは企業にとっての課題です。なかでも現場での成長を支えるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)は重要な役割を担います。

本記事では、派遣社員にOJTは本当に必要なのかという疑問に答えるとともに、派遣先企業が実施すべきOJTの具体例や注意点について詳しく解説します。

目次

  1. 派遣社員にOJTは必要
  2. 派遣法改正によりキャリアアップ支援や教育訓練の実施が義務化
  3. 派遣社員にOJTを行う具体例
    • 教育担当者を決める
    • 業務内容を直接見せる
    • 実際に業務を行ってみる
  4. OJTをうまく機能させるために派遣先ができること
    • OJTの計画と目標設定を明確にする
    • 指導内容の標準化とマニュアル整備
    • フィードバックの実施と記録
  5. 教育訓練を実施する際の注意点
    • 教育訓練の内容は事前に周知し同意を得る
    • 教育訓練にかかる費用は派遣先企業が負担する
    • 教育訓練の実施内容は派遣先管理台帳に記録し、派遣元企業に報告する
    • 教育訓練の内容や方法は派遣元企業と連携して計画する
  6. まとめ

1.派遣社員にOJTは必要

OJTとは、職場で実際の業務を通して知識やスキルを身につける教育方法です。派遣社員に対しても配属直後から即戦力としての活躍が期待されるケースが多く、実務を通じたOJTは非常に有効です。座学では得られない実践的なノウハウを短期間で習得できます。

ただし、派遣社員の雇用主は派遣元であり、実際の指導は派遣先が担うため、両者の役割や責任を明確にし、適切な指導体制を整えることが欠かせません。計画的かつ段階的にOJTを実施することで、派遣社員の早期定着と職場全体の生産性向上が期待できます。

派遣社員にOJTは必要

2.派遣法改正によりキャリアアップ支援や教育訓練の実施が義務化

近年の派遣法改正により、派遣社員へのキャリア支援や教育訓練の実施が義務化されました。特に2020年の改正では、派遣元だけでなく派遣先企業にも、派遣先で同種の業務に従事する社員と同様の教育訓練を実施する義務が課されています。

訓練はすべての派遣社員が対象で、有給かつ無償で行う必要があります。入職時の研修や長期的なキャリア形成につながる内容が求められ、実施内容の説明と同意取得、管理台帳への記録・保管も必要です。

4月など派遣社員の受け入れが多い時期には、体制を事前に整えることが重要であり、その基盤となるのがOJTの仕組みづくりです。

3. 派遣社員にOJTを行う具体例

派遣社員の早期戦力化には、現場でのOJTが欠かせません。ここでは、教育担当者の選定から実務指導まで、OJTの進め方を解説します。

教育担当者を決める

教育担当者には、業務量やスキルを考慮して適切な人材を選定しましょう。必要に応じて複数名体制をとるのも有効です。

派遣社員に必要なスキルや知識を伝える役割を担うため、教育担当者は現場での実務経験が豊富であることが重要になります。自社の業務内容や手順に詳しい社員を教育担当者として選任しましょう。

業務内容を直接見せる

OJTでは、実際の業務を見せながら、作業の流れや目的を丁寧に説明することが重要です。疑問点があればその場で答えることで、理解を深めやすくなります。

派遣先企業でのOJTは、まず業務内容や職場のルールを共有することから始めましょう。配属部門の業務プロセスや使用ツールの概要、セキュリティ・品質管理に関する基準などを伝えることで、スムーズに業務へと移行できます。

実際に業務を行ってみる

派遣社員には実務を経験させ、作業後には具体的なアドバイスや改善点をフィードバックすることが重要です。

たとえば、OJTの初期段階では担当者が「なぜこの手順をとるのか」といった背景を伝えながら作業を見せてフィードバックを行うことで、理解を深めやすくなります。

繰り返しの実践と振り返りを通じて派遣社員は業務知識を定着させ、自律的に業務を遂行できるようになるでしょう。

4. OJTをうまく機能させるために派遣先ができること

派遣社員が早期に業務へ適応して力を発揮できるようにするには、OJTを「ただ現場に任せるだけ」でなく、派遣先企業としての工夫や支援が欠かせません。ここでは、OJTを効果的に機能させるために派遣先が取り組むべき工夫や環境づくりについて紹介します。

OJTの計画と目標設定を明確にする

派遣社員一人ひとりに明確な学習目標や到達基準を設定し、段階的な指導計画を立てましょう。目標が曖昧なままだと、指導内容にばらつきが生じやすく、派遣社員の成長を妨げる原因になりかねません。

また、進捗状況や理解度を定期的にチェックし、必要に応じて指導方法や内容を見直すことも大切です。プロセスを含めた管理体制を整えることで、派遣社員のスムーズな戦力化が期待できるだけでなく、職場全体の生産性向上にもつながります。

指導内容の標準化とマニュアル整備

指導者によって教え方や伝える内容が異なると、派遣社員が混乱し、業務の効率や習得スピードに影響が出る恐れがあります。このような事態を防ぐためには、指導内容の標準化や業務マニュアルを整備し、指導内容に一貫性を持たせることが重要です。

マニュアルは、デジタル化して動画や画像を活用することで理解しやすくなり、学習効果の向上にもつながります。「習熟度チェック」「面談頻度」などの項目を盛り込み、派遣社員のキャリア形成を視野に入れた継続的な支援計画を立てましょう。

フィードバックの実施と記録

定期的なフィードバックは、派遣社員の成長を促進し、実務への定着を支える重要な要素です。良かった点や改善点を具体的に伝えることで、本人の理解が深まり、モチベーション向上にもつながります。

また、フィードバックの内容を記録して派遣元企業とも共有することで、教育訓練の効果検証や今後の指導改善にも役立ちます。フォロー体制を構築することで、派遣社員の早期戦力化と定着率の向上が期待できるでしょう。

5. 教育訓練を実施する際の注意点

OJTは実務を通じて業務スキルを習得できる有効な教育手法ですが、適切に実施しなければ期待する効果が得られません。派遣社員との信頼関係を損ねるリスクもあるでしょう。ここでは、派遣先企業としてOJTを行う際に押さえておきたいポイントについて解説します。

教育訓練の内容は事前に周知し同意を得る

派遣先企業は、教育訓練を実施する前に派遣社員に訓練の内容を明確に周知する必要があります。近年の法改正により、労働者派遣法では教育訓練の内容を伝える義務が強化されています。

事前に派遣社員へ教育訓練の目的や実施方法、日時を説明し、同意を得ましょう。

教育訓練にかかる費用は派遣先企業が負担する

OJTを含む教育訓練にかかる費用は、原則として派遣先企業が全額を負担する必要があります。訓練は業務時間内に実施されるため有給扱いとなり、派遣社員の賃金を減額することはできません。

法的な要件であるため、派遣先企業は事前に予算やスケジュール面で十分な配慮が求められます。

教育訓練の実施内容は派遣先管理台帳に記録し、派遣元企業に報告する

教育訓練を実施した場合は、その内容や実施日時を「派遣先管理台帳」に記載し、派遣元企業へ報告する義務があります。記録・報告を怠ると、30万円以下の罰金が科せられる可能性もあります。

受け入れ時に訓練計画を明示し、あらかじめ台帳に記録しておくことで、のちの確認がスムーズになるでしょう。派遣元企業や派遣社員との間で認識のずれを防ぎ、トラブルの回避や安心感にもつながります。

教育訓練の内容や方法は派遣元企業と連携して計画する

教育訓練を進めるにあたっては、派遣元企業との連携が欠かせません。派遣先企業は、教育訓練の内容や方法について派遣元と協議し、計画を立てることが重要です。

労働者派遣法では、派遣元が教育訓練を実施する場合や、指導カリキュラムの提供を求める場合、派遣先企業には可能な限り協力する「努力義務」が課されています。

派遣社員の学習計画やスケジュールを円滑に進めるためにも、必要に応じて事前に派遣元と相談・調整を行いましょう。

6. まとめ

派遣社員にとってOJTは、即戦力として活躍するための重要なステップであり、派遣先企業にとっても早期戦力化と定着率向上を実現する有効な手段です。

本記事で紹介したように、教育担当者の選定やマニュアル整備、定期的なフィードバック、派遣元との連携など、派遣社員の成長を支える環境づくりが重要です。

派遣社員を一時的な労働力と捉えるのではなく、「組織に貢献する一員」として育成する意識が、職場全体の生産性と信頼性を高める第一歩となるでしょう。

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