雇用保険料率の引き上げ!2022年法改正における変更点を解説

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雇用保険料率の引き上げ!2022年法改正における変更点を解説雇用保険料率の引き上げ!2022年法改正における変更点を解説

2022年3月30日に国会で法律が成立し、同年4月1日と10月1日の2回に分け雇用保険料率が引き上げられました。
雇用保険とはさまざまな理由によって働けない労働者の生活を支援する公的保険制度で、再就職の促進を目的にしています。

今回の法改正によりどのような変更があったのでしょうか。
この記事では2022年度の法改正における雇用保険料率について、なぜ引き上げられたのか、過去との違いについても詳しく解説します。

目次

  1. 雇用保険とは?
    • 雇用保険を細かく分けると?
  2. 2022年法改正/雇用保険料率の引き上げ
  3. 雇用保険料率引き上げの背景
  4. 雇用保険料引き上げでの変化は?
  5. まとめ

1.雇用保険とは?

雇用保険とは主に労働者がさまざまな理由で退職や失業した場合に、雇用や生活の安定を図るべく、給付金の支給はもちろん、再就職の援助を行うための公的な保険制度です。

言葉の通り、雇用に関する総合的な機能を有した制度であり、労働者の失業予防や雇用機会の増大、雇用状態の是正を目的として実施されています。

雇用保険とは?

雇用保険を細かく分けると?

雇用保険は「失業等給付」と「育児休業給付」、「雇用保険二事業」の3つに分かれています。失業等給付は下記の4つの保障を行います。

  1. 求職者給付
    失業者に対して基本手当(失業手当)や傷病手当などを支払う
  2. 就職促進給付
    早期再就職を促進することを目的に、再就職手当や就業促進定着手当などを支払う
  3. 教育訓練給付
    雇用の安定と就職の促進を図ることを目的に、教育訓練給付金を支払う
  4. 雇用継続給付
    職業生活の円滑な継続を援助、促進することを目的に、高年齢雇用継続給付などを支払う

育児休業給付では目的が異なっており、育児に関する保障がメインです。雇用保険二事業ではこれら2つの事業を実施しています。

  1. 雇用安定事業
    雇用調整助成金や労働移動や地域雇用開発の支援を目的に掲げて助成金の支給
  2. 能力開発事業
    職業能力開発施設の設置や運営
    事業主による能力開発に対する助成金の支給

このような雇用保険は労働保険の一つであり、労働者を雇用している事業所は加入することが原則です。

そして、雇用保険料とは雇用保険の掛け金のことで、労働者および事業主が共に一定の割合で支払いを負担することになりますが、負担額は労使折半ではなく、事業者の方が多く支払います。

2.2022年法改正/雇用保険料率の引き上げ

2022年3月30日に「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が国会で成立し、2022年4月1日から2023年3月31日までの雇用保険料率の引き上げが決定しました。これにより2022年4月1日と10月1日に、雇用保険料率が段階的に引き上げられました。

雇用保険料率とは労働者および事業者が保険料の支払い金額を算出するための割合です。雇用保険料は「労働者に支払う賃金 × 雇用保険料率」で算出できます。

ここで言う労働者に支払う賃金というのは、毎月の給与金額だけではなく、賞与額も該当します。また、通勤手当や超過労働手当、深夜手当なども雇用保険料の対象です。反対に出張旅費や宿泊費、役員報酬や退職金は対象ではありません。

これらは、労働者が受け取る金額に対してではなく、社会保険料などを控除する前の額面の金額から算出されます。

そして、雇用保険料率は、会社によって決まるのではなく事業所毎によって異なります。 四季により収入の変動が激しく、常時雇用が難しいとされる農林水産や清酒製造事業、雇用が景気に左右され不安定になりやすい面がある建築業などは、雇用保険を利用する頻度が高い業種であり、公平性を保つために雇用保険料率を他業種に比べて高めの設定となっています。

3.雇用保険料率引き上げの背景

雇用保険料率が上げられた背景には、雇用環境の悪化によって引き起こされた雇用保険の支出増大が関係しています。

雇用保険は、労働者および事業主に対する雇用保険料や国庫などによってまかなわれていますが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響で、失業者や雇用調整助成金を利用する人が急増し、雇用保険財政がひっ迫されました。

雇用保険の積立金が目減りし、それが一端となって雇用保険料率を引き上げざるを得なくなりました。

以前は雇用保険の積立金が一定水準を越えていたため、支払額を低く抑えられていました。現に2019年の法改正においては、雇用保険料率は引き下げられていたことがあり、雇用保険の財政状況によっては、保険料率が増減される可能性があることがわかります。

さらに、雇用保険の保険料率はコロナ禍以前にも毎年見直されていましてので、以後、考えられる負担額の増減に備えて雇用主や企業の担当者は常に最新の保険料率を把握しておく必要があるといえます。

4.雇用保険料引き上げでの変化は?

2022年度の雇用保険料率は4月と10月の2段階で引き上げの変更が行われたため、注意が必要です。

  労働者負担
(①のみ)
事業主負担
(①+②)
①失業等給付・育児休業給付の保険料率 ②雇用保険
二事業の保険料率
これまで 0.3% 0.6% 0.3% 0.3%
2022年4月1日~ 0.3% 0.65% 0.3% 0.35%
2022年10月1日~ 0.5% 0.85% 0.5% 0.35%

2022年4月1日からは事業主負担分のみが引き上げられ、10月1日からは事業主と労働者両方の負担分の引き上げが行われました。つまり、実際に労働者の給与に影響を与えるのは、2022年10月の引き上げということになります。

また、雇用保険のうち、「失業等給付」と「育児休業給付」は事業主と労働者が労使折半し、「雇用保険二事業」は事業主のみが負担します。

雇用保険料率の引き上げの第一段階である2022年4月1日では、事業主負担である「雇用保険二事業」の保険料率が0.3%から0.35%へと引き上げられ、実質の事業主負担は0.65%となりました。

続いて第二段階である2022年10月1日からは、事業主負担分の「失業等給付」と「育児休業給付」の保険料率が0.3%から0.5%に引き上げられ、実質の事業主の負担は0.85%になりました。加えて労働者負担分も0.3%から0.5%に引き上げられたこともポイントです。

現在、この段階的な雇用保険料率の引き上げによって、一般事業の場合は労働者負担と事業主負担のトータルで0.9%から1.35%に変更されることとなりました。

5.まとめ

今回は2022年4月1日と10月1日の段階的に引き上げられた雇用保険料率について、雇用保険とはという基本的な内容から2022年の法改正、雇用保険料率引き上げや雇用保険料の引き上げによる影響について解説しました。

2022年4月1日からは事業主負担分のみ雇用保険料率が引き上げられ、10月1日からは対象が事業者だけでなく労働者も含まれ、雇用者・被雇用者ともに支払う保険料率が引き上げられました。

現在の雇用保険料率は一般事業の場合、労働者負担と事業主負担のトータルで0.9%から1.35%に変更になっています。

雇用保険料が引き上げられた背景には新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響によって、失業者や雇用調整助成金を利用する人が急増し、雇用保険財政がひっ迫したことが原因となりました。

しかし、雇用保険率は2019年の法改正で引き下げられたこともあるように、雇用保険の財政状況によって雇用保険料率は見直されることもあります。雇用保険は原則として加入しなければいけないため、詳細を把握していないと思わぬトラブルに巻き込まれてしまうリスクもあります。

毎年見直される可能性もあるため、雇用保険料率を正しく理解してスムーズに対応するためにも、企業担当者の方は最新の情報を注視する必要があるでしょう。

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