産休代替とは?一般の派遣との違いやメリット、注意点を解説

人材派遣の実践
産休代替とは?一般の派遣との違いやメリット、注意点を解説産休代替とは?一般の派遣との違いやメリット、注意点を解説

産休・育休取得者の仕事を派遣社員が代行する「産休代替」。企業にとってメリットの大きい勤務形態ですが、受け入れの際にはさまざまな準備が必要となり、通常の派遣とは異なる点についても把握しておくことが求められます。

この記事では「産休代替(産休代替派遣)」を取り上げ、一般の派遣との違いや企業が活用するメリット、受け入れに伴う注意点について詳しく解説します。

目次

  1. 産休代替(産休代替派遣)とは
    • 産休代替で働く期間
    • 産休代替の業務内容
  2. 産休代替と一般の派遣の違い
    • 派遣期間の制限
    • 担当する業務の範囲
    • 企業が求めるスキルレベル
  3. 産休代替派遣を活用するメリット
    • 必要な期間のみ人員を確保できる
    • 周囲の負担軽減につながる
    • 助成金の支給対象となる
  4. 産休代替派遣を利用するときの注意点
    • 業務の引き継ぎ期間を設ける
    • 引き継ぐ業務を契約書に記載する
    • 3年ルールの適用対象外となる
    • 派遣期間が変更する可能性を伝える
  5. 産休代替のよくある質問
    • 契約期間の延長を断られてしまった場合、どうしたらよい?
    • 社員が育休を繰り上げするため、派遣社員には別の業務をお願いできる?
    • 育休終了のタイミングで社員が退職した場合、継続して働いてもらうことはできる?
  6. まとめ

1.産休代替(産休代替派遣)とは

産休代替(産休代替派遣)とは、産休・育休を取得する社員の代替要員として、その社員が担当していた仕事を派遣社員が請け負う勤務形態のことです。仕事と育児の両立を後押しするために、各企業において産休・育休制度を充実させる動きもあり、派遣社員による産休代替のニーズが高まっています。

産休代替(産休代替派遣)とは

産休代替で働く期間

派遣社員が産休代替で働く期間は、派遣先企業の社員が取得する「産休(産前産後休業)」と「育休(育児休業)」の期間です。基本的には引き継ぐ対象者の産休・育休期間のみ対応することになります。

労働者が取得可能な産休・育休期間は以下のように決められています。

  • 産前休業の日数:出産予定日を含む6週間以内(多胎妊娠の場合は14週間以内)
  • 産後休業の日数:出産の翌日から8週間以内
  • 育児休業の日数:子どもが満1歳になるまで

このうち産後休業は強制的な休業となりますが、労働者が早期復帰を望む場合には医師が認める業務に限り産後6週間から復帰することができます。

また、育休の日数は原則として「満1歳になるまで」であるものの、1歳の時点で特別な事情(保育所に入所できないなど)がある労働者に関しては、最長2歳まで育休期間を延長することができます。これにより産休代替の期間はひとまず子どもが満1歳になるまで、事情によって育休期間が延長する場合には派遣期間も延びる可能性があります。

産休代替の業務内容

産休代替の場合、基本的には産休・育休を取得する社員が担当していた業務を引き継ぐことになります。産休・育休に入る社員の代替要員であるため、該当社員の業務内容を同等のレベルでこなせるスキルが必要です。また、産休代替においては一人で派遣されるケースが多く、職場に派遣社員が一人だけということもあるため、派遣先の社員と円滑なコミュニケーションがとれることも求められます。

2.産休代替と一般の派遣の違い

産休代替と一般の派遣には以下のような違いがあります。

派遣期間の制限

産休代替の場合、派遣社員が働く期間は対象となる社員が取得する産休・育休期間に限定されます。一般の派遣に適用される「事業所単位の期間制限」と「個人単位の期間制限」の対象外となり、いわゆる「派遣の3年ルール」は適用されません。

  • 事業所単位の期間制限:同一の事業所が派遣社員を受け入れられる期間は最長3年
  • 個人単位の期間制限 :同一の組織に同一の派遣社員を派遣できる期間は最長3年

(※組織とは「課」や「グループ」のこと)

担当する業務の範囲

産休代替では産休・育休取得者の担当業務をそのまま引き継ぐため、一般の派遣よりも広範囲の業務を請け負う傾向にあります。この点、一般の派遣では派遣社員に担当してもらう業務をあらかじめ派遣先が選定しており、産休代替と比べると派遣社員が担う業務の範囲は限定されやすいといえます。

企業が求めるスキルレベル

産休代替の派遣社員は、産休・育休に入る社員の代替要員です。基本的には該当社員の仕事をすべて請け負うことになり、即戦力としての活躍が期待されます。このため、一般の派遣よりも企業が求めるスキルレベルは高い傾向にあり、代替する社員の仕事をスムーズにこなせるスキルが求められます。

3. 産休代替派遣を活用するメリット

企業が産休代替派遣を活用するメリットとして以下の点が挙げられます。

必要な期間のみ人員を確保できる

産休代替派遣を活用することで、必要な期間(=社員の産休・育休期間)のみ代替要員を確保できるメリットがあります。また、人材派遣を利用すれば採用活動を派遣会社に任せることができるため、自社で代替要員を探す手間がかからなくなります。派遣期間が明確かつ限定的であることは、将来の予定や計画が決まっている派遣社員にとっても働きやすく、両者にメリットがあるといえるでしょう。

周囲の負担軽減につながる

産休代替を利用しない場合、その社員が担当していた業務は他の社員に割り振られます。これにより、一部の社員は担当する業務量や範囲が増えたり新しい業務を覚えたりする必要があり、以前よりも負担が増してしまいます。この点、代替要員に仕事を任せることができれば周囲の負担が軽減され「自分だけ業務が増えた」というような不公平感もなくなります。自分の代わりを務めてくれる人材がいれば、産休・育休を取得する社員も気兼ねなく休むことができるでしょう。

助成金の支給対象となる

2024年1月から両立支援等助成金に「育休中等業務代替支援コース」が創設されています。これは育休取得者(育児のための短時間勤務の利用者も対象)の業務を代替する社員への手当の支給や、育休取得者の代替要員として新規雇用をおこなった中小企業に対して助成金を支給するものです。新規雇用は自社による雇入れのほか、派遣による代替要員の確保も対象となります。

育休中等業務代替支援コースの詳細は以下の資料を参考にしてください。

参考資料:両立支援等助成金 (育休中等業務代替支援コース)|厚生労働省

4. 産休代替派遣を利用するときの注意点

産休代替派遣は一般の派遣とは異なる点も多く、企業が利用する際には以下の点に注意が必要です。

業務の引き継ぎ期間を設ける

産休代替の派遣社員には即戦力としての活躍を求めますが、そのためには業務の引き継ぎを入念におこなう必要があります。派遣先企業としては、引き継ぎの期間はどのくらいを予定しているか、またどのような方法で引き継ぎをおこなうかについて派遣元企業に連絡しておくのが望ましいでしょう。該当社員が産休に入ると業務の確認が難しくなるため、それまでに派遣社員が業務を代替できるよう計画的に引き継ぎを進めることが大切です。

引き継ぐ業務を契約書に記載する

派遣社員が請け負う業務は契約書に記載している内容のみであり、契約外の仕事を派遣社員に従事させることはできません。産休代替の派遣社員は産休・育休に入る社員の代替要員であり、基本的にはその社員が担当していた仕事をそのまま請け負ってもらうことになります。産休代替を確保する際には、あらかじめ産休・育休取得者が担当している業務をすべて洗い出し、派遣社員に引き継いでもらう業務を契約書に記載しておく必要があります。

3年ルールの適用対象外となる

一般の派遣とは異なり、産休代替の派遣社員には派遣の3年ルールが適用されません。これにより3年ルールにおける雇用安定措置も適用されず、産休代替としての派遣期間が3年を超える場合も派遣元企業から直接雇用を依頼されることはありません。

《派遣元に課される派遣社員の雇用安定措置》

  1. 派遣先への直接雇用の依頼
  2. 新たな派遣先の提供
  3. 派遣元での無期雇用
  4. その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置

参考:雇用安定措置について|厚生労働省

なお、産休代替期間の終了後に同じ派遣社員を別業務で受け入れる場合には通常の派遣契約を締結し、3年ルールの適用対象となります。

派遣期間が変更する可能性を伝える

育休期間は原則「満1歳になるまで」とされていますが、特別の事情がある場合には最長2歳までの延長が認められます。これによって育休終了日が予定よりも繰り下がる場合、派遣先企業は新たな育休終了予定日を明らかにして再度派遣契約を結ぶことで産休代替の派遣期間を延長することができます。派遣期間が変更する可能性があることを前もって派遣元企業に伝えておくのが望ましいでしょう。

育休短縮による契約終了は中途解除に該当する

前提として、産休代替の契約期間は派遣先社員が取得する産休・育休期間に限定されます。仮に該当社員から育休短縮の申し出があり、それを派遣先が許可する場合には休業終了予定日よりも前に産休代替派遣を終了する必要があります。ただし、この場合は派遣先都合による中途解除となるため、新たな就業機会の確保など派遣社員の雇用の安定を図る措置を講じなければなりません。

5. 産休代替のよくある質問

産休代替に関する派遣社員の契約については、さまざまな疑問が生じることがあります。ここでは、契約延長や業務変更、継続雇用に関するよくある質問とその対応方法を解説します。

契約期間の延長を断られてしまった場合、どうしたらよい?

派遣契約の延長には派遣社員の同意が必要であり、無理に延長を求めることはできません。延長が難しい場合は、派遣会社と連携し、速やかに後任者を確保する対応を取ることが重要です。

社員が育休を繰り上げするため、派遣社員には別の業務をお願いできる?

派遣社員に別の業務を依頼する場合は、通常の派遣契約に切り替える必要があります。その際、従来の契約終了日までを期間とする新たな契約を締結し、雇用安定措置の対象とならないよう注意しましょう。

育休終了のタイミングで社員が退職した場合、継続して働いてもらうことはできる?

育休終了時に社員が退職した場合、派遣社員に継続して働いてもらうには通常の派遣契約を再締結する必要があります。同一人物であっても「3年ルール」が適用されるため、契約期間に注意しながら対応を進めましょう。

6. まとめ

産休代替派遣とは、産休・育休取得者が出社しない期間の業務を派遣社員が代替する働き方のことです。企業としては、人手が足りない期間のみ人員を確保できるうえ、代替要員を入れることで他の社員の負担軽減につなげられるメリットがあります。

一方で、産休代替を活用する際には注意すべき点が多く、一般の派遣とは異なる対応も求められます。派遣社員がスムーズに業務を代行できるよう、入念な受け入れ準備をおこなうことが大切です。

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