押さえておきたい人材派遣のポイント【受け入れ後編】

人材派遣の実践
押さえておきたい人材派遣のポイント【受け入れ後編】押さえておきたい人材派遣のポイント【受け入れ後編】

目次

  1. 派遣先担当者の役割
  2. 派遣社員の労務管理
  3. 派遣先管理台帳について
  4. 契約更新の手続きについて

1.派遣先担当者の役割

派遣労働者を受け入れる際には、受け入れる人数に応じて、派遣先責任者を選任しなければなりません。(派遣法第41条)

ここでは派遣先責任者・指揮命令者、苦情処理申し出先のそれぞれの役割を解説します。

派遣社員とは

派遣先責任者の選任

派遣先責任者は派遣労働者数100人ごとに一人以上を選任しなければなりません。
ただし、派遣労働者と派遣先が雇用する労働者の数を加えた数が5人以下の時には選任する必要はありません。

また、派遣先責任者に特別な資格は不要ですが、自己が雇用する者の中から、他の事業所の派遣先責任者を兼任しない形で事業所ごとに専属の派遣先責任者を選任する必要があり、以下の者から選任するように努めることとされています。

  1. 労働関係法令に関する知識を有する者
  2. 人事・労務管理等について専門的な知識または相当期間の経験を有する者
  3. 派遣労働者の終業に係る事項に関する一定の決定・変更を行いうる権限を有する者
  4. 派遣先責任者の職務を的確に遂行できる者

派遣先責任者の主な役割

  • 労働関係法令、労働者派遣契約の内容等の周知
  • 派遣先管理台帳の作成、記録、保存
  • 派遣受け入れ期間に関する派遣元への通知
  • 派遣先における均衡待遇の確保に関すること
  • 安全衛生に関する連絡調整
  • 派遣元との連絡調整
  • 派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理に当たること

指揮命令者の役割

受け入れている派遣社員に対して「業務指示を行うこと」です。
様々な人から業務指示があると派遣社員が混乱する可能性があるので、このように指揮命令者が設けられています。

また、派遣社員の業務内容や就業時間が派遣契約どおり行われているかどうかを確認しながら業務指示を出していただく必要があります。

苦情処理申し出先の役割

派遣スタッフから就業に関する「苦情申し出を受けた際の対応を行うこと」です。
就業中のトラブルの中には指揮命令者に対する内容もあるので、客観的視点を持つためにも指揮命令者以外の者が良いとされています。

派遣先責任者との兼任は可能です。
それ以外にも苦情の発生状況や苦情処理の顛末を派遣先管理台帳に記録することも役割の一つです。

2.派遣社員の労務管理(労働基準法の特例)

派遣社員の雇用主は派遣元の会社ですが、就業場所や指揮命令権は派遣先にあることから派遣先にも労働基準法等における使用者としての責任が生じます。

派遣先が使用者とみなされ、派遣先が責任を負う項目は以下のものが挙げられます。

【代表例】

  • 労働時間、休日、休憩の指示・管理
  • 職場での安全衛生管理体制
  • 受動喫煙防止対策
  • 有害業務に係る健康診断
  • 感染予防 等

※これらの規定に関する罰則も派遣先に適用されるので注意が必要です。

★上記の通り、派遣社員の労働時間管理(時間外労働や休日労働)の責任は派遣先が負います。
ただし、派遣社員に行わせることができる時間外労働の上限は、派遣元会社の「36協定」が適用されます。
そのため、時間外労働や休日労働を想定している場合には、予め派遣元で締結された「36協定」の内容を確認しておくことが重要です。

3.派遣先管理台帳について

派遣先管理台帳は派遣スタッフの労働日・労働時間等、就業実態を記載する書面であり、スタッフごとに作成するものです。
派遣スタッフを受け入れている企業では、この派遣先管理台帳を作成・保管し、その記載内容の一部を派遣会社に通知する義務があります。

派遣先管理台帳の記載内容

  1. 派遣労働者の氏名
  2. 派遣元事業主の名称
  3. 派遣事業主の事業所名
  4. 派遣元事業主の事業所所在地
  5. 業務の内容
  6. 派遣労働者の責任の程度
  7. 協定対象派遣労働者かの別
  8. 無期雇用か有期雇用かの別
  9. 派遣就業した事業所の名称、就業場所及び組織単位
  10. 派遣就業した事業所の所在地
  11. 派遣元責任者
  12. 派遣先責任者
  13. 就業状況
  14. 派遣労働者からの苦情処理状況
  15. 教育訓練の日時及び内容
  16. 派遣受け入れ期間の制限を受けない業務を行う労働者派遣に関する事項
  17. 雇用保険・社会保険の被保険者資格取得届提出の有無

派遣先管理台帳の通知義務

派遣先は派遣先管理台帳に記載した事項の一部を派遣会社に通知しなければなりません。

派遣先管理台帳は1ヶ月に1回以上、一定の期日を定め、スタッフごとに通知事項にかかる内容を書面、FAX、電子メールいずれかの方法で通知しなければなりません。(派遣法第42条3項、派遣法施行規則第38条)

〈通知すべき事項〉

  • 派遣先労働者の氏名
  • 派遣就業した日
  • 派遣就業日ごとの始業・終業時間及び休憩した時間
  • 業務の種類・内容
  • 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
  • 派遣先労働者が労働に従事した事業所の名称と所在地その他派遣就業した場所

派遣先管理台帳の保管

派遣先管理台帳は派遣スタッフの派遣期間終了後、3年間保管しなければなりません。
なお、派遣契約を複数回更新している場合は、最後の派遣契約終了日が保存期間の起算日となります。(派遣法第42条2項)

4.契約更新(または満了)の手続きについて

  • 労働者派遣法第26条により、派遣期間は明確に設定することが求められているため、労働者派遣法契約については、自動更新が認められません。
    更新の都度、新たに契約を締結し直す必要があります。
  • 契約を更新するか、期間満了で終了するかは派遣会社と調整のうえ、決定します。
    派遣先企業と派遣スタッフの間に雇用関係がないため、派遣先から直接スタッフに意思確認を行うことはできません。
    派遣スタッフへ意思確認は派遣会社が対応します。
  • 有期契約労働者との雇用契約を更新しない場合、原則30日前までに予告しなければならいとされています。
    このため、派遣契約の更新確認は契約満了の30日前までに完了するよう対応を進めます。
    一般的には、円滑に手続きを進める目的、また派遣社員の雇用安定を図る目的で、契約期間満了の45日前程度を目安に更新確認が行われることが多いです。
  • 業務内容、就業場所、就業条件等に変更が発生する場合は、早めに派遣会社に相談して下さい。
    派遣スタッフのへの説明と調整は派遣会社が行います。
    これらの変更について、直接派遣スタッフに伝えることはお控え下さい。トラブルの原因になるケースが多いです。
  • 派遣契約を更新する際には、「期間制限抵触日」にも注意が必要です。
    派遣契約は原則3年間が限度と定められており、抵触日を超えて派遣スタッフを受け入れた場合、違法派遣となり「労働契約申込みみなし制度」の対象となる可能性があります。
  • 派遣契約が複数回更新され、次の契約満了時にも契約が当然更新される者との期待がある中での契約満了(雇止め)は違法な雇止めとされる可能性があるため、注意が必要です。(労働契約法19条)
    ※具体的には、契約を3回以上更新するか、派遣期間が1年を超えて継続した場合が該当します。
     該当する場合は、早めに派遣会社に相談して下さい。