派遣労働者の「同一労働同一賃金」について

人材派遣の基礎知識
派遣労働者の「同一労働同一賃金」について派遣労働者の「同一労働同一賃金」について

改正労働者派遣法が、2020年4月1日に施行されました。
この改正では、派遣労働者の「同一労働同一賃金」が盛り込まれ、派遣先に雇用される通常の労働者と、派遣労働者との間の不合理な待遇差を解消することを目的とし、派遣元及び派遣先には新たな義務が課せられます。

目次

  1. 派遣労働者の同一労働同一賃金は以下のいずれかの方法により確保します
  2. 派遣先は派遣会社(派遣元)に対して必要な情報を提供する必要があります
  3. 派遣社員の同一労働同一賃金が確保できるよう派遣料金については、派遣先に配慮義務が追加されました(派遣法第26条第11項)
  4. 派遣社員の待遇決定の方法
    • 派遣先均等・均衡方式
    • 労使協定方式

1.派遣労働者の同一労働同一賃金は以下のいずれかの方法により確保します

派遣先均等・均衡方式 労使協定方式
派遣先の通常の労働者(無期雇用フルタイム社員)との均等・均衡により派遣労働者の待遇を決定
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派遣会社が一定要件を満たす労使協定を締結し、派遣労働者の待遇を決定
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2.派遣先は派遣会社(派遣元)に対して必要な情報を提供する必要があります

派遣先均等・均衡方式 労使協定方式
  • 派遣先の比較対象労働者の待遇情報
    (以下1~5)
    1. 職務内容および配置変更の範囲、雇用形態
    2. その比較対象者を選定した理由
    3. 待遇(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合はその旨)
    4. 待遇それぞれの性質および目的
    5. 待遇それぞれの決定にあたり考慮した事項
  • 待遇情報に変更があった場合その内容

    比較対象労働者と派遣先の通常の労働者の待遇との間で均衡待遇が確保されていることが大前提です。

  • 派遣先の労働者が利用する
    「給食施設」「休憩室」「更衣室」の情報
  • 職務に関する教育訓練

いずれの方式であっても派遣先は派遣会社(派遣元)の求めに応じて、派遣社員の業務遂行状況などの情報を提供するなど、必要な協力をする必要があります(配慮義務)。

3.派遣社員の同一労働同一賃金が確保できるよう派遣料金については、派遣先に配慮義務が追加されました(派遣法第26条第11項)

派遣社員の同一労働同一賃金待遇を確保するため派遣会社(派遣元)から要請があるにもかかわらず、派遣先が派遣料金の交渉に一切応じない場合などは配慮義務を尽くしていないものとして行政指導の対象となる場合があります。

4.派遣社員の待遇決定の方法

  • 派遣先均等・均衡方式
  • 労使協定方式

派遣先均等・均衡方式

  • 派遣先は次の1~6の優先順位により比較対象労働者を選定します。
  • 派遣先から派遣会社に比較対象労働者の情報提供を行います。
  • 比較対象労働者の選定を誤り、適切でない比較対象労働者の待遇情報を提供しても待遇情報を提供したとはいえず、派遣法違反となり得ます。
比較対象労働者の選定の優先順位

  1. 「職務の内容」と「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ労働者
  2. 「職務の内容」が同じ通常の労働者
  3. 「業務の内容」または「責任の程度」が同じ通常の労働者
  4. 「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
  5. 上記1~4に相当する短時間・有期雇用労働者
    (派遣先の通常の労働者との間で均衡待遇が確保されているものに限る)
  6. 派遣社員と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合における当該労働者
    (当該労働者の待遇内容について就業規則に定められており、かつ派遣先の労働者との間で適切な待遇が確保されているものに限る)

(例)均等・均衡待遇方式イメージ

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労使協定方式

派遣会社は協定対象の派遣社員が従事する同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金額と比較して、派遣社員の賃金を以下の基準と同等以上にする必要があります。

基本給・賞与・手当等

毎年、職業安定局長通達で示される「賃金構造基本統計」「職業安定業務統計」および「地域指数」により職種・地域・能力・経験スキルを踏まえて派遣社員の賃金と比較

通勤手当

「実費支給」もしくは「定額支給(職業安定局長通達で示された全国平均通勤手当額(72円))」を選択し派遣社員の賃金と比較

退職金

以下1~3のいずれかを選択

  1. 退職金制度に基づいて退職費用を支給
  2. 退職費用を毎月の賃金(時給)等で前払いする(職業安定局長通達で示される費用(6%))
  3. 中小企業退職金共済制度や確定拠出年金等に加入する方法

(例)職業安定業務統計を用いて通勤交通費を実費支給する場合

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