派遣社員がカスハラを受けたら?対応方法と予防策を解説

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派遣社員がカスハラを受けたら?対応方法と予防策を解説派遣社員がカスハラを受けたら?対応方法と予防策を解説

近年、さまざまなハラスメントが社会問題となる中で、カスタマーハラスメント(いわゆる「カスハラ」)への関心が高まっています。派遣社員がカスハラの被害に遭った場合、「どこまでが派遣先企業の責任なのか」「まず何をすべきか」など、対応に悩むことも少なくありません。

この記事では、カスハラの定義や関連する法制度、そして派遣社員がカスハラを受けた際の具体的な対応方法・予防策について解説します。自社の従業員だけでなく、派遣社員も安心して働ける職場づくりの参考になれば幸いです。

目次

  1. カスハラ(カスタマーハラスメント)とは
    • 顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合とは
    • 要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動とは
  2. カスハラ対策の義務化はいつ?
  3. 派遣社員に対するカスハラ対策は?
  4. カスハラに対する企業の対応
    • 基本方針・基本姿勢の明確化と周知
    • 従業員のための相談窓口を設置
    • カスハラ対応手順や方法を整備
    • 従業員教育とフォローアップ
  5. まとめ

1.カスハラ(カスタマーハラスメント)とは

カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、顧客や取引先など(以下「顧客等」)から企業や従業員に対して行われる、理不尽なクレームや不当な言動を指します。カスハラは法律用語ではありませんが、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、次のように定義されています。

カスハラ(カスタマーハラスメント)とは

顧客等からのクレーム・言動のうち、その要求内容の妥当性に照らして、要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、それにより労働者の就業環境が害されるもの

引用:カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(厚生労働省)

また、同マニュアルによると、過去3年間に勤務先でカスハラ(顧客等からの著しい迷惑行為)を経験した人の割合は15.0%にのぼります。この割合は、パワハラを経験した人(31.3%)よりは少ないものの、セクハラを経験した人(10.2%)より多い数値です。

カスハラは決して他人ごとではなく、身近な問題となりつつあると言えるでしょう。

顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合とは

顧客等の要求内容の妥当性は、社会通念上相当かどうか、つまり一般常識から見て妥当かどうかで判断されます。厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、以下のような場合が「要求の内容が妥当性を欠く例」として挙げられています。顧客等の要求内容の妥当性は、社会通念上相当かどうか、つまり一般常識から見て妥当かどうかで判断されます。厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、以下のような場合が「要求の内容が妥当性を欠く例」として挙げられています。

事由 具体例
企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合 スーパーで購入した牛乳を顧客が自身の車内に放置して腐らせたにもかかわらず、「不良品だから交換しろ」と要求する
要求内容が企業の商品・サービスの内容とは関係がない場合 スーパーでレジ打ちを行う店員に「荷物が重いからレジ打ちを中止して車まで運んでほしい」と要求する

このように、要求内容自体に妥当性がなければ、言葉遣いが丁寧であってもカスタマーハラスメントに該当する可能性が高くなります。

要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動とは

要求内容が妥当であっても、その手段や態様が社会通念上不相当な場合もカスタマーハラスメントに該当します。つまり、要求を伝える方法や態度が、一般常識から見て著しく悪質である場合です。

例えば、スーパーで購入した商品に割引表示があったのにレジで割引が適用されなかった場合、指摘すること自体は問題ありません。しかし、以下のような方法で指摘する場合は「手段・態様が社会通念上不相当」と判断される可能性があります。

  • 大声で怒鳴る
  • 暴言を吐く
  • 長時間にわたって説教する
  • 土下座を要求する
  • 割引額をはるかに上回る金銭補償を要求する
  • 身体的な攻撃(暴行、傷害)
  • 威圧的な言動
  • 執拗な(しつこい)言動
  • 拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
  • 差別的・性的な言動
  • 従業員個人への攻撃や要求

このような場合、要求の内容が妥当でも、カスタマーハラスメントとみなされることがあるため注意が必要です。

2.カスハラ対策の義務化はいつ?

2025年6月現在、法律で事業主に対策が義務付けられているハラスメントは、以下の3つです。

ハラスメントの種類 内容 根拠法
パワーハラスメント 優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超え、労働者の就業環境を害するもの 労働施策総合推進法
セクシュアルハラスメント 労働者の意に反する性的な言動により、不利益を受けたり就業環境が害されること 男女雇用機会均等法
妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント 妊娠・出産や育児休業等を理由とする言動により、労働者の就業環境が害されること 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法

出典:職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!(厚生労働省)

カスハラ(カスタマーハラスメント)対策については、これまで法律上の義務はありませんでしたが、2025年6月4日に改正労働施策総合推進法が成立し、事業主にカスハラ対策を講じる義務が新たに規定されました。

この改正法は「公布の日から1年6カ月以内に施行される」とされており、遅くとも2026年12月までにカスハラ対策が全ての事業主に義務付けられる見込みです。

カスハラ対策義務化の具体的な内容や企業が講じるべき措置の詳細は、今後国が策定する指針(ガイドライン)で示される予定です。

3.派遣社員に対するカスハラ対策は?

2025年6月現在、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の法改正により、派遣社員に対するカスハラ防止措置は、派遣元と派遣先の双方に義務付けられる見込みです。

厚生労働省の分科会資料や法改正の概要では、「カスハラ対策については、派遣先も派遣労働者を雇用する事業主とみなして適用する(派遣元も、派遣労働者を雇用する事業主としての義務を負う)」と明記されています。これは、パワハラやセクハラなど他のハラスメント防止義務と同様の運用です。

つまり、派遣先も派遣元と同様に、以下のようなカスハラ対策を講じる必要があります。

  • カスハラ対策方針の明確化と周知
  • 相談窓口の設置
  • 対応手順の策定
  • 従業員への研修実施
  • 派遣元との連携強化(ハラスメント発生時の報告・対応フローの整備)

4. カスハラに対する企業の対応

企業はカスハラ(カスタマーハラスメント)にどのように対応し、どのような体制を整えるべきでしょうか。厚生労働省のマニュアルや指針を参考に、企業が講じるべき主なポイントを確認します。

基本方針・基本姿勢の明確化と周知

まず、事業主としてカスハラ対策の基本方針を策定し、明確にすることが重要です。基本方針には、カスハラの定義やカスハラを重大な問題と捉えていること、従業員の人権尊重、組織として対応する姿勢を明記しましょう。
策定した方針は、社内イントラネットや掲示板など従業員がいつでも確認できる場所に掲示し、必要に応じて社外(公式サイトや店舗内)にも周知します。

従業員のための相談窓口を設置

カスハラが発生した際に従業員が安心して相談できる窓口を設置しましょう。相談窓口は人事労務部門や法務部門、直属の上司など複数の選択肢を設けると良いでしょう。また、外部の専門家(顧問弁護士やカウンセラー)と連携し、心理的・法的なサポート体制も整備します。

カスハラ対応手順や方法を整備

カスハラが発生した場合に備え、具体的な対応手順やマニュアルを策定しておきます。

主な内容例:

  • 事実確認(被害者・関係者へのヒアリング、防犯カメラの確認など)
  • 情報共有(現場担当者や本社への報告、報告内容の整理)
  • 引き継ぎ体制(現場で対応困難な場合の本社や上位部署へのエスカレーション)
  • 必要に応じて法的対応(警察・弁護士への相談)

手順を明確にすることで、迅速かつ適切な対応が可能になります。

従業員教育とフォローアップ

カスハラに適切に対処するためには、従業員への定期的な教育・研修が不可欠です。
カスハラの定義や具体的な対応方法、相談窓口の利用方法などを研修で共有しましょう。
また、カスハラ被害を受けた従業員へのフォローアップも重要です。必要に応じて産業医やカウンセラーと連携し、心身のケアを行います。

5. まとめ

今回は、派遣社員がカスハラ(カスタマーハラスメント)被害に遭った場合の対応について、派遣先企業の担当者が知っておくべきポイントを解説しました。

2025年6月現在、カスハラ対策は改正労働施策総合推進法により、すべての事業主に義務付けられることが決まっています。2026年12月までに、カスハラ対策は派遣社員を含む全従業員を対象として、全ての企業で実施が必要になります。

企業は、カスハラ対策の方針を明確にし、相談窓口や対応手順を整備すること、従業員への教育やフォローアップを早めに進めることが大切です。カスハラ対策を徹底し、派遣社員を含めたすべての従業員が安心して働ける環境を整えていきましょう。

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